アートリエ編集部が中世から20世紀までの有名な女性アーティストについて詳しく解説します。
男性社会は画家の世界でも同様で、過去に女性が芸術家として話題になることはほとんどありませんでした。しかし、女性アーティストがいたことは知られており、不当な扱いを受けながらも数々の作品も残されています。
そんな女性アーティストですが、「どのような女性画家がいたの?」と気になる方もいるでしょう。そこでこの記事では、中世から20世紀までの有名な女性画家と代表作を紹介します。
この記事を読めば、海外の女性アーティストの歴史や代表作が理解できるので、絵画に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
中世の女性アーティストの特徴

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中世の女性アーティストの特徴は「匿名性」です。中世ヨーロッパにおいて、女性が芸術に携わる機会は限られていました。
女性の個人の名前が作品に記録されることはまれで、多くは「修道院の姉妹」や「某貴族の娘」といった形で残されています。多くの女性は修道院の宗教的な環境で活動し、写本装飾や宗教画の制作に従事するケースがほとんどだったようです。
宗教的な題材が中心でしたが、そのなかにも女性ならではの繊細な感性と表現力が込められています。
ルネサンスの有名な女性アーティストの特徴

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ルネサンス期になると、女性アーティストの地位は徐々に向上し始めました。この時代の特徴として、貴族や裕福な商人の娘たちが芸術教育を受ける機会が増えたことが挙げられます。また、多くの女性アーティストは父親や兄弟が画家のケースが多く、家族の工房で技術を習得しました。
ルネサンス期の女性アーティストは、主に肖像画や宗教画を手がけています。当時の社会的制約により、女性が裸体モデルを使用することは困難でした。しかし、彼女たちは優れた観察力と技術で、卓越した表現を見せます。
この時代から女性アーティストが自画像を描くことも増え、自己表現の場を広げていったようです。
ルネサンス期の絵画に関しては、以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
女性アーティストと代表作

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ルネサンス期に活躍したとされる女性アーティストは、以下の通りです。
- カタリナ・ファン・ヘメッセン
- ソフォニスバ・アングイッソラ
- ラヴィニア・フォンターナ
それぞれの画家の代表作も併せて、見ていきましょう。
カタリナ・ファン・ヘメッセン(Catharina van Hemessen)1527年ごろ-1565年以降
カタリナ・ファン・ヘメッセンは、フランドル地方(現在の国はベルギー)で活動した女性画家です。女性画家で初めて自画像を描いた人物として知られています。父親のヤン・サンダース・ファン・ヘメッセンも画家で、カタリナは父の工房で技術を習得しました。
代表作の「聖ヴェロニカに出会うキリスト」では、宗教的な場面を情感豊かに描いています。「婦人像」は、上流階級の女性の肖像を細密に描き、衣装の質感や表情の微妙な変化まで丁寧に表現した作品です。
「聖ヴェロニカに出会うキリスト」

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「婦人像」

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ソフォニスバ・アングイッソラ(Sofonisba Anguissola)1532年ごろ-1625年
ソフォニスバ・アングイッソラはイタリアの貴族の娘として生まれた女性画家で、優れた芸術教育を受けて育ちました。ソフォニスバの才能はルネサンスの三大巨匠の1人、ミケランジェロからも認められ、指導を受けたといわれています。
代表作「チェスをするルチア、ミネルヴァ、エウロパ」は、ソフォニスバの妹たちを描いた作品です。「スペイン王妃エリザベート・ド・ヴァロワの肖像」では、宮廷画家としての技量を発揮し、王妃の威厳と美しさを見事に表現しています。
「チェスをするルチア、ミネルヴァ、エウロパ」

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「スペイン王妃エリザベート・ド・ヴァロワの肖像」

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ソフォニスバが指導を受けたとされるミケランジェロを詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
ラヴィニア・フォンターナ(Lavinia Fontana)1552-1614
ラヴィニア・フォンターナは、ボローニャ出身の画家で、職業画家として生計を立てた女性として知られています。父親のプロスペロー・フォンターナも画家で、師匠でもありました。
ラヴィニアは生涯で100点以上の作品を制作した、異例の多作な女性アーティストでした。
代表作「アントニエッタ・ゴンザレスの肖像」は、多毛症を患った少女を描いた作品で、医学的な関心と芸術的表現が融合しています。「カップルの肖像」では、夫婦の愛情深い関係を温かみのある筆致で描いています。
「アントニエッタ・ゴンザレスの肖像」

「カップルの肖像」

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バロックの女性アーティストの特徴

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バロック時代の作品の特徴は、劇的な明暗対比や静物画が重視されている点です。明暗対比においては、カラヴァッジョの影響により確立されました。宗教画だけでなく、静物画といった新しいジャンルに挑戦する女性アーティストもいました。
静物画となる素材は女性でも入手しやすいため、題材として人気があったようです。また、ルネサンス期と同様に、家族に画家がいることで影響を受けた女性も多くみられます。
バロック時代の絵画は、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
バロックの有名な女性アーティスト

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ここで紹介するバロック時代に活躍した女性アーティストは、以下の3名です。
- アルテミジア・ジェンティレスキ
- ルイーズ・ モワヨン
- マリア・ファン・オーステルウェイク
1人ずつ詳しくみていきましょう。
アルテミジア・ジェンティレスキ(Artemisia Lomi Gentileschi)1593-1652
アルテミジア・ジェンティレスキは、イタリアの女性画家です。父親のオラツィオ・ジェンティレスキも著名な画家で、父のもとでカラヴァッジョ派の技法を習得しました。
アルテミジアの作品は強烈な明暗の対比と劇的な構図で知られ、特に旧約聖書の女性たちを力強く描いています。
代表作の「ユディトとその侍女」は、旧約聖書のユディトがホロフェルネスを殺害して逃亡する場面を描いた作品です。この作品には、女性の強さと決意が込められており、当時の男性中心の美術界に対する挑戦的な姿勢が表れています。
「眠れるヴィーナス(ヴィーナスとキューピッド)」では、古典的な美の理想を彼女らしい感性で表現し、優雅で官能的な雰囲気を醸し出しています。
「ユディトとその侍女」

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「眠れるヴィーナス(ヴィーナスとキューピッド)」

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アルテミジアが作品の参考にしたカラヴァッジョは、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
ルイーズ・モワヨン(Louise Moillon)1610-1696
ルイーズ・モワヨンは、フランスの女性アーティストです。静物画のジャンルが確立されつつあった17世紀前半において、果物や花を描いた作品で高い評価を得ました。
30代で結婚した後は家事や育児のため、作品の制作があまりできなかったようです。
代表作「果物売り」では、市場の一角を切り取った日常的な場面を、細密な描写で表現しています。果物の質感や色彩の微妙な変化まで丁寧に描き出し、静物画の新たな可能性を示しました。
「桜桃、苺、スグリ」では、季節の果物を美しく配置し、自然の恵みの豊かさを表現しています。
「果物売り」

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「桜桃、苺、スグリ」

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マリア・ファン・オーステルウェイク(Maria van Oosterwijk)1630-1693
マリア・ファン・オーステルウェイクは静物画が得意なオランダの画家です。「ヴァニタス」と呼ばれる花をメインにした静物画を多く制作しています。
マリアの作品は王族や貴族から人気を集めていましたが、女性であることから画家組合には参加できませんでした。
代表作「ヴァニタス」は、頭蓋骨・時計・枯れた花などのモチーフを巧みに配置し、人生の儚さと時の流れを表現した作品です。「花」では、さまざまな種類の花を精密に描き出し、自然の美しさと同時にその短命さを暗示しています。
「ヴァニタス」

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「花」

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18世紀の女性アーティストの特徴

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18世紀には美術アカデミーが設立されましたが、女性の受け入れは画家の娘や妻のみで、後半になると一切受け入れられなくなりました。アカデミーに参加できたとしても、女性は限られた訓練しか受けられなかったようです。
アカデミーで最上位とされた歴史画を描いた女性アーティストも少数ながら存在しましたが、多くは静物画や肖像画などに活動の場を求めていました。
しかし、18世紀後半になるとアカデミーに所属していない画家でも、サロンに参加できるようになりました。
サロンを活用することで女性も作品を出展できるようになり、著名画家の弟子として受け入れられるようになります。
18世紀の有名な女性アーティスト

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18世紀に活躍した有名な女性アーティストは、以下の2名です。
- アンゲリカ・カウフマン
- エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン
それぞれ詳しくみていきましょう。
アンゲリカ・カウフマン(Maria Anna Angelika/Angelica Katharina Kauffmann)1741-1807
アンゲリカ・カウフマンは、スイス出身で新古典主義の画家です。幼少期から画家の父に絵を習い、ヨーロッパ各地で活動しました。アンゲリカは複数の言語を習得しており、豊かな才能や魅力により旅先で人気を集め、王族や貴族からも歓待されたといわれています。
また、ロイヤルアカデミーの創立メンバーでもあり、正式な美術院のメンバーにもなりました。
代表作「デヴィッド・ギャリックの肖像」では、当時の著名な俳優を描いています。「文学と絵画」では、擬人化された文学と絵画が調和する様子を描き、芸術の理想を表現しています。
「デヴィッド・ギャリックの肖像」

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「文学と絵画」

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新古典主義に関して詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(Marie Élisabeth-Louise Vigée Le Brun)1755-1842
エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランは、フランスの女性画家です。フランス王妃、マリー・アントワネットのお抱え画家として知られています。さらに、ヨーロッパ各国の王室や貴族の肖像画も多く手がけました。
フランス革命の際は亡命し、精力的に制作活動を続けたことから、ローマやロシアでも人気を集めています。
代表作「フランス王妃マリー・アントワネット」は、王妃の優雅さと気品を見事に表現しています。「ポーランド王、スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキ」は、王の威厳と知性が描かれた作品です。
「フランス王妃マリー・アントワネット」

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「ポーランド王、スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキ」

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19世紀の女性アーティストの特徴

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19世紀になると、女性もアカデミーや芸術を学ぶ教育に参加できるようになりました。ただし、学べるモチーフが限られていたり、男性と同様の教育を受けられなかったりしたようです。
19世紀末ごろから、ようやく女性もヌードモデルを描けるようになったといわれています。
また、19世紀には印象派の登場により、従来の西洋美術の概念も大きく変化を遂げました。
西洋美術史に関しては、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
19世紀の有名な女性アーティスト

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ここで紹介する19世紀の有名な女性アーティストは、以下の3名です。
- ローザ・ボヌール
- エリザベス・ジェーン・ガードナー
- メアリー・カサット
それぞれ詳しくみていきましょう。
ローザ・ボヌール(Rosa Bonheur)1822-1899
ローザ・ボヌールは、動物画で知られるフランスの女性画家で、国際的な名声も得ています。1855年に発表した「馬の市」で名声を得て、1865年にはフランスの最高勲章、レジオンドヌール勲章を受賞しました。
絵画は画家である父から学び、主に動物のデッサンを描いていたとされています。また、パリの郊外にある城をアトリエにし、多くの動物を飼育していました。
代表作「馬の市」は、パリの馬市の様子を大画面に描いた作品です。馬の力強い動きや筋肉の表現は見事で、当時の美術界で高い評価を受けました。「森の王」では、森の中の雄大な鹿を描き、自然の威厳と美しさを表現しています。
「馬の市」

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「森の王」

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エリザベス・ジェーン・ガードナー(Elizabeth Jane Gardner)1837-1922
エリザベス・ジェーン・ガードナーは、アメリカで生まれ、フランスで活動した女性画家です。エリザベスはパリの美術学校で芸術を学び、技法を習得しました。1872年にはサロンで金賞を受賞しています。
後に師であり画家のウィリアム・アドルフ・ブグローと結婚し、夫婦で芸術活動を続けました。エリザベスは特に宗教画や神話画を得意とし、完璧な技法で理想化された人物像を描きました。
「軽率な少女(L’imprudente)」

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「羊飼いのダビデの勝利(The Shepherd David)」

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メアリー・カサット(Mary Stevenson Cassatt)1844-1926
メアリー・カサットは、アメリカ出身のフランスで活動した印象派の画家です。メアリーは印象派のグループに参加した数少ない女性アーティストで、母子や女性の生き方をテーマにした作品で知られています。
絵画においてはほぼ独学でしたが、パリに渡るとカミーユ・ピサロの元で絵を学びます。印象派のエドガー・ドガとも、親交があったようです。
代表作「お茶」では、日常的な場面を印象派の技法で描き、光と色彩の美しさを表現しています。「浜辺の子供」は、子どもの無邪気な表情と自然な動きを捉えた、母性愛をテーマにした作品です。
「お茶」

「浜辺の子供」

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メアリーと親交があったエドガー・ドガについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
20世紀以降の女性アーティストの特徴

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20世紀に入ると、女性アーティストの活動は多様化します。この時代は、従来の美術の枠組みを超えた前衛的な表現が登場しました。女性アーティストたちも、積極的に新しい芸術運動に参加したようです。
また、女性の社会的地位の向上とともに、これまで不遇だった芸術における女性の立場も再考されるようになりました。20世紀は、フェミニズムの影響を受けながら、女性の視点から社会や政治的な問題を作品に反映させています。
抽象表現主義やシュルレアリスムなどの新しい芸術様式においても、独自の表現を追求し、現代アートの発展に大きく貢献しています。
20世紀以降の有名な女性アーティスト

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ここで紹介する20世紀以降に活躍した有名な女性アーティストは、以下の3名です。
- マーガレット・マクドナルド・マッキントッシュ
- タマラ・ド・レンピッカ
- フリーダ・カーロ
1人ずつ代表作と併せて紹介します。
マーガレット・マクドナルド・マッキントッシュ(Margaret MacDonald Mackintosh)1864-1933
マーガレット・マクドナルド・マッキントッシュは、スコットランドの画家で、アール・ヌーヴォー運動の重要な一員です。建築家のチャールズ・レニー・マッキントッシュの妻でもあり、夫婦で協力して多くの作品を制作しました。
マーガレットは、装飾美術の分野で活動しています。
代表作「眠れる森の姫」では、アール・ヌーヴォー特有の曲線美と象徴的な表現を用いて、幻想的な世界が描かれました。「メイクィーン」は、花のモチーフが巧みに配置されています。
「眠れる森の姫」

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「メイクィーン」

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タマラ・ド・レンピッカ(Tamara de Lempicka)1898-1980
タマラ・ド・レンピッカは、ポーランド出身の女性画家です。アール・デコの代表的な画家としてパリで活動し、洗練された都会的な美意識を作品に反映させました。上流階級の女性や現代的な生活様式を描いた作品で知られています。
代表作「緑色のブガッティに乗る自画像」は、現代女性の自立と自信を象徴した作品です。「タデウシュ・デ・レンピッキ氏の肖像」は、夫を描いた作品で、アール・デコの洗練された様式美を見事に表現しています。
「緑色のブガッティに乗る自画像」

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「タデウシュ・デ・レンピッキ氏の肖像」

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アール・デコに関して詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
フリーダ・カーロ(Magdalena Carmen Frida Kahlo y Calderón)1907-1954
フリーダ・カーロは、メキシコの女性画家です。幼少期の病気と青年期の事故により身体的な困難を抱えながらも、強烈な個性と表現力で独自の芸術世界を築き上げました。
フリーダの作品は、自己の内面と民族的アイデンティティを探求したものが多く、現代でも影響を与え続けています。
代表作「二人のフリーダ」は、分裂した自分の感情や複雑なアイデンティティを表現した作品です。また、「フリーダとディエゴ・リベラ」では夫である画家ディエゴ・リベラとの関係を描き、愛と苦悩の複雑な感情を表現しています。
「二人のフリーダ」
出典:Wikiart
「フリーダとディエゴ・リベラ」
出典:Wikiart
この記事では海外の女性アーティストをまとめていますが、以下の記事では日本人の女性アーティストを紹介しています。詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ

出典:Wikipedia
この記事では、海外の女性アーティストを時代ごとに紹介しました。
中世から20世紀にかけて、女性アーティストは社会的制約や困難を乗り越えながら、優れた芸術作品を生み出しました。彼女たちの作品は、美術史上の価値だけでなく、女性の視点から見た社会や人間の姿を現代に伝える貴重な記録にもなっています。
この記事を参考に、海外の女性アーティストの絵画を楽しんでみてください。
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