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2024.07.02

油彩とは?歴史や特徴についてわかりやすく解説します!

油彩とは?歴史や特徴についてわかりやすく解説します!

油彩の絵画はいかにもアートというイメージがあります。「油彩」という言葉は知っていても、実際にどのような画材を使った作品なのかピンとこないかもしれません。 油彩の絵画には長い歴史があります。一体どんな変遷をたどって美しい作品が生み出されてきたのでしょうか。

今回は油彩の歴史や特徴についてアートリエ編集部が詳しく解説します。

油彩とは ?

油彩は「油絵」とも呼ばれます。鉱物性の顔料や亜麻仁油を原料とする油絵具で描かれた絵画のことです。透明、不透明、厚塗り、極薄塗りなどさまざまな表現ができるのが特徴で、美術史上の数多くの傑作は油彩画です。その油彩画にはどんな歴史があるのでしょうか。

油彩の変遷をたどってみましょう。

油彩の歴史 

植物油で練った絵具を用いて光沢と深みのある絵画を制作することは、古代ギリシア時代にはすでに知られていました。当時はまだ油の乾燥に日数がかかったため、試みの域を出ることはありませんでした。

油彩の乾燥促進技術は、その後10世紀に渡って改良されていきます。12世紀には実用に耐える油彩の技術が完成したといわれていますが、普及し始めるのは15世紀を待たなくてはなりませんでした。

油彩が隆盛を迎えるのは、15世紀のフランドル地方。一般的には、ファン・アイク兄弟が油彩画技法を確立したといわれています。最初の油彩の傑作とされているのも、《赤いターバンの男》や《ヘントの祭壇画》などヤン・ファン・アイクの手によるものでした。ファン・アイクの作品を見れば一目瞭然、油彩の技法によって独特の質感や細部のリアルな表現が可能になったのです。

油彩は15世紀後半、イタリアに伝わります。イタリアでは、油彩による明暗の強い対比表現が大流行しました。油彩の技術は発展をつづけ、17世紀には固練り絵の具が登場。19世紀にはアメリカ人画家ゴッフ=ランドの発案でチューブの絵具が世に出て、近代の油彩絵画の傑作を数多く生み出しました。

油彩の画材

油彩の絵具は、顔料を植物性乾性油と練り合わせて作られています。色彩を接着させる展色材はメディウムと呼ばれ、画家によって好みがあり、さまざまな素材が使われます。絵具のほかには、ダンマルやコーパルといった天然樹脂類、蝋、金属セッケンなども使用され、つやを出したり絵具の粘りの調整に用いられています。

油彩用の絵具は、紙や布と直接接すると劣化しやすいため、にかわのペーストなどが施されています。吸油性を高めたキャンバスを使用することで、絵具の剥落を防いでいます。

油絵の革新性

ファン・アイク兄弟の油彩の革新性は、画面が非常になめらかで筆のタッチがほとんど残っていないという点にありました。微妙な色の変化もごく自然で、透明度の高い光学的な表現も施されています。

ファン・アイク兄弟のこの技法は、白亜で地塗りをしたあと構図を描き、乾性油で画布を非吸収性にて層を重ねていくことで可能になりました。

ファン・アイク兄弟の油彩技法がイタリアに伝わったあと、とくにその発展に寄与したのがヴェネツィア派のティツィアーノでした。ティツィアーノは基底となる木材の選択から、麻布の使用までよく吟味し、薄い絵具を塗り重ねたなめらかな画面を実現。厚塗りの画法も確立させました。明暗や陰影が美しいティツィアーノの油彩は、印象主義にも大きな影響を与えたといわれています。

17世紀にはルーベンス、ベラスケス、レンブラントらの巨匠によって、それぞれの作風に合わせた油彩技法が発展していきます。

19世紀後半の印象派では、最終的な効果を初期のタッチで仕上げるアッラ・プリーマの画法が多用され、油彩による大きな革新となりました。写実を追求してきた油彩の世界で、印象派は平面の重要性を主張し、新たな歴史を生み出したのです。

油彩画の構造

『プレートのレモン・かごのオレンジ・カップとバラ』 フランシスコ・デ・スルバラン 1633 画布、油彩

透明感を感じたり厚みを感じたりできる油彩画。その構造はどうなっているのでしょうか。

油彩画の仕組みを解説します。

支持体

油絵を描くための支持体は、ルネサンス時代には柾目板ににかわのペーストを塗ったものを用いていました。油彩画が普及しはじめた初期、支持体の選択は難しかったといわれています。また保存に耐える支持体となる木材は高価で、画家たちは大変な苦労をしたことが伝えられています。

現在の支持体は大半がキャンバスで、麻や化繊が用いられています。

地塗り層

油彩を制作する場合、キャンバスにいきなり描くのではなく「地塗り」という作業を行います。

地塗りの技法はファン・アイクも用いていて、当時は白亜を動物性の膠で溶いた塗料を使用していました。また17世紀のフランドルやスペインの画家は、白の地塗りを好んでいたこともわかっています。印象派の成立も、白色の下地によって可能になったといわれています。

現在の地塗りは下地用の素材があり、こうした画材を使った地塗りによって作品に重厚感が出たり、描きやすくなるなどのメリットがあります。

描画層

地塗り以外の絵画の層の部分を描画層と呼びます。油彩の描画層は水彩画と異なり、絵具が色彩の変化をしないよう色の層が形成されていくのが特徴です。

保護層

油彩の作品は、保存のために必ずニスを塗布する必要があります。排気や昆虫の排泄物、埃による汚れから保護するためです。新作の場合は、完成後1年をめどにニスを塗るのが通常です。

油彩用のニスは刷毛やスプレーを使い、可能なかぎり薄く均一に塗っていきます。経年によってニスが黄色くなった場合は、専門家に依頼してニスを塗り替えることになります。

油彩の特徴

『グランド・ジャット島の日曜日の午後』 ジョルジュ・スーラ 1884-86 画布、油彩

アートを鑑賞していてもあまり意識することがない油彩の特徴。

ここで油彩の特徴を把握して、より作品を楽しんでみましょう。

豊かな色彩表現

油彩の特徴の第一。

それは豊かな色彩表現にあります。油彩は多彩な仕上げ効果が可能な技法であるため、写実的な表現だけではなく、画家の繊細な精神面も表現できるという長所があります。ルネサンス時代に主流だったテンペラ画やフレスコ画を超える写実表現によって、油彩はヨーロッパ絵画を席巻していったのです。

揮発性精油などを活用することで、色の濃淡、層の熱さの調整も可能。画家たちの表現の自由を可能にした油彩。油彩の技法の発展とそれに伴う色彩表現の豊かさは、絵画史を語るうえで大きな成果をもたらしたといって過言ではありません。

 遅乾性を活かした柔軟な画法

油彩の特徴の第二は、遅乾性によって得られる絵画の柔軟性や透明性です。

油彩絵具に含まれる乾性油が空気中の酸素を吸収し、樹脂のような立体的な網構造を作って固まります。絵具が吸収した酸素分だけ体積が増えるため、顔料の隙間が埋められ、表面がつややかになります。

また遅乾性を利用して地塗りから下絵、色塗りなど、互いの色が混ざることのないレイヤリングができるのも油彩の特徴。何層もの絵具を重ねることで、深みや奥行きを表現できます。油絵具をそのまま用いて質感を活用したり、ナイフを用いて厚塗りするなど、テクスチャの変化も楽しめます。

こうした画法を用いることでさまざまな表現が可能になり、柔軟で透明性のある絵画も自在に描けるようになりました。

保存性が高い

油彩はまた、保存性の高さで知られています。

保護のためのニスを塗ることで画面を汚れから保護するだけではなく、温度や湿度に留意することでオリジナルの色彩を維持することができます。

世界中の油彩の傑作は、定期的に専門家による修復や清掃が行われます。適切な処置を施すことで、画家が描いた当時の色彩はそのまま保たれるのです。フレスコ画のような剥落も少なく、油彩の作品は耐久性が高いのが鑑賞者にはうれしいところ。

天才たちの画業を数世紀を経て鑑賞できるのも、油彩ならではの魅力です。

まとめ

茶色の赤と白の抽象画

西洋絵画に豊かな実りをもたらした油彩。西洋絵画の傑作の多くは油彩で描かれ、作成当時の色彩や構図を楽しむことができます。

油彩の技法は古代から存在していたといわれていますが、技術が確立し普及したのは15世紀以降のこと。ファン・アイクやイタリア・ルネサンスの画家たちによって油彩の作品が数多く描かれ、印象派をはじめとするさまざまなアートの潮流を生んだのです。写実から内面の表現まで、多彩な技法を用いた油彩の作品をぜひご自宅やオフィスでも楽しみたいですね。

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