出典:JapanTimes
村上隆は、現代アートの世界において革新的な表現と独自のスタイルを確立した日本を代表するアーティストです。「スーパーフラット」という独創的な理論をもとに、ポップカルチャーやサブカルチャーを大胆に取り入れたスタイルで海外でも高く評価されています。
この記事では、村上の来歴や影響を受けた文化、主な作品の特徴と魅力を詳しく解説します。また、彼の作品が収蔵されている美術館も紹介するのでぜひ参考にしてみてください。
村上隆とは?
村上隆(むらかみ たかし)は1962年東京都生まれの現代アーティストであり、彼の代表的な概念である「スーパーフラット」を提唱した第一人者です。
この概念は日本の伝統美術と現代ポップカルチャーをミックスさせたもので、無階層的な文化などを表現しています。作品にはアニメやマンガの要素が取り入れられ、特に「カワイイ」文化が反映されているのが特徴です。
村上は2001年には有限会社「カイカイキキ」を設立し、アート制作や映像制作、アーティストの管理などを行っています。彼は国内外で多くの展覧会を開催し、海外でも高い評価を受け、日本人アーティストとしての地位を確立しました。
村上隆の作品は、視覚的な楽しさだけでなく文化や社会への批判的な視点も含まれていることが大きな魅力です。
村上隆の来歴
国際的な影響力があり、マルチな現代アーティストとして知られる村上隆ですが、どのような人生を歩んできたのでしょうか。ここでは、生い立ちや経歴を紹介します。
生い立ち
村上隆は1962年、東京都板橋区に生まれました。高校卒業後、アニメーターを目指しましたが挫折を経験し、2浪の末に東京藝術大学美術科日本画科に入学します。
大学院在学中の1991年には、田宮模型からインスピレーションを受けた連作を発表し、現代美術家としての道を歩み始めました。
1993年には博士後期課程を修了し日本画科初の博士号取得者となり、博士論文では「美術における『意味の無意味の意味』をめぐって」をテーマにしました。これらの経験が、彼の独自のアートスタイルや思想形成に大きく寄与しているといえるでしょう。
アンディ・ウォーホル、浮世絵からの影響
村上隆のアートは、ポップアートの巨匠であるアンディ・ウォーホルから大きな影響を受けています。特に「Warhol/Silver」と「Warhol/Gold」という2つの作品は、ウォーホルの花のシリーズを直接的に参照しているように見えます。
しかし、サラ・ソーントンの著書『Seven Days in the Art World』によると、村上はウォーホルについて尋ねられた際に不満げな反応を示したそうです。これは、ウォーホルへの尊敬と競争心が入り混じった複雑な感情の表れかもしれません。
村上はウォーホルの影響を受けながらも、日本のポップカルチャーや伝統美術を融合させた独自のスタイルを確立しています。
「スーパーフラット・コレクション展」の開催
村上隆は2016年に横浜美術館で「スーパーフラット・コレクション展」を開催しました。彼の多様なコレクションが初めて大規模に紹介されたこの展覧会では、現代美術と日本の伝統絵画、骨董品、さらにはポップカルチャーを融合させた作品が展示されました。
村上は、アートと商業の境界を曖昧にしハイカルチャーとサブカルチャーを同列に扱うことで、現代社会における価値観や文化の在り方に疑問を投げかけたのです。
この展覧会は、日本の伝統美術とポップカルチャーを融合させ、消費社会への批評的視点を含んだ新しいスーパーフラットの概念を世に広める機会になったといえるでしょう。
カイカイキキ株式会社の設立
2001年、村上隆は芸術事業の総合商社として有限会社カイカイキキを設立し、アート制作、映像制作、所属アーティストのマネージメントなど、多岐にわたる事業を展開しています。
現在、カイカイキキは東京都元麻布に本社を置き、埼玉県三芳町に制作スタジオ、中野ブロードウェイにショップやカフェ、ギャラリーを展開しています。さらに、京都やニューヨークのブルックリンにもオフィスをオープンしています。
このように、村上隆の活動は個人アーティストの枠を超え、大規模な芸術事業へと発展したといえるでしょう。
村上隆の代表作
村上隆の作品は数が多いためすべてを紹介することはできませんが、その中でも彼の想いやコンセプトが強く感じられる代表作を4つ紹介します。代表作は以下のとおりです。
- Mr.DOB
- Flower Ball
- An Homage to Monopink 1960
- フラワー マタンゴ
それぞれ詳しくみていきましょう。
Mr.DOB
Mr.DOB(ミスター・ドブ)は、村上隆が1993年に生み出した代表的なキャラクターです。大きな耳とつぶらな瞳が特徴的なこのキャラクターは、村上の「分身」として知られています。名前の由来は、コメディアンのギャグと漫画のフレーズを組み合わせたものだといわれています。
1996年から断続的に制作されているシリーズ「727」や、フィギュア、グッズなどに登場し、常に変化し続け、時にはかわいらしく、時には不気味な姿で描かれることもあります。Mr.DOBは、村上の作品の世界を理解するうえで重要な要素でしょう。
Flower Ball
「フラワーボール」は、2008年に制作された村上の作品の代表的なシリーズです。一見かわいらしい花々が球体状に集められた姿は魅力的ですが、その背後には深い意味が込められています。
村上はこの作品を通じて日本の「かわいい」文化に疑問を投げかけています。大量に並べられた花々は、量産された商品のように見え、その中身の空虚さを暗示しているのかもしれません。
また、球体という形状は地球を連想させ、現代社会における「かわいさ」の氾濫と、その中に潜む狂気を表現しているとも考えられるでしょう。
An Homage to Monopink 1960
出典:おいだ美術
フランスのアーティストイヴ・クラインへの敬意を表しているといわれる作品です。アニメ的でポップですが、浮世絵や琳派から影響を受けたフラットな構成が特徴です。
この作品は、過去から現在に至る日本文化の流れを感じさせるものとして評価されています。
フラワー マタンゴ
2006年に制作された「フラワーマタンゴ」は、フランスのベルサイユ宮殿でも展示された作品です。村上の象徴的なモチーフである花々が咲き乱れ、まるで増殖していくかのような勢いを持っています。
作品のタイトルは、日本の特撮ホラー映画「マタンゴ」から着想を得ています。一見かわいらしい色使いやキャラクターでありながら、どこか不気味さや狂気を感じさせる点が特徴です。
これは、村上が提唱する「スーパーフラット」という概念、つまり日本文化に内在する歪みを表現しているのかもしれません。
コラボレーション
村上隆は、さまざまなブランドとのコラボレーションを通じて独自のアートを広めています。ここでは、特に有名な2つのコラボ作品を紹介します。
ユニクロとのコラボレーション「ドラえもんUT」発表
2017年に出展した「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」を機に、メインビジュアルのアート作品「あんなこといいな 出来たらいいな」を基にしたデザインのTシャツとぬいぐるみがユニクロから登場しました。
このユニクロUTにはドラえもんやのび太、ひみつ道具、村上の代表作である「お花」がポップに描かれており、村上のアートとドラえもんがコラボした独特の世界観を表現しました。
ルイ・ヴィトンとのコラボレーション
村上隆とLOUIS VUITTONのコラボレーションは、2003年から2008年にかけて5回にわたり展開されました。この取り組みは、当時のアーティスティック・ディレクターであったマーク・ジェイコブスが村上のファンだったことがきっかけで実現しました。
特に印象的なのは、モノグラム・パンダやチェリーブロッサムなどのキャラクターラインでしょう。
このモノグラムを生かしたユニークなデザインはバッグやスカーフなど幅広い商品ラインで展開され、ルイ・ヴィトンの従来のファン層だけでなく、新たな顧客層も魅了したといえます。
村上隆の作品を収蔵する主な美術館
※営業時間や入館料、休館日などの情報は変更される場合があります。最新情報については公式ウェブサイトにてご確認ください。
村上隆の作品は日本国内でも鑑賞できるのでぜひ足を延ばしてみてください。ここでは、彼の作品が収蔵されている国内外の主な美術館と、それぞれの施設の特徴や鑑賞できる作品を紹介します。
- ニューヨーク近代美術館(MoMA)
- 東京国立近代美術館(東京都)
- COMICO ART MUSEUM YUFUIN(大分県)
- 国立国際美術館(大阪府)
それぞれ詳しくみていきましょう。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)
ニューヨーク近代美術館(MoMA)は、現代アートの重要な拠点として知られています。多様な著名人のアート作品を展示し、村上の作品も収蔵されています。
鑑賞できる主な作品は「727」などです。
住所 | 11 West 53 Street, Manhattan New York, New York, 10019 |
休館日 | 無し |
営業時間 | ・月~金:10:30~17:00 ・土:10:30~19:00 |
入館料 | ・大人:30ドル ・シニア( 65歳以上):22ドル(身分証明書提示) ・障がい者:22ドル(同伴の介護者は無料) ・学生:17ドル(身分証明書提示、留学生を含む) ・子ども(16歳以下):無料 ・会員:無料 |
公式HP | https://www.moma.org/ |
東京国立近代美術館(東京都)
東京国立近代美術館は、皇居近くに位置する日本初の国立美術館です。重要文化財を含む約13,000点の近現代美術作品を収蔵しています。
展示は時宜に応じたテーマで行われ、会期ごとに約200点が紹介されます。19世紀末から現代までの日本美術の流れを一気に体験できる貴重な美術館です。
収蔵作品はポリリズム、サインボードTAMIYAなどです。
住所 | 〒102-8322 千代田区北の丸公園3-1 |
休館日 | 月曜日(祝休日は開館し翌平日休館)、展示替期間、年末年始 |
営業時間 | 10:00~17:00(金・土曜は10:00–20:00) |
入館料 | ・一般:500円 ・大学生:250円 ・中学生/高校生:無料 ・65歳以上:無料(身分証明書提示) ※企画展は各展覧会ごとに異なる料金体系が設定されています。 |
公式HP | https://www.momat.go.jp/ |
COMICO ART MUSEUM YUFUIN(大分県)
出典:隈研吾建築都市設計事務所
2017年に開館した「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」は、隈研吾氏が設計した民間美術館です。
外壁は黒い焼杉でスタイリッシュな外観になっており、湯布院の大自然の中でアートが体験できます。約2倍に拡大された展示エリアでは、村上隆をはじめ、草間彌生、奈良美智などの現代アートが鑑賞できます。
収蔵されている村上の作品は、「Snow Moon Flower(雪月花)」や「DOB君」の描かれたアートなどです。
住所 | 〒879-5102 大分県由布市湯布院町川上2995−1 |
休館日 | 休館日:隔週水曜日 |
営業時間 | 開館時間: 9:30 ~17:00(最終入場 16:00) |
入館料 | ・一般:1,700円 ・大/専門学生:1,200円 ・中/高校生:1,000円 ・小学生:700円 ・障がい者手帳(一般・本人のみ):1,200円 ・子ども(未就学児) :無料 |
公式HP | https://camy.oita.jp/ |
国立国際美術館(大阪府)
出典:国立国際美術館公式サイト
国立国際美術館は、大阪の中之島に位置する世界的にも珍しい完全地下型の美術館です。2004年にリニューアルオープンし、約8,200点もの現代美術作品を収蔵しています。
シーザー・ペリによる独特なデザインの外観は、竹の生命力をイメージしており、明るい展示室では多彩な企画展が開催されています。また、家族向けのイベントやキッズルームもあるためファミリーでも楽しめるでしょう。
村上の作品は、「727 FATMAN LITTLE BOY」などが収蔵されています。
住所 | 〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-2-55 |
休館日 | 月曜日、年末年始、展示替え期間※月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日に休館 |
営業時間 | 10:00 ~17:00(入場は16:30まで)夜間開館(毎週金・土曜日)10:00 ~20:00(入場は19:30まで) |
入館料 | 【コレクション展】 ・一般:430円(220円) ・大学生(要証明):130円(70円) ・高校生/18歳未満/65歳以上(要証明):無料 ※特別展は各展覧会ごとに異なる料金体系が設定されています。 |
公式HP | https://www.nmao.go.jp/ |
まとめ
出典:tagboat
この記事では、村上隆の来歴や影響を受けた文化、主な作品の特徴と魅力、作品が鑑賞できる美術館を詳しく解説しました。
現代アートの世界において、日本のポップカルチャーや伝統美術を融合させた独自のスタイルを確立したのが村上隆です。実際の作品のカラフルな色使いや大胆な構図などを、ぜひ直接見に行って肌で感じてみてください。