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2025.04.08

リアリズム美術とは何かわかりやすく解説!代表的な5人の画家と作品も紹介

リアリズム美術とは何かわかりやすく解説!代表的な5人の画家と作品も紹介

アートリエ編集部がリアリズム美術について詳しく解説します。

リアリズム美術とは、19世紀にヨーロッパで広まった芸術運動で、空想や理想化を俳して現実をありのままに描くことを重視したスタイルを指します。

理想化や誇張をしない、リアルな表現が特徴的なリアリズム美術ですが、「どんな絵がある?」「写実主義とは違うの?」と思う方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、リアリズム美術とは何かわかりやすく解説します。また、代表的な5人の画家とその作品も併せて紹介します。

この記事を読めばリアリズム美術の特徴や代表的な画家に関して理解できるので、詳しく知りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

リアリズムとは?簡単にわかる定義と特徴

Landscape near Maizières

出典:WIKIMEDIACOMMONS

そもそもリアリズムとは、どのようなものなのか、ここでは定義や特徴を解説するのでぜひ参考にしてください。

リアリズム美術の基本的な定義

リアリズム美術は19世紀中ごろにフランスで起こった、絵を正確に描きたいという画家による芸術運動です。それまでの芸術は神話や宗教を題材にした理想的な表現が主流でしたが、リアリズムは目に映るものをそのまま描くことを手法としています。

リアリズム美術には労働者階級や農民の日常生活を描いた作品が多く、社会の不平等や過酷な労働環境などをリアルに表現しています。リアリズム美術とは、空想や理想化を排して現実をありのままに描くことを重視する、芸術のスタイルです。

リアリズムと写実主義の違いとは?

リアリズムと写実主義はどちらも「現実を描く」点で共通していますが、目的と表現方法に違いがあります。

リアリズムは社会の現実を描くことを重視しており、社会問題や労働者の生活をありのままに表現し、批判的なメッセージを込めた作品や、労働者の生活をありのままに表現した作品がある点が特徴です。一方で、写実主義は対象を忠実に再現することを目的とし、細部まで緻密に描写する技術的な精密さを追求します。

リアリズムは社会的な視点を持ち、写実主義は芸術的な技術を重視するといった違いがあると覚えておくと良いでしょう。

写実主義に関して詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。

【徹底解説】写実主義とは?代表的な画家と作品をわかりやすくご紹介

リアリズムが生まれた背景

Corot dante&virgile

出典:WIKIMEDIACOMMONS

ここでは、リアリズムが生まれた背景を、時代や社会的な観点から解説します。

リアリズムが生まれた時代と社会的背景

リアリズムは、19世紀中ごろのヨーロッパにおける政治的、社会的変革の中で誕生しました。頻繁な政権交代や革命の影響を受け、芸術にも変化が求められるようになったといわれています。

1848年にヨーロッパで革命が勃発し、民族運動が活発化しました。フランスでは王政が崩壊し、ルイ=フィリップが退位、ナポレオン3世の第二帝政が始まりました。

このような激動の時代に、人々の生活や社会の現実を直視するリアリズムが、芸術の潮流として台頭したといわれています。

産業革命がリアリズム美術に与えた影響

産業革命の発展により社会が大きく変化し、リアリズム美術にもその影響が強く表れました。技術の進歩と都市の発展は、芸術家たちの視点を変え、新たな表現の必要性を生み出します。

中でも写真技術が発展したことで、1840年代には肖像写真ブームが起こり、画家が担ってきた役割に変化が起きました。また、鉄道の拡大により移動方法に革命が起き、人や情報の流れが加速した時代でもあります。

政治が不安定な中、さまざまなものが変化していく時代に、反発する力がリアリズム美術を生み出したといわれています。

リアリズムを代表する画家と代表作

Emile Foubert--Hommage à Corot--1892--Bayeux, musée d'art et d'histoire Baron

出典:WIKIMEDIACOMMONS

ここからは、リアリズムを代表する画家を5人厳選して紹介します。代表作も併せて解説するので、ぜひ参考にしてください。

ギュスターヴ・クールベ|リアリズムを確立した画家

ギュスターヴ・クールベ

出典:WIKIMEDIACOMMONS

ギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet)は、19世紀フランスでリアリズムを確立した画家として知られています。クールベは理想化された美術に対抗し、社会の現実をありのままに描くことを追求しました。

当時主流だったロマン主義や新古典主義の幻想的な表現を否定したクールベは、労働者や農民の日常を等身大に描くことで、新たな芸術の潮流を生み出します。

こんにちは、クールベさん

こんにちは、クールベさん

出典:Wikipedia

ギュスターヴ・クールベの「こんにちは、クールベさん」は、彼のリアリズムの精神を象徴する作品です。1854年に制作されたこの作品は、クールベ本人が画家でパトロンのアルフレッド・ブリュイヤスと、従者に出会う場面を描いています。

従来の芸術では、patron(支援者)が中心に描かれることが多かったのに対し、本作の主役は堂々としたクールベ自身です。

これは、芸術家が単なる依頼者の手足ではなく、独立した存在であるといった新たな価値観を示しています。

画家のアトリエ

画家のアトリエ

出典:Wikipedia

ギュスターヴ・クールベの「画家のアトリエ」は、彼の芸術観を象徴する作品であり、リアリズムの精神を体現した作品です。

1855年に制作されたこの作品は、アトリエの風景ではなく、クールベ自身の芸術的・社会的立場を表現しています。中央で風景画を描くクールベの周囲には、左側に庶民、右側に彼を支えた知識人やパトロンが集まっている構図が描かれています。

石割り人夫

石割り人夫

出典:旅と美術館

ギュスターヴ・クールベの「石割り人夫」は、労働者の過酷な現実を描いたリアリズムの代表作で、社会的メッセージを強く持っています。

1849年に制作された「石割り人夫」は、労働者階級の厳しい生活をありのまま描くことで、当時の社会主義思想とも共鳴しました。カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスが、「共産党宣言」を発表した翌年といった時代背景もあり注目されたようです。

この作品においては、オルナン地方で見かけた労働者の姿を基に制作したとされます。

ジャン=フランソワ・ミレー|農民の生活を描いた画家

ジャン=フランソワ・ミレー

出典:WIKIMEDIACOMMONS

ジャン=フランソワ・ミレー(Jean-François Millet)は、19世紀のフランスを代表する画家で、農民の生活を主題とした作品で知られています。ミレーは単なる風景画家ではなく、労働者の厳しい生活を芸術として表現し、社会に問いかける画風を確立しました。

ミレーの作品は、理想化された風景ではなく、実際の農村の厳しい現実を映し出しています。また、ミレーは農民の誇りや尊厳を強調し、彼らの日常に潜む美を描こうとしていたといわれています。

箕をふるう人

箕をふるう人

出典:Wikipedia

「箕をふるう人」は、1847年に農民の日常が描かれた油絵で、ミレーの代表作です。ミレーがこの作品を描いた背景には、19世紀のフランス社会の変革があります。

1848年、フランスでは共和主義の高揚があり、農民の生活を描いたこの作品はその時代の精神と重なったことで高く評価されました。この作品は自然主義の先駆けとして、後のギュスターヴ・クールベにも影響を与えたとされています。

晩鐘

晩鐘

出典:Wikipedia

「晩鐘」は、1857年から1859年にかけて制作された油彩画です。農民の生活における深い宗教的な情感を込めた作品で、夫婦が晩鐘を合図に手を休め、祈りを捧げる場面が描かれています。

カトリックの影響を感じさせつつも、依頼者であるアップルトンの宗教観が反映されている点が特徴です。この作品はミレーの個人的な思い出、特に祖母とのエピソードから着想を得ているといわれています。

羊飼いの少女

羊飼いの少女

出典:Wikipedia

「羊飼いの少女」は1864年に発表された油彩画で、田舎の平穏な風景と農民の生活を理想化して描かれています。この作品は、静かな草原に立つ若い羊飼いの少女を中心に構成されているのが特徴です。

草原には草を食む羊たちと、それを見守る黒い猟犬が描かれており、犬が群れと風景に動的なバランスを与えています。

カミーユ・コロー|風景画のリアリズム表現

カミーユ・コロー

出典:WIKIMEDIACOMMONS

カミーユ・コローは、風景画の基礎を築いた画家として、後の印象派に大きな影響を与えました。彼の前半期の作品は、理想化された風景ではなく、イタリアやフランス各地の実際の景色を詩的に描いたことで評価されています。その影響は、モネやルノワールをはじめとする印象派の作品に色濃く表れています。

後半期には、銀灰色のベールがかかったような表現を用いて、叙情的な風景画も手がけるようになります。

シビル

シビル

出典:Wikipedia

「シビル」は1870年ごろに描かれた肖像画で、ニューヨークのメトロポリタン美術館に収蔵されています。この作品は、コローが肖像画のスタイルにおいてもリアリズムを追求したことが反映されており、赤いバラを持つモデルと光と影が巧みに描かれています。

ルネサンス美術における三大巨匠の1人、ラファエロの影響を受けたコローが、彼のスタイルを再現しようとした試みがみられる点も特徴的です。

オルフェウスが冥界からエウリュディケを連れ出す

オルフェウスが冥界からエウリュディケを連れ出す

出典:Google Arts&Culture

この作品は、ギリシャ神話の感動的な瞬間が描かれた作品で、オルフェウスとエウリュディケの感情の葛藤を巧みに表現しています。

オルフェウスの決意と希望が溢れる表情、そしてエウリュディケの不安と期待を感じさせる仕草が、見る者に深い感動を与えました。背景には冥界の暗く神秘的な景色を描き、光と影を巧みに操った技法が特徴です。

オルフェウスのリュートから差し込む光は希望を象徴し、全体のドラマ性を強調しています。

読書する女性

読書する女性

出典:Wikipedia

コローの「読書する女性」は、静かな田舎の風景の中で孤独と内省を描き出した印象深い作品です。この作品では田園風景の中で本を読んでいる女性を描いており、その姿からは深い静けさと集中が伝わります。

彼女の周囲には穏やかな自然が広がり、静かな時間の流れが感じられるでしょう。背景には広がる青空と緑の野原、遠くには川とボートに乗った男が見え、風景としての美しさも際立っています。

エドゥアール・マネ|印象派の先駆者

エドゥアール・マネ

出典:WIKIMEDIACOMMONS

エドゥアール・マネは、19世紀フランスの画家で、近代絵画の革新者とされています。伝統的な絵画の枠を超え、近代的な視点からパリの都市生活を描いた点で評価されました。

代表作「草上の昼食」や「オランピア」は、その斬新さが当時の美術界に衝撃を与えています。陰影や遠近法に依存せず平面的な色面で表現する技法は、後の印象派画家たちに大きな影響を与えました。

フォリー・ベルジェールのバー

フォリー・ベルジェールのバー

出典:Wikipedia

「フォリー・ベルジェールのバー」は、マネの最後の主要作品です。中央にはうつろな表情のバーメイドが描かれ、その後ろの鏡には、バレエや曲芸が行われる会場の様子が映し出されています。

この鏡の構図は、ベラスケスの「ラス・メニーナス(女官たち)」を意識しているのが見て取れるでしょう。

テュイルリー公園の音楽会

テュイルリー公園の音楽会

出典:Wikipedia

「テュイルリー公園の音楽会」は、1862年に制作された作品で、パリのテュイルリー公園で開かれた音楽会に集まる人々が描かれています。当時の社会をありのまま捉えようとする、マネの試みが反映されているようです。

マネが描く人物たちは形式的でなく、日常の一場面としてリアルに表現されているのが特徴です。右側にはオペレッタの作曲家オッフェンバックが描かれ、左側には反体制的な人物たちが集まっています。

オランピア

オランピア

出典:Wikipedia

「オランピア」は、1863年に発表された作品で、当時の社会や芸術に対する挑戦を象徴しており、官展に出品されると大きな議論を呼びました。主に、裸体の女性が現実的かつ平坦に描かれ、理想とされる美しさから外れている点が批判されたようです。

しかし、この大胆な描写こそが、マネが目指した新しいリアリズムの表れでした。マネはこの作品で伝統的な裸体画ではなく、女性の体を神話や歴史的背景から切り離した現代的な視点で表現しています。

エドワード・ホッパー|現代アメリカの生活を描いた画家

エドワード・ホッパー

出典:WIKIMEDIACOMMONS

エドワード・ホッパーは、20世紀のアメリカン・リアリズムの代表的な画家で、アメリカの現代生活を独自の視点で捉えました。ヨーロッパのリアリズムとは異なり、都市や郊外の風景に焦点を当て、日常的な場面を孤独感と静寂感を強調して描いています。

アメリカ人にとって身近な街角や家々を描きながら孤独を表現しており、人物の表情や対話が描かれず、視線を交わさない点が特徴です。

線路脇の家

線路脇の家

出典:Wikipedia

「線路脇の家」は、1925年に制作された油彩画で、アメリカの風景画の中でも特に有名な作品です。ニューヨーク州ヘイバーストローに実在するビクトリア朝の邸宅を描いており、第二帝政様式の建物が印象的に表現されています。

この家の静かなたたずまいは、ホッパーの他の作品同様、孤立感や静寂感を強調しています。ホッパーは、日常的な風景に焦点を当て、その背後にある感情的な空気を表現することに長けていました。

ミシンを使う少女

ミシンを使う少女

出典:Wikipedia

「ミシンを使う少女」は、1921年に制作された作品で、現在はスペインのティッセン・ボルネミッサ美術館に所蔵されています。背景には、ニューヨーク市の風景を象徴しているであろう、黄色いレンガの建物が描かれました。

ホッパーは窓を見ていない少女を描くことで、日常的なシーンの中に深い孤独を表現しています。

チャプスイ

チャプスイ

出典:Wikipedia

「チャプスイ」は、現代アメリカの孤独感を象徴する作品です。テーブルを囲む人物たちは物理的に近くにいるものの、互いに心が通じていないように描かれています。

レストランのテーブルに座った2人の女性を描いており、彼女たちの会話や周囲の環境が表現されています。しかし、ホッパーは細部に焦点を当てながらも、視覚的にはどこか不完全で記憶のような雰囲気を持たせています。

ホッパーの作品は、常に孤立した人物を描くことに注力しており、この絵も例外ではありません。

エドワード・ホッパーに関して詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。

エドワード・ホッパーとは?来歴や画風、エピソード、代表作について詳しく解説します!

まとめ

落穂拾い

出典:Wikipedia

この記事では、リアリズム美術について解説しました。

リアリズム美術は19世紀に始まった芸術運動で、自然や日常の現実を誇張せず、ありのままに描くことを目指しました。従来の理想化された美術から脱却し、社会問題や労働者の生活など、当時の現実的なテーマに焦点を当てた作品が特徴です。

代表的な画家には、グスタフ・クールベやジャン=フランソワ・ミレーなどがいます。この記事を参考に、リアリズム美術の特徴や影響を理解し、より深くその魅力を感じ取ってみましょう。

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