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2025.03.18

ルネサンス絵画はどんな絵画?歴史や代表的な絵画を紹介

ルネサンス絵画はどんな絵画?歴史や代表的な絵画を紹介

アートリエ編集部が、ルネサンス絵画について詳しく解説します。

ルネサンスは、ヨーロッパの文化と芸術に革命的な変化をもたらした重要な時代です。「ルネサンスとは?」「有名な画家や作品は?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

歴史の授業で名前を聞いたことはあっても、具体的な内容が曖昧な方もいるでしょう。そこでこの記事では、ルネサンスの歴史や美術の特徴について、詳しく解説します。また、代表する画家とその代表作も併せて紹介します。

この記事を読めば、ルネサンスがどのような時代だったのか、また美術がどのように発展したのかが理解できるでしょう。ルネサンス時代の絵画について知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

ルネサンスとは?歴史や意味を解説

ルネサンスチェスの駒(フリー素材)

ルネサンスとは14世紀から16世紀あたりにかけてヨーロッパで起こった、文化と芸術、学問の再生運動です。イタリアのフィレンツェを中心に始まり、政治や経済、宗教や科学から芸術まで多岐にわたる分野に影響を与えました。

「ルネサンス」はフランス語で「再生」や「復興」を意味し、ルネサンス運動により古代ギリシャやローマ文化を再生させ新たな表現や思想を発展させました。

また、ルネサンス時代は中世の封建制度や教会中心の価値観から脱却し、人間の理性や個性を重視する「人文主義(ヒューマニズム)」が広がったことも特徴です。この時期は大航海時代の始まりと重なり、地理的、文化的な視野の広がりが進んだことも重要なポイントです。

ルネサンス美術の歴史

ゴールデンホール(フリー素材)

ここからは、ルネサンス美術を前期と初期、盛期ごとにみていきましょう。それぞれの年数については厳密に定義できないため、目安として参考にしてください。

プロトルネサンス(1300年〜1401年ごろ)

プロトルネサンスはゴシック美術からの脱却を目指し、より現実的で人間らしい表現を追求した時期です。この時期の美術の中心はイタリアのシエナやフィレンツェにありました。

プロトルネサンスの代表的な芸術家は、チマブーエやジョット・ディ・ボンドーネなどです。
ボンドーネは絵画に遠近法の概念を導入し、空間の奥行きや登場人物の表情をリアルに表現しました。

前期ルネサンス(1401年~1442年ごろ)

前期ルネサンスでは遠近法や解剖学の知識を活用し、さらに自然でリアルな表現が発展しました。美術の中心地となったのはフィレンツェで、富豪といわれる一族が画家のパトロンとなり、芸術文化を引っぱった時代でもあります。

技法においてはフィリッポ・ブルネレスキが建築分野で遠近法の理論を確立し、マサッチオは遠近法と解剖学的な知識を駆使して、絵画に立体感をもたらしました。

盛期ルネサンス(1475年~1525年ごろ)

盛期ルネサンスは、ルネサンス美術の黄金期とされ、巨匠たちが数多くの名作を生み出した時期です。この時期は三大巨匠といわれる世界的に有名な芸術家、「レオナルド・ダ・ヴィンチ」「ミケランジェロ」「ラファエロ」が登場します。

技法は光と影のコントラストを活用した「キアロスクーロ」や深い色彩などが発展し、絵画表現がさらに豊かになりました。盛期ルネサンスの時代は、ローマが美術の中心地となっています。

絵画が発達|ルネサンス美術の特徴

ローマのサンタ・マリア・デル・ポポロ教会(フリー画像)

ここからはルネサンス美術がどのように発達したのか、特徴をもとにみていきましょう。発達がみられたのは、主に以下のような点です。

  • 写実性
  • 美の追及
  • 人間性を表す感情表現
  • 遠近法の発明で絵画に劇的な変化
  • 解剖学
  • 油絵の技術が確立

1つずつ詳しく解説します。

写実性

ルネサンス美術では、現実世界を正確に描写する「写実性」が重要視されました。多くの芸術家たちは自然や人体を綿密に観察し、光と影の使い方を工夫することで、立体感と深みのある表現を実現します。

美の追及

ルネサンス期の芸術家たちは、古代ギリシャやローマの理想的な美を再認識し、完璧なプロポーションやバランスの取れた構図を追求しました。

特に、レオナルド・ダ・ヴィンチは「黄金比」を基にした美の法則を研究し、自然と調和した芸術作品を生み出すことに成功しています。

さらに、人体解剖学の発展により筋肉や骨格の正確な描写が可能となり、より洗練された美の表現が実現されました。

人間性を表す感情表現

「アダムとイブは楽園から追放された」マサッチオ

出典:Wikiart

ルネサンス美術では、人間の内面や感情を豊かに表現することが重要とされました。ヒューマニズムの追求により宗教画や肖像画にて、登場人物の表情や姿勢から深い感情が伝わるようになります。

特に、マサッチオやミケランジェロ、ラファエロの芸術においては感情表現の豊かさと繊細さが高く評価されています。

中世時代には同じような顔やポーズの絵がほとんどだったのに対して、ルネサンスに入ると絵が物語のように表現され、多くの人に共感と感動を与えました。

遠近法の活用で絵画に劇的な変化

遠近法の革新的な活用は、ルネサンス美術における革命的な技術革新でした。フィリッポ・ブルネレスキが確立した一点透視図法により、絵に奥行きと立体感を持たせる、リアルな空間表現が可能となりました。

さらに、マサッチオは遠近法に加えて、色調の明暗で量感を表しました。遠近法は建築や風景画だけでなく、宗教画や肖像画にも広く応用され、芸術作品に新たな次元をもたらしています。

解剖学

解剖学の研究は、ルネサンス美術において重要な要素です。イタリアの大学講師により科学的な人体解剖が実施されはじめますが、先人の影響が強く解剖には誤りが多くみられました。

一方、ルネサンスの芸術家たちは筋肉や骨格、関節の動きを正確に理解することで人物の自然なポーズやリアルな表現を可能にしました。

レオナルド・ダ・ヴィンチは、自ら解剖学の研究を行い、人体の構造を詳細に描いたスケッチを残しています。レオナルドの研究成果は、絵画だけでなく彫刻にも大きな影響を与えました。

油絵の技術が確立

ルネサンス期には油絵の技術が確立され、色彩表現の幅が飛躍的に広がりました。油絵は乾燥に時間がかかるため、透明感のある色彩や繊細なグラデーションを表現することが可能となりました。

特に、北ヨーロッパの画家ヤン・ファン・エイクが油絵の技法を発展させ、イタリアの芸術家たちに大きな影響を与えています。油絵の技法により、リアルで豊かな色彩表現が実現され、絵画の質が格段に向上しました。

ルネサンスの三大画家も登場|代表的な絵画と画家を紹介

マサッチオのフレスコ画『貢の銭』

出典:Wikiart

ここからは、ルネサンスを代表する画家と代表作を紹介します。誰もが目にしたことがある絵画や、三大巨匠といわれる画家も登場するので、ぜひお楽しみください。

チマブーエ

チマブーエ(Cimabue)は、13世紀末のイタリアを代表する画家で、ゴシック美術からルネサンスへの橋渡し役を果たしました。また、ビザンティン様式の伝統を継承しつつ、より自然な表現と空間的な奥行きを取り入れた先駆者でもあります。

本名はチェンニ・ディ・ペーポと言われており、チマブーエは通称です。当時のイタリアの画家は、通称で呼ばれるのが一般的でした。

「サンタ・トリニタの聖母」

サンタ・トリニタの聖母

出典:Wikiart

「キリストの鞭打ち」

キリストの鞭打ち

出典:Wikiart

代表作「サンタ・トリニタの聖母」は、聖母マリアと幼子イエスを描いた宗教画で、荘厳な構図と豊かな金箔装飾が特徴です。聖母の優雅な姿勢と穏やかな表情が際立ち、光と影の効果を用いることで、人物に立体感を与える工夫もみられます。

「キリストの鞭打ち」は金箔と卵のテンペラで描かれており、まだ金色が残っています。どちらも1280年頃の絵画といわれています。

フラ・アンジェリコ

フラ・アンジェリコ(1387‐1455)は、15世紀のイタリアで活躍した修道士兼画家で、敬虔な信仰心と繊細な色彩表現で知られています。アンジェリコの作品は宗教的なテーマが多く、静謐な雰囲気と優雅な描写が特徴です。

本名はグイード・ディ・ピエトロで、通称のフラアンジェリコはイタリア語で「天使のような」という意味があります。10代のころから修道士に就いており、フィレンツェの修道院に移った際に芸術家としての刺激を受けたそうです。

「受胎告知」

受胎告知

出典:西洋絵画美術館

「聖母戴冠」

聖母戴冠

出典:wikimedia

代表作「受胎告知」は、天使ガブリエルが聖母マリアにキリストの誕生を告げる場面を描いたもので、淡い色彩と緻密なディテールが印象的です。

光の表現や建築的な背景が、場面に神聖な雰囲気を与えており、鑑賞者に深い感動を与える作品となっています。ここで紹介している「受胎告知」は3部作のうちの1つです。

「聖母戴冠」はキリストによって冠を授けられる聖母が描かれており、アンジェリコならではの色彩やニュアンスカラーが堪能できる作品です。

マサッチオ(マサチオ)

マサッチオ(1401年-1428年)は、初期ルネサンスの重要な画家で、遠近法と写実的な描写で絵画史に革命をもたらしました。また、光と影の効果を用いて立体感を表現し、宗教画にリアリズムを取り入れた先駆者とされています。

本名はトンマーゾ・ディ・セル・ジョヴァンニ・カッサーイです。通称のマサッチオは「不格好」や「だらしない」男性を意味します。20代で謎の死をとげた短命な画家ですが、多くの芸術家に多大な影響を与えました。

「聖ユウェナリス三連祭壇画」

聖ユウェナリス三連祭壇画

出典:Wikiart

「聖なる三位一体」

聖なる三位一体

出典:Wikiart

若いころに制作した「聖ユウェナリス三連祭壇画」では、鮮やかな色彩と自然な人物表現が際立っており、マサッチオの才能の片鱗がうかがえます。

代表作「聖三位一体」は、西洋絵画で初めて正確な一点透視図法が使用された作品です。登場人物は神とキリスト、聖母マリアと聖ヨハネが描かれ、両端には寄進者も描かれています。奥行きが見事に表現されている芸術的な作品です。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(1488年ごろ-1576年)は、ヴェネツィア派の巨匠で、色彩表現の革新者として知られています。作品は豊かな色使いと繊細な筆致で、宗教画から神話画、肖像画まで幅広いジャンルにわたる多様な作品を生み出しました。

ティツィアーノは長きにわたり活躍した画家で、筆使いや色彩は西洋絵画に大きく影響を与えています。

「ウルビーノのヴィーナス」

ウルビーノのヴィーナス

出典:Wikiart

「バッカスとアリアドネ」

バッカスとアリアドネ

出典:Wikiart

代表作「ウルビーノのヴィーナス」は、裸婦像の理想美を追求した作品で、滑らかな肌の質感と優雅なポーズが特徴です。「バッカスとアリアドネ」は、神話の世界が鮮やかに描かれ、動きのある構図とダイナミックな色彩がみる者を魅了します。

ティツィアーノは、光と影の対比を巧みに操り、人物の感情や場面の雰囲気を豊かに表現しました。

レオナルド・ダ・ヴィンチ

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年-1519年)はルネサンス期の代表的な天才画家であり、科学者や発明家としても知られています。また、自然観察と科学的探求を通じて、リアルな描写と革新的な技法を生み出しました。

レオナルド・ダ・ヴィンチはイタリアのトスカーナ地方にあるヴィンチという町の出身です。『ダ・ヴィンチ』はその町名に由来しています。

「モナ・リザ」

モナ・リザ

出典:Wikiart

「最後の晩餐」

最後の晩餐

出典:Wikiart

代表作「モナ・リザ」は、世界で最も有名な肖像画の1つです。微笑む女性の表情と背景の遠近感が絶妙に表現されており、その謎めいた表情や静謐さが今も多くの人々を魅了しています。
「最後の晩餐」ではイエス・キリストと十二使徒の緊張感あふれる瞬間が、遠近法を駆使して劇的に描かれました。中央にいるキリストが十字架にかけられる前日の晩餐会にて、「この中に裏切り者がいる」と発言した場面が描かれています。

レオナルドの作品は、科学的な観察と芸術的な感性が融合した傑作として、世界中から高く評価されています。

レオナルド・ダ・ヴィンチについては、以下の記事でも詳しく解説しているので、さらに詳しく知りたいという方は、併せて読んでみてください。

レオナルド・ダ・ヴィンチとは?「芸術と科学の天才」の略歴や作品の特徴、代表作について解説します!

ミケランジェロ・ブオナローティ

ミケランジェロ・ブオナローティ(1475年-1564年)はルネサンス期を代表する彫刻家、画家、建築家であり圧倒的な技術力と情熱的な表現で知られています。彼は人体の美しさと力強さを追求し、芸術における新たな基準を築きました。

ミケランジェロはレオナルド・ダ・ヴィンチと同時代の芸術家で、三大巨匠の1人です。年齢はミケランジェロの方が約20歳ほど若いですが、レオナルドにライバル心を抱いていたといわれています。

「ダビデ像」

ダビデ像

出典:Wikiart

「アダムの創造」

アダムの創造

出典:Wikiart

代表作「ダビデ像」は、完璧な人体のプロポーションと緊張感あふれる姿勢が特徴で、ルネサンス彫刻の頂点とされている作品です。世界的にも有名な彫刻で、目にしたことがある方も多いでしょう。

また、システィーナ礼拝堂の天井画「アダムの創造」では神とアダムの指先が触れ合う瞬間を象徴的に描き、生命の誕生と神性を力強く表現しています。ミケランジェロはこのような、筋肉質でしなやかな動きを表現することを得意としていました。

ラファエロ・サンティ

ラファエロ・サンティ(1483年-1520年)は、ルネサンス美術の巨匠として知られ、調和の取れた構図と優雅な人物描写で名高い画家です。作品は、穏やかな色彩と洗練されたデザインが特徴で、宗教画から肖像画まで幅広く手がけました。

ラファエロはレオナルドやミケランジェロの芸術に大きな影響を受け研究し、後に同じ時代で2人と並ぶ三大巨匠の1人になります。37歳の若さで亡くなっていますが、芸術界に多大な影響を与えました。

「アテネの学堂」

アテネの学堂

出典:Wikiart

「システィーナの聖母」

システィーナの聖母

出典:Wikiart

代表作「アテネの学堂」は古代ギリシャの哲学者たちを集めた壮大な壁画で、幾何学的な構図と透視法を駆使した空間表現が見事です。

また、「システィーナの聖母」では聖母マリアと幼子イエスの神聖な姿を優美に描き、その穏やかな表情と柔らかな色彩が鑑賞者を魅了します。

まとめ

「聖マタイの召命」
マリヌス・ファン・レイマースヴァーレ

出典:Wikiart

この記事ではルネサンス期の絵画について、歴史的背景や美術の特徴、代表的な画家や代表作を詳しく解説しました。

ルネサンスは「再生」や「復興」を意味し、古代ギリシャとローマ文化を再評価した時代です。美術においては写実性や美の追求、遠近法や解剖学の進歩などがみられました。油絵の技法が確立したのもルネサンス時代です。

現代まで語り継がれる有名な絵画が、数多く描かれています。この記事を参考にして、ルネサンス美術の奥深さと魅力に触れてみてください。

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