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2024.07.02

バンクシーとは?正体不明の画家の作風や代表作について解説します!

バンクシーとは?正体不明の画家の作風や代表作について解説します!

バンクシーとは?

バンクシー(Banksy)は、イギリスを拠点に活動している正体を明かしていない謎のアーティストです。作品や行動がニュースで取り上げられることも多く、アートファンなら一度は耳にしたことがあるでしょう。

今回はバンクシーの作風や代表作についてアートリエ編集部が解説します。バンクシーに興味がある方や、もっと知りたいという方はぜひ最後までご覧ください。

バンクシーの正体は?

正体不明と言われているバンクシーですが、いったいどのような人物なのでしょうか。1990年ごろからイギリス西部の港町、ブリストルでグラフィティアートを始め、現在はロンドンを拠点に世界中で活動しています。過去の資料から1974年前後生まれの男性という以外は不明です。

バンクシーの正体については、ブリストル出身のミュージシャンのロバート・デル・ナジャ説や、ブリストルで活動しているイラストレーターのロビン・ガニンガム説。さらに、1人ではなく、複数人のグループ説など様々ありますが、いずれの説もバンクシーは認めていません。バンクシーの正体が不明であっても作品の価値や注目度には変わりはなく、むしろ謎めいていることが魅力になっています。

バンクシーの2大事件

バンクシーの作品を見る人

何かと世間を騒がせているバンクシーですが、ここでは特に話題となった2つの事件を取り上げます。

テート・ブリテンでの無断展示事件(2003年)

最初に紹介する事件は、2003年にイギリス・ロンドンにある国立美術館、テート・ブリテンで起こりました。バンクシーは自身の絵を無断でテート・ブリテン内に展示したのです。

この絵のタイトルは「犯罪監視社会の英国は我々の田舎を台無しにする」です。一見、緑あふれるイギリスの田舎ののどかな風景を描いています。しかし、絵の手前のほうには警察の立ち入り禁止のテープが貼られており、何か事件が起こったことを連想させます。この作品には、他の展示作品と同じようなキャプションもついていたそうです。

後に自身の著書で、バンクシーが無断で作品を展示する姿を、監視カメラが捉えた写真を掲載し、監視社会への警鐘を鳴らしたと言われています。この事件はイギリス中でニュースになりました。バンクシーはテート・ブリテン以外にも、ニューヨーク近代美術館やメトロポリタン美術館、ブルックリン美術館、ルーブル美術館など世界の名だたる美術館で無断展示を行っています。

オークション事件(2018年)

2つ目の事件は、2018年のサザビーズのオークションでの出来事です。バンクシーの「風船と少女(Balloon Girl)」が約1億5千万円で落札されましたが、その直後に、会場に警告音が鳴り響き、額縁に仕込まれたシュレッダーでこの絵が部分的に細かく裁断されてしまいました。日本でもニュースで取り上げられましたので、この事件で初めてバンクシーを知ったという方も多いでしょう。

作品を裁断したのはオークションビジネスへの批判ともいわれていますが、サザビーズ側は「史上初めてオークション中に生で製作された作品」と宣伝しました。ちなみにこの作品の落札者は、落札した金額通りのお金を支払ったそうです。

当時のバンクシーのインスタグラムには、額縁にシュレッダーを仕込む様子が写った映像が掲載されました(現在は削除済)。また、裁断された作品は「愛はごみ箱の中に(Love Is in the Bin)」に改題されています。

バンクシー作品の特徴

なぜバンクシーは注目されているのでしょうか。ここからはバンクシー作品の特徴を5つの視点から解説します。

ステンシルアート

バンクシー作品の特徴のひとつは、ステンシルアートを多用していることです。ステンシル(stenci)とは型紙のことで、あらかじめ描きたい形の型紙を作っておき、その上からスプレーなどの絵具を吹きかけることで簡単に絵を描くことができます。

人目につかずに素早く作品を残すことができているのは、ステンシルアートのおかげでもあるでしょう。また、同じ絵を何度でも描いたり、左右反転して描いたりすることも可能です。

シンプルでわかりやすいデザイン

バンクシーの作品が世間で話題になっている理由には、彼の絵がシンプルでわかりやすいデザインであることが挙げられます。

モノクロや色数の限られた色彩とシンプルな線や形で描かれた作品は、見る人が直感的にバンクシーの発するメッセージを理解しやすく、同時に多くの人々の印象に残りやすくなるからです。

公共空間での展示

グラフィティアーティストとして知られるバンクシーですが、このグラフィティとは日本語で「落書き」という意味です。街中の建物の壁や路上の公共物に描かれた作品は、無料で多くの人々が目にすることができます。バンクシー自身はグラフィティを「もっとも民主的なアート」とも発言しています。

また、バンクシーのグラフィティアートは、描かれている場所も重要です。作品の内容と描かれた場所の両方を合わせて彼のメッセージとなっていることも多いのです。そのため、作品だけを切り取ってオークションなどで販売することは、本来のメッセージを損なう可能性があります。また、バンクシーが正体を明かさないのは、公共物に絵を描くことは多くの国で犯罪になるからとも言われています。

鋭い社会批評

バンクシーの作品には、社会的・政治的なメッセージを含むものが多くあります。反戦争や反暴力、反消費社会、格差問題、環境問題など強いメッセージを伝える媒体となっているのです。時にはダークユーモアや風刺などを含んだ鋭い洞察力で、社会の矛盾を批判し、作品を見る私たちに問題を投げかけています。

一方、イギリスのサウサンプトン総合病院に寄贈された「Game Changer」は、風刺画でもあり、同時に医療従事者への感謝を表している作品でもあります。この作品はのちにオークションで約25億円で落札され、その収益金はイギリスの国民保険サービスなどに寄付されました。バンクシーは初期のころから寄付や作品の寄贈をしています。

様々なメディアの活用

グラフィティアートからスタートしたバンクシーですが、現在はキャンバス画やシルクスクリーン、彫刻、映画など様々なメディアで作品を製作しています。時にはおもちゃのお札作りや偽のCDパッケージを店頭に並べたこともありました。

また、「子どもにはふさわしくないファミリーテーマパーク」と宣伝された「Dismaland」のプロデュース、客室の窓からパレスチナの分離壁が見える、世界一眺めの悪いホテル「The Walled Off Hotel」を開業するなど活動の場を広げています。

さらに、公式のWebサイトやインスタグラムでは自身の作品の写真を掲載しています。

バンクシーの代表作品

ここからはバンクシーの代表的な作品を3点紹介します。

Laugh now, but one day we’ll be in charge

Laugh now, but one day we’ll be in charge

出典:Moonstar Fine Arts Advisors

2002年にイギリス・ブライトンのナイトクラブ「Ocean Rooms」の依頼を受けて製作されました。10匹のサル(もしくはチンパンジー)が横に並んだ幅6mほどの作品です。そのうちの6匹がタイトルのロゴが入った看板を首から下げています。

「Laugh now, but one day we’ll be in charge」とは、「今は笑えばいい、でもいつか私たちが支配する日が来る」というような意味です。サルは社会的弱者を象徴していて、現在は存在を軽視されても、いずれ立場を逆転させようとする反骨精神を表しています。また、4匹のサルは何も書かれていない看板を下げていることから、見る人が自分で考えることを促しているとも言われています。サルはバンクシーの作品にしばしば現れるキャラクターです。

花束を投げる男(Flower Thrower)

花束を投げる男(Flower Thrower)

出典:Wikimedia commons

バンクシーの代表作のひとつで「愛は空中に(Love is in the Air)」とも呼ばれており、目にしたことがある方も多いでしょう。2003年にパレスチナのヨルダン川西岸にあるガソリンスタンドの壁に描かれました。

キャップを反対向きにかぶり、布で顔を隠した若い男性が花束を投げる姿を描いています。全体はモノクロですが、花だけがカラフルなのが特徴的です。暴力的な手りゅう弾や火炎瓶ではなく、花束を投げようとしている姿は、パレスチナ問題の平和的な解決や反戦のメッセージが込められていると考えられています。

この「花束を投げる男」は様々な媒体で発表されています。シルクスクリーン印刷でのエディション作品としての販売や、バンクシー公式作品集「Wall annd Piece」の表紙にもなりました。また、2006年に製作された作品は、2021年のサザビーズのオークションで、約14億円で落札されています。

赤い風船と少女(Balloon Girl)

赤い風船と少女(Balloon Girl)

出典:Wikimedia commons

少女がハート型の赤い風船に手を伸ばしている絵は、バンクシーの代名詞とも言える作品です。2017年の「イギリス人が選ぶ、イギリス人アーティスト」の第1位にも選ばれました。バンクシーは何度もこの絵を描いていますので、主な作品を2点紹介します。

2002年にロンドンのテムズ川沿いの壁に描かれていた「赤い風船と少女」が、最初の作品とされています。このころのバンクシーは世間的には無名であったこともあり、現在は残っていません。2018年の「オークション事件」の際に、シュレッダーで裁断されたのも「赤い風船と少女」です。この作品の約半分が裁断されたことで、アートとしての価値が高まったと言われ、実際に2021年の再オークションでは約29億円で落札されました。

風船は愛の象徴と言われており、少女は愛を得ようとしているのか、うっかり愛を手から放してしまったのか見る人によっても意見は分かれそうです。ちなみに風船の色は、ゴールドやピンクのバージョンもあります。

バンクシー作品は日本で見ることができる?

昼間茶色のコンクリートの建物の近くの歩道を歩く人々

日本国内にも「バンクシーの作品かもしれない」と話題となった絵があります。気になる方は訪れてはいかがでしょうか。

ラットのグラフィティ(東京都・港区)

東京都港区の日の出駅近くの防潮扉で見つかった作品です。傘を持ったネズミが旅行カバンと一緒に描かれています。2019年1月17日に小池都知事がこの絵の存在をSNSに投稿したことで話題となりました。ネズミはバンクシー作品に頻繁に登場するキャラクターで、社会の嫌われ者の象徴であり、バンクシー自身でもあるとされています。

東京都はこの作品が本物かどうかバンクシー側へ問い合わせをしましたが、現在まで返事はないそうです。ただし、バンクシーの公式サイトでこの作品とそっくりな写真が公開されていることから、本物だろうと言われています。現在は地域資源として日の出ふ頭2号船客待合所で公開されています。

その他の話題になった作品

上記以外にも、日本国内には「バンクシーの作品かも?」と話題になった作品がいくつかあります。

2019年2月に千葉県印西市の双子公園のトイレの壁に銃を持った猿人の絵が発見され、注目を集めましたが、現在は消去されています。同じく2019年に茨城県高萩市の防波堤で「赤い風船と少女」の絵が見つかりました。この絵が描かれた後にも防波堤にはバンクシー風の絵が増え続けたため、落書き禁止の看板が設置されました。

2つの絵以外にも日本各地でバンクシー風の絵が発見されています。ステンシルアートであるがために模倣されやすい一面もあるのでしょう。

まとめ:バンクシーは最も注目されているアーティストのひとり

これまでバンクシーの作風や代表作についてお伝えしてきました。バンクシーと同じ時代に生きる私たちは、彼の活動をリアルタイムに知ることができます。謎に包まれた彼の活動を、今後も注目していきましょう。

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また、実際に絵を購入してみたいという方は、活躍中のアーティストの作品をアートリエで購入、またはレンタルすることもできます。誰でも気軽にアートのある生活を体験することができるので、ぜひお気に入りの作品を探してみてください。

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