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2025.03.25

バロック絵画はどんな絵画?バロック美術の代表的な画家と代表作も紹介

バロック絵画はどんな絵画?バロック美術の代表的な画家と代表作も紹介

アートリエ編集部がバロック絵画について詳しく解説します。バロック絵画は、17世紀ごろにヨーロッパで発展した美術様式の1つです。そんなバロック絵画ですが、「具体的にどんな絵画なの?」「ルネサンスと何が違うの?」と思う方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、バロック絵画はどのような絵画か詳しく解説します。また、ルネサンスやロココとの違い、バロックを代表する画家や代表作も併せて紹介します。

この記事を読めば、バロック美術の特徴と代表的な作品について理解できるので、バロック絵画に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

バロックとは?

バロック様式イメージ(フリー素材)

バロックとは、17世紀初頭から18世紀中頃にかけてヨーロッパで流行した芸術様式です。名前の由来はポルトガル語の「いびつな真珠(barroco)」からきています。バロックは、表現や豊かな装飾性が特徴で、美術・建築・音楽・文学など幅広い分野に影響を与えました。

背景にはルネサンスの均整や調和を重んじる、美学に対する新たな試みがあります。バロック調の芸術では、感情を自由に表現することが重視され、動きのある構図や豪華な装飾が生み出されました。

美術ではカラヴァッジョの劇的な明暗表現、建築ではベルニーニのダイナミックな彫刻などが代表的です。バロックは従来の様式にとらわれず、より自由で力強い表現を追求した芸術運動です。

バロック美術の絵画とは?ロココ、ルネサンス美術との違い

バロック様式イメージ(フリー素材)

ここからは、ルネサンスやロココ美術との違い、バロック美術の特徴を解説します。それぞれ詳しくみていきましょう。

ルネサンス美術の特徴

ルネサンス美術は14世紀から16世紀にかけてイタリアで発展した芸術運動で、人間の理性や自然の美しさを重視しています。ルネサンス時代の美術は古代ギリシャやローマの文化を取り入れ、よりリアルな表現を追求しました。

特に、自然の表現が重視され、人物や風景は写実的に描かれると同時に、理想化された形で表現されることも多くありました。明暗法や遠近法などの技術が発展し、絵画に奥行きと立体感が生まれたのもこの時代の特徴です。

代表的な画家には、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロ・サンティの三大巨匠が挙げられます。彼らの作品は、ルネサンス美術の精神を象徴し、後のバロック美術にも影響を与えました。

ロココ美術の特徴

ロココ美術は、18世紀初頭のフランスで生まれ、軽やかで優雅な装飾が特徴の美術様式です。バロックの壮大さとは対照的に、軽やかで優雅な装飾性が重視され、特にフランス宮廷で発展しました。

ロココ美術の最大の特徴は優美で繊細なデザインで、バロックの重厚さに比べて明るく柔らかい色彩や、装飾的な曲線が多用されています。また、光と影の表現も穏やかで、柔らかなグラデーションが多く採用されました。

代表的な画家には、フランソワ・ブーシェや、ジャン・オノレ・フラゴナールが挙げられます。

バロック美術の特徴

バロック美術は劇的で感情を揺さぶるような作風が特徴で、動感とダイナミックさも魅力です。また、人物のポーズや構図に大胆な動きを取り入れることで、より劇的な表現が生まれました。

さらに、バロック美術では明暗の強いコントラスト(キアロスクーロ)が駆使され、光と影の対比を際立たせることで、絵画に奥行きや立体感を強調しています。

代表的な画家には、カラヴァッジョ、レンブラント・ファン・レインなどが挙げられます。

バロック美術の代表的な画家と代表作

バロック様式イメージ(フリー素材)

ここからは、バロック美術の中でも有名な画家と代表作を紹介します。

イタリアのカラヴァッジョ

カラヴァッジョはバロック美術を代表する画家の1人であり、革新的な表現技法で後世に大きな影響を与えました。彼の最も特徴的なスタイルはキアロスクーロ(明暗対比を極端に強調する技法)です。

単一の光源を用いることで、登場人物や場面を劇的に際立たせました。カラヴァッジョが描く聖書の絵画は、庶民が登場人物としてリアルに描かれている点も特徴です。

「果物籠を持つ少年」

果物籠を持つ少年

出典:Wikiart

「果物籠を持つ少年」はカラヴァッジョがローマに移ったばかりのころの絵画で、親友のマリオ・ミニーティをモデルにして描かれました。果物の描写は極めて精密で、後に園芸学者によって品種の特定が可能といわれるほど繊細に描かれています。

「聖マタイの召命」

聖マタイの召命

出典:Sfumart

カラヴァッジョはローマ教会の有力者デル・モンテ枢機卿の支援を受けて、サン・ルイージ・デイ・フランチェージ聖堂の礼拝堂に飾る大作を依頼されました。

この作品では薄暗い室内に差し込む一筋の光により、徴税人のマタイがキリストに召される瞬間を象徴的に描いています。

オランダのレンブラント

レンブラントはオランダのバロック美術を代表する画家で、肖像画や歴史画、宗教画の分野で数々の名作を生み出しました。キアロスクーロを駆使した、ドラマチックな表現が特徴です。

生涯にわたって70点以上の自画像を描き、自分の内面的な変化や人生の浮き沈みを記録し続けました。

「夜警」

夜警

出典:Wikiart

「夜警」は、アムステルダムの火縄銃組合から依頼された集団肖像画です。中央の隊長が手を振り上げ、指示に従って隊列が動き出そうとする様子が描かれています。

「夜警」はそれまで静的に描かれることが一般的だった肖像画に、動きと臨場感を取り入れた点が革新的でした。レンブラント独特の光の演出によって、人物の表情や衣装の質感が際立ち、バロック絵画の魅力が凝縮された作品となっています。

「ガリラヤ湖の嵐」

ガリラヤ湖の嵐

出典:Wikiart

「ガリラヤ湖の嵐」はレンブラントが描いた唯一の海の風景画で、新約聖書のエピソードを基に制作されました。イエスが荒れ狂う海を鎮め、船に乗る弟子たちを救う場面が描かれています。船の中にレンブラント自身が描かれている点も特徴です。

オランダのフェルメール

カラヴァッジョやレンブラントがバロック美術の特徴的な劇的な表現や感情的な強調を追求したのに対し、フェルメールは、同じバロック時代の中でも異なるアプローチを取りました。彼は17世紀オランダの黄金時代を代表する画家の1人であり、日常生活を静かで安らかな光の表現で描くことで知られています。

フェルメールの絵画は、光と影の繊細な表現や、室内空間の緻密な構成が特徴で、一般的なバロック美術の劇的な動きや宗教的主題とは一線を画しています。彼の作品は、穏やかな室内の情景や静かな人物像を描き、バロックの他の画家たちとは異なる静けさと精緻さが際立っています。

「真珠の耳飾りの少女」

真珠の耳飾りの少女

出典:Wikiart

「真珠の耳飾りの少女」は「オランダのモナ・リザ」とも称される名作です。黒い背景の中に、青いターバンを巻いた少女が振り向きざまにこちらを見つめる構図は、観る者に強い印象を与えます。

彼女の唇のわずかな開きや、光を反射する真珠のイヤリングが、神秘的な雰囲気を生み出しています。

「手紙を読む女性」

手紙を読む女性

出典:Wikiart

「手紙を読む女性」は窓からの光を受けながら静かに手紙を読む女性の姿を描いた作品です。フェルメール特有の落ち着いた室内描写と、柔らかい光の表現が際立っています。

フェルメールに関して詳しく知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。

ヨハネス・フェルメールとは?来歴や画風、代表作、代名詞である「フェルメール・ブルー」の秘密についても詳しく解説します!

フランドルのルーベンス

ピーテル・パウル・ルーベンスは、バロック美術を代表するフランドル(オランダの南西部からフランスの北端部までを含めた地方)の画家です。ルーベンスの作品はダイナミックな構図と力強さが特徴で、宗教画や歴史画を数多く残しています。

イタリア滞在中に、ルーベンスはミケランジェロやカラヴァッジョといった巨匠たちから強い明暗の対比(キアロスクーロ)やダイナミックな動きの表現、色彩の豊かな使い方などを学びました。その後帰国してからは、その技法を取り入れつつ独自の絵画技術を発展させました。

「キリストの降架」

キリストの降架

出典:Wikiart

「キリストの降架」は、イエス・キリストを十字架から降ろす場面を描いた傑作で、複雑な構図と力強い人物描写が特徴です。

「マリー・ド・メディシスのマルセイユ上陸」

マリー・ド・メディシスのマルセイユ上陸

出典:wikipedia

フランス王妃マリー・ド・メディシスの生涯を描いた連作の1つです。神話的な要素と現実の歴史を融合させ、華麗で壮大な場面を表現しています。

スペインのベラスケス

ディエゴ・ベラスケスは、スペインのバロック美術を代表する画家で、宮廷画家としての功績が大きい人物です。ベラスケスの作品は、写実的な描写と、洗練された光の表現が特徴で、王族の肖像画や歴史画において卓越した才能を発揮しました。

ベラスケスは12歳でスペインの画家フランシスコ・パチェーコに弟子入りし、絵画技術だけでなく深い教養を身につけました。その後、国王フェリペ4世に気に入られて宮廷画家となり、王族や貴族の肖像画を多く手がけています。

「ラス・メニーナス」

ラス・メニーナス

出典:Wikimedia commons

「ラス・メニーナス」は王女マルガリータを中心に、侍女や画家本人までもが描かれた画期的な作品です。画面構成の巧妙さや光の表現によって、鑑賞者を作品の中へと引き込みます。向かって1番左に描かれているのが、ベラスケス本人です。

「フラガのフェリペ4世の肖像」

フラガのフェリペ4世の肖像

出典:wikipedia

戦時中の国王フェリペ4世を描いた作品で、わずか3日間で完成されたにもかかわらず、王の威厳や細部の質感が見事に表現されています。フェリペ4世の人物画は、宮廷画家のベラスケスによっていくつか描かれています。

フランスのプッサン

ニコラ・プッサンは17世紀フランスを代表する画家で、バロック美術の中でも古典主義的なスタイルを確立した人物です。プッサンの作品は、厳格な構成と理知的な表現が特徴で、後の新古典主義や印象派の画家たちに大きな影響を与えました。

また、プッサンは他のバロック画家たちが好んだ劇的な構図や強い感情表現といった特徴とは対照的に、理性的で調和の取れた美を追求しました。これにより、彼の作品は冷静で秩序ある美として高く評価されています。

「ヴィーナスの誕生」

ヴィーナスの誕生

出典:wikipedia

プッサンの「ヴィーナスの誕生」は中央に描かれた女性が本当にヴィーナスなのか、ギリシア神話の海の妖精ガラテイアなのか議論が続いている作品です。画面全体に古典的な静謐さが漂い、単なる神話画にとどまらず、多様な意味を含む作品となっています。

「時の音楽に合わせて踊る」

時の音楽に合わせて踊る

出典:Wikiart

「時の音楽に合わせて踊る」は4人の人物が輪になって踊る様子が描かれ、時間の流れや人間の生涯を寓意的に表現している作品です。背景には夜明けの女神オーロラや太陽神アポロンの戦車が描かれ、壮大な神話的世界観も演出しています。

プッサンの作品は寓話的要素を多く含み、知的で哲学的なテーマを追求している点が特徴です。

バロック美術を鑑賞したい方におすすめの美術館

バロック様式イメージ(フリー素材)

ここからは、バロック美術を所蔵している美術館を紹介します。

国立西洋美術館

国立西洋美術館

出典:国立西洋美術館

国立西洋美術館は17世紀の巨匠たちによる作品を豊富に所蔵しており、バロック美術の特徴である劇的な光と影の表現や豊かな色彩を堪能できます。

国立西洋美術館は日本で唯一、西洋美術専門の国立美術館で、フランス政府から寄贈返還された松方コレクションを基盤に設立されました。ル・コルビュジエ設計の本館は世界遺産にも登録されており、美術館自体も見どころの1つです。

開館時間9時30分~17時30分(金曜・土曜は20時00分まで)
観覧料一般:500円
大学生:250円
休館日月曜日
アクセスJR上野駅から徒歩1分
HPhttps://www.nmwa.go.jp/jp/

ボルゲーゼ美術館

ボルゲーゼ美術館

出典:ボルゲーゼ美術館

ボルゲーゼ美術館はローマを代表する美術館の1つで、バロック彫刻の巨匠ベルニーニの傑作を間近で鑑賞できる貴重な場所です。また、ローマの美しいボルゲーゼ公園内に位置し、イタリア・バロック美術の宝庫として知られています。

カラヴァッジョのドラマチックな光と影の表現が際立つ絵画が 数多く所蔵されています。ボルゲーゼ美術館では、ベルニーニやカラヴァッジョを中心に、バロック美術の魅力を存分に楽しめます。

開館時間9時00分~19時00分
観覧料13ユーロ
休館日月曜日・12月25日・1月1日
アクセスバス停Pinciana/Museo Borgheseから徒歩3分
HPhttps://galleriaborghese.beniculturali.it/en/il-museo/la-villa/

スウェーデン国立美術館

スウェーデン国立美術館

出典:スウェーデン国立美術館

スウェーデン国立美術館は歴史ある王家のコレクションを基盤とし、バロック期の素晴らしい絵画や素描が豊富に揃っています。スウェーデン王家が長年にわたり収集した美術品を基に設立され、現在ではヨーロッパを代表する美術館の1つです。

素描のコレクションは質・量ともに世界屈指とされ、バロック時代の作品も多数所蔵されています。素描を通じてバロック芸術の技法や表現をじっくりと堪能したい方におすすめの美術館です。

開館時間11時00分~17時00分(木曜日は20時00分まで)
観覧料一般:160クローネ
20歳未満:無料
休館日月曜日
アクセスクングストレールゴーデン駅から徒歩すぐ
HPhttps://www.nationalmuseum.se/

ルーブル美術館

ルーブル美術館

出典:ルーブル美術館

ルーブル美術館はかつてフランス国王の宮殿だった歴史的建造物、バロック美術においても、イタリアやフランスの巨匠たちによる傑作を堪能できます。

バロック絵画を代表する所蔵作品は、カラヴァッジョの「女占い師」や「聖母の死」などです。

歴史ある宮殿を探索しながら、圧倒的な芸術の世界に浸る特別な時間を過ごしてみてください。

開館時間9時00分~18時00分(水曜・金曜日は21時00分まで)
観覧料一般:22ユーロ
18歳未満:無料
休館日火曜日
アクセスPalais-Royal Musée du Louvre駅から徒歩5分
HPhttps://www.louvre.fr/en

まとめ

庭園(フリー素材)

この記事では、バロック絵画や代表的な画家と代表作を解説しました。バロック絵画は17世紀初頭から18世紀中頃にかけてヨーロッパで発展した芸術様式で、劇的な光と影の表現や躍動感あふれる構図が特徴的です。

カラヴァッジョ、レンブラントなどの巨匠たちが、独自の技法で圧倒的な存在感を放つ作品を生み出しました。この記事を参考に、バロック美術の魅力を深く理解し、名画を鑑賞する楽しみを広げてみてください。

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