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2024.08.14

フリーダ・カーロとは?来歴や作風、代表作について詳しく解説します!

フリーダ・カーロとは?来歴や作風、代表作について詳しく解説します!

こんにちは、アートリエ編集部です。今回は、フリーダ・カーロについて詳しく解説します。彼女の来歴、作風、そして代表作について学び、ぜひその魅力に触れてみましょう。

フリーダ・カーロの人生は、芸術と痛み、情熱と苦悩が交錯するドラマティックなものでした。作品と人生に触れることで、彼女の芸術がなぜこれほど多くの人々を魅了するのかが理解できるでしょう。

フリーダ・カーロとは

フリーダ・カーロは1907年にメキシコシティで生まれ、1954年に亡くなりました。

メキシコシティ

彼女はメキシコを象徴する画家であり、その生涯と作品は個性と深い感情に彩られています。彼女の作品は主に自己の経験、特に身体的な痛みや感情的な苦しみを描いています。

フリーダ・カーロの作品は、シュルレアリスムとシンボリズムを融合させたものであり、彼女の独特な視点から描かれています。

社会的および政治的なテーマも取り入れており、メキシコ革命後のメキシコ文化を背景に描かれてもいます。

フリーダ・カーロの来歴やエピソード

フリーダ・カーロの人生は、劇的な出来事に満ちています。

フリーダ・カーロ 「ルーサー・バーバンクの肖像」 (1931)

来歴やエピソードを通じて、彼女の作品に込められた背景を理解していきましょう。

生い立ち

フリーダ・カーロは、ドイツ系ハンガリー人の父と、先住民族とスペイン人の血を引く母の間に生まれました。

彼女は幼少期から病弱で、6歳の時にポリオにかかり、右脚が細くなってしまいました。この経験が彼女の身体的なアイデンティティとなり、作品に大きな影響を与えたのです。

カーロは幼少期から好奇心旺盛で、学問にも秀でていました。彼女は、当時としては珍しく、女子が通うことの少なかった国立予備校に通い、科学や文学に興味を持ちました。

彼女の学友には、後にメキシコの文化や政治に影響を与えた人物も多く、彼女の知識と視野を広げるきっかけとなりました。

バス事故と後遺症

18歳の時、フリーダ・カーロは重大なバス事故に遭い、脊椎や骨盤など複数の骨折を負い、長期間の入院とリハビリを余儀なくされました。

この間に、彼女は絵を描くことを始め、その後のキャリアの基礎を築いたのです。

彼女の作品には、事故による身体的な痛みと後遺症が頻繁にテーマとして描かれています。

自宅での静養中、父親から借りた画材を使い、母親が病室に仕立ててくれた特別なイーゼルで絵を描き始めた彼女は、新たな自己表現の手段を見つけました。

事故はフリーダの身体と精神に深い傷を残しましたが、それは同時に彼女の創作活動の源泉となり、痛みを和らげ、経験を芸術に昇華させることができたとみられます。

この時期に描かれた作品には、彼女の苦しみと再生といったテーマが反映されています。

結婚生活の破綻と画家としての成功

フリーダ・カーロは1929年にメキシコ人画家ディエゴ・リベラと結婚しました。

二人の結婚生活は波乱に満ち、離婚と再婚を繰り返しましたが、ディエゴの支援もあって彼女の作品は国際的に認められるようになりました。

1938年にはニューヨークで初の個展を開催し、1940年代にはメキシコやニューヨーク双方でのグループ展に参加するなど、芸術界における地位を着実に築いていきます。

彼女の絵にはしばしばディエゴが登場し、彼の影響でメキシコの壁画運動や政治的テーマを取り入れられるようになったと見られています。

このカップルの関係は複雑で、愛と裏切りを繰り返す激しいものでしたが、その中でもフリーダは自己の芸術を磨き続けました。

彼女の作品は結婚生活の中で感じた感情や経験を反映しており、それが彼女の作品に深みを与えることとなったのです。

晩年

晩年のフリーダ・カーロは、身体的な痛みと闘いながらも精力的に作品を制作し続けました。

1954年に肺炎で亡くなるまで、多くの展覧会に参加し、作品を通じてメキシコ文化の豊かさを世界に伝えました。

彼女の遺産は現在も多くの人々に愛され、世界中の美術館で展示されています。車椅子を使いながらも情熱的に絵を描き続け、社会的・政治的な問題にも積極的に関与しました。

1953年にはメキシコシティで生前においては二度目となる個展が開催され、カーロ自身はストレッチャーにより移送され、ベッドごとギャラリーに運ばれて参加しました。

晩年の作品には、彼女の痛みと苦しみ、そして生きる意志が色濃く反映されています​。

フリーダ・カーロの作風

フリーダ・カーロの作風は、その独特な視点と、これまで見てきたような激動の個人体験、経験に深く根ざしています。

フリーダ・カーロ 「猿と自画像」 (1945)

彼女の作品は、シュルレアリスムやシンボリズムの要素を取り入れながら、彼女自身の感情や痛みを表現するものでした。

ここからは、フリーダ・カーロの作風について詳しく見ていきましょう。

シュルレアリスム

フリーダ・カーロの作風はシュルレアリスムの影響を受けています。

彼女は夢と現実が交錯するような世界を描き出し、見る者に幻想的な印象を与えます。

彼女の作品は、超現実的なイメージや象徴、つまりシュルレアリスム的表現手法を通じて、彼女の内面的な世界や経験をあらわしていたのです。

しかし、こうした表現は彼女にとっては「現実」でした。自身の絵画には、単に自己の帯びている現実がそのまま反映されただけであるとし、「リアリズム」と自身の作を評していたのです。

彼女自身は自分をシュルレアリストとは認めていませんでしたが、作品には以下のように、明らかにシュルレアリスムの要素が見られます。

彼女の作品には、本来ありえない状況、夢や無意識の世界を描いたものが多く見られます。

たとえば、彼女の絵には実際ではあり得ない状況や、現実には複数名いるはずのない二人の自身が描かれるなど奇妙な組み合わせの要素があり、それが作品にシュルレアリスム独特の雰囲気をもたらしています。

このように、彼女のシュルレアリスム的な作品は、現実と非現実の境界を曖昧にし、見る者に新たな視点を持たせているのです。

シンボリズム

フリーダ・カーロの作品には多くのシンボリズムが見られ、彼女の内面的な世界やメキシコ文化の象徴が描かれています。

たとえば、動物や植物、宗教的なモチーフなどが彼女の絵画に頻繁に登場し、それぞれが特定の意味を持っています。

こうしたモチーフは、彼女の感情や、個人的な経験を視覚的に表現する手段として使われています。

たとえば、彼女の作品にはしばしば猿や鹿、骨、血などのイメージが登場し、それぞれが彼女の人生の特定の側面や感情を象徴しています。

こうしたシンボルを通じて、彼女は自身の内面を視覚的に表現し、見る者にその複雑さ、孤独さ、悲しさなどを伝えています。

自画像

カーロの作品の多くは自画像であり、彼女自身の感情や経験を率直に表現しています。

こうした自画像は、彼女のアイデンティティや痛み、喜び、そして内なる世界を反映しているとされています。

彼女はしばしば自分自身を中心に据えた作品を描き、自分の体や顔を通じて感情や物語を語りました。彼女の自画像では、痛みや苦しみだけでなく、強さや自己肯定感も表現されています。

フリーダの自画像は、彼女の内面の真実を表現する手段として重要だったとみられます。

彼女は、自身の顔や体を描くことで、自己の存在とアイデンティティを再確認し、その過程で感じた感情や経験を視覚化しました。

彼女の自画像には、彼女の人生におけるさまざまな出来事や感情が刻まれているといえるのです。

痛みと苦しみ

フリーダ・カーロの作品の中心テーマの一つは、自身が経験したことを中心とする、身体的な痛みと精神的な苦しみです。

バス事故やその後の手術の経験、そして結婚生活の苦悩が彼女の作品に深く刻み込まれています。

彼女は絵画で、痛みと苦しみを美しく、しかし確実かつ痛烈に表現したかったのだと考えられます。

彼女は痛みを通じて自分自身を表現し、その苦しみを芸術に昇華させることで、見る者の共感と理解を呼び起こそうとしたのです。

自分の体をキャンバスに描き、その痛みを視覚的に表現することで、自己の経験を他者と共有しようとしたとみられます。

彼女の作品には、彼女の痛みが象徴的に描かれており、その苦しみが見る者に直接伝わる強さを持っているのです。

メキシコ文化の影響

カーロの作品にはメキシコ文化の影響が見られます。

彼女はメキシコの伝統的な衣装や風景、思想的なシンボルを作品に取り入れ、メキシコのアイデンティティを表現しています。伝統や風景といった文化を取り入れたことで、作品は独自性と普遍性を兼ね備えることになりました。

彼女はまた、メキシコの民間伝承や歴史、宗教的な儀式を題材にすることで、彼女の作品に文化的な意味も持たせたかったと考えられます。

メキシコの色鮮やかな風景や伝統的な衣装が描かれている作品からは、彼女の愛国心と文化への誇りが感じられます。

フリーダ・カーロの代表作

フリーダ・カーロの代表作は、彼女の独特な視点と感情を色濃く反映しています。

以下に紹介する作品は、その中でも特に重要なものです。

The Two Fridas(フリーダとフリーダ)

この作品は、フリーダ・カーロの最も有名な自画像の一つです。

The Two Fridas(フリーダとフリーダ)

二人のフリーダが並んで座り、一方はメキシコの伝統衣装、もう一方はヨーロッパ風のドレスを着ています。

両者は心臓を露出させ、血管が繋がっている姿が描かれ、彼女のアイデンティティの葛藤と内なる分裂を象徴しているようです​。

「フリーダとフリーダ」は、彼女の個人的な感情と経験を象徴的に描いた作品です。

両者のフリーダは手をつなぎ、痛みや苦しみに対抗する内なる強さと弱さ、そしてその対立が視覚的に表現されています。背景には嵐のような雲が描かれ、内面的な混乱と葛藤が強調されているとも捉えられます​​。

The Broken Column(折れた柱)

The Broken Column(折れた柱)

この絵は、カーロの身体的な痛みを直接的に表現した作品です。

彼女は裸で立ち、背骨が折れた柱のように描かれ、全身には金属の支柱と釘が打たれています。

この作品は1944年に制作されました。この年、フリーダは37歳で、彼女の健康状態が悪化し、手術を繰り返していました。

18歳のときのバス事故の後遺症で脊柱や骨盤に損傷を受けており、鋼鉄製コルセットを装着し、ベッドでの絶対安静を余儀なくされていたのです。

背景は灰色で、彼女の孤独や絶望を表しています。体は地震の割れ目に似た溝で二つに分かれ、手術の苦しさが示唆されています。

突き刺さった釘は、聖セバスティアヌスという殉教者との共通点を通じて、彼女の肉体的な痛みを表現しています。涙を流す無表情の顔は、彼女が苦痛に慣れてしまったことを示しているかのようです。

棘のネックレスとハチドリのある自画像

この自画像では、フリーダ・カーロが棘のネックレスを身につけ血を流し、カーロの胸には小さなハチドリが止まっています。

Self-Portrait with Thorn Necklace and Hummingbird(棘のネックレスとハチドリのある自画像)

背景には緑豊かな植物が描かれ、彼女の顔には毅然とした表情が浮かんでいます。

この作品は彼女の内なる強さと苦しみを象徴しています。棘のネックレスは彼女の痛みと犠牲、ハチドリは希望や自由の象徴とされています。

また、背景に描かれた植物や動物は、彼女の自然愛とメキシコ文化への愛情の表現だとみられます​​。

フリーダ・カーロを収蔵する美術館

フリーダ・カーロの作品は、世界中の美術館で収蔵されています。

以下からは、彼女の作品を常設展示している美術館を紹介します。

名古屋市美術館

日本の名古屋市にある美術館で、国内外の優れた美術作品を所蔵しています。フリーダ・カーロの作品を複数所蔵していることでも知られています。

『死の仮面を被った少女』(1938年)

その中のひとつ、カーロの『死の仮面を被った少女』(1938年)は、小麦色の肌をした少女が骸骨の仮面をかぶり、両手に小さな花を持って立っています。この絵には「彼女は一人で遊ぶ」という副題が付けられており、カーロの流産経験やメキシコの「死者の祭り」に関連した象徴的な要素が描かれているとされます。

もう一つの収蔵作品、『オブジェによる自画像』(1946年)は、カーロの自画像。彼女の痛みとアイデンティティが象徴的に描かれています。こうした作品はカーロの人生とメキシコ文化の深い結びつきを感じることができるものであり、彼女の芸術的な世界が凝縮されています。

フリーダ・カーロ博物館(メキシコシティ)

フリーダ・カーロ博物館は、メキシコシティのコヨアカン地区に位置する「青い家」として知られる建物で、フリーダ・カーロの生家です。博物館の美しい建物や庭園を楽しみながら、フリーダ・カーロの生活や彼女の作品に浸ることができます。

この博物館は彼女の作品だけでなく、彼女が生前に使用していた日用品や衣服、コルセットなどが展示されており、彼女の生き方やメキシコの文化に触れることができます。

館内では、フリーダ・カーロの絵画や彼女が集めたオブジェ、さらには彼女が身に着けていたドレスなどを展示中。特に、イサム・ノグチが贈った「蝶々の標本」がフリーダのベッドの天蓋に飾られている点や、パティ・スミスの献辞「Noguchi’s Butterflies」が青い壁に書かれている点が見どころです。

館内は広くはありませんが、展示物は充実しており、フリーダの世界観を感じ取ることができます。また、フリーダのドレスや日用品が別棟に集められているため、彼女の生活や個性を深く理解することができるはず。

人気のある観光スポットであり、特に週末や祝日は混雑することが多いため、チケットは事前にオンラインで購入すべき。写真撮影には別途料金が必要であり、館内での支払いは現金のみとなっています。

まとめ

フリーダ・カーロの人生と作品は、彼女の独自の視点と経験を通じて、痛みと苦しみ、そして希望と強さを描き出しました。今でも、多くの人々に影響を与え続けています。

彼女の作品を通じて、彼女の情熱と苦悩、そしてメキシコ文化の豊かさを感じることができるでしょう。

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