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2025.05.20

「ダビデ像」の創作者ミケランジェロってどんな人?幼少期の出来事やダヴィンチとの関係性、代表作を解説

「ダビデ像」の創作者ミケランジェロってどんな人?幼少期の出来事やダヴィンチとの関係性、代表作を解説

アートリエ編集部が、西洋美術史の巨匠ミケランジェロについて詳しく解説します。

ミケランジェロは「ダビデ像」や「システィーナ礼拝堂の天井画」などの傑作を残した、ルネサンスを代表する芸術家です。彼の作品は500年以上経った今もなお、人々を魅了し続けています。

「ミケランジェロってどのような人物なの?」「代表作にはどのような作品があるの?」と気になる方もいるでしょう。

そこでこの記事では ミケランジェロの生涯や幼少期の出来事、ダ・ヴィンチとの関係、代表作を詳しく解説します。この記事を読めば、ミケランジェロの魅力が理解できるので、西洋美術に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

ミケランジェロ・ブオナローティとは

ダニエレ・ダ・ヴォルテッラが描いたミケランジェロの肖像画

出典:Wikipedia

ミケランジェロの名前は耳にしたことがあるものの、どのような画家か知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは、ミケランジェロに関して深堀りしていきましょう。

ルネサンス三大巨匠の1人

ミケランジェロ・ブオナローティは、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロと並ぶ「ルネサンス三大巨匠」の1人です。彼らの作品は今でも世界中の人々に愛されており、ルネサンス美術の魅力を伝え続けています。

ルネサンスの中でも三大巨匠が存在した盛期ルネサンスは、芸術の最盛期です。この時期には、フィレンツェやローマを中心に、教皇ユリウス2世の支援を受けた芸術家たちが活躍しました。

ミケランジェロは、その中でも筆頭の芸術家です。ミケランジェロの代表作である「ダビデ像」や「最後の審判」などは、西洋美術の歴史において極めて重要な位置を占めています。

絵画と彫刻を手がける総合芸術家

ミケランジェロは名前を知らない人がいないといわれているほど有名な彫刻家ですが、絵画や建築でも優れた才能を発揮しています。代表的な絵画は「システィーナ礼拝堂の天井画」や「アダムの創造」などで、壮大で躍動感あふれる作品を手がけました。

さらに、晩年には建築分野でも重要な功績を残しています。ミケランジェロは単なる彫刻家ではなく、絵画・建築も手がけた総合芸術家として、現代でも高く評価され続けています。

ミケランジェロの生涯

出典:Wikipedia

ミケランジェロの作品をより深く知るために、幼少期から晩年までの生涯を見ていきましょう。

幼少期から石を触っていた

ミケランジェロは、1475年にイタリア・トスカーナ地方のカプレーゼで生まれましたが、生後すぐにフィレンツェへ引越したようです。母親はミケランジェロが6歳のときに亡くなっており、乳母に育てられたといわれています。

ミケランジェロの父は行政官でしたが、フィレンツェに移った後は大理石の採石場を経営していました。そこで、ミケランジェロは幼少期から石を削ることに親しんでいたといわれています。

ミケランジェロにとって石を扱うことは遊びのようなもので、幼いころからノミとハンマーを手に取り、楽しんでいたといわれています。

権力者メディチ家の支援で彫刻を勉強

ミケランジェロが本格的に芸術の道を歩み始めたのは、13歳のときでした。彼はルネサンス期の著名な画家であるドメニコ・ギルランダイオの工房に弟子入りし、芸術の基礎を学びます。

その才能に目を付けたのが、当時のフィレンツェの支配者であり、芸術のパトロンとして知られるロレンツォ・デ・メディチです。ロレンツォはミケランジェロを宮殿に住まわせ、最高の教育と創作環境を与えました。

メディチ家の支援を受けたことで、ミケランジェロは彫刻家として大きく成長します。ミケランジェロの才能の土台は、この時期に作られたのでしょう。

教皇ユリウス2世に振り回されたといわれる半生

ミケランジェロの人生に大きな影響を与えた人物の1人が、ローマ教皇ユリウス2世です。1505年、ミケランジェロは教皇に招かれたためローマへ向かい、建造物を制作することになります。

しかし、この仕事は順調に進みませんでした。教皇はたびたび計画を変更し、さらには資金の支払いを滞らせることもあったようです。ミケランジェロは本職の彫刻ではなく、絵画の仕事を押し付けられ、不満を募らせていたといわれてます。

ミケランジェロは耐えきれず、教皇の元を離れフィレンツェへ戻りました。ユリウス2世との関係は困難を伴いましたが、ミケランジェロのさまざまな作品が創作された時期でもあります。

40代以降は建築も依頼される

ミケランジェロは彫刻家として名を馳せましたが、40代以降は建築の分野にも活躍の場を広げました。1520年、フィレンツェのサン・ロレンツォ聖堂のファサード(外観部分)と装飾を任されます。

しかし、このプロジェクトは順調に進みませんでした。設計やスケジュールの策定に3年を費やし、自らカッラーラの採石場へ足を運ぶなど尽力したにもかかわらず、1520年3月に契約は取り消され、同じ月に新たな礼拝堂の建設計画が始まりました。

この時期は、ミケランジェロが残した作品が少ないのが特徴です。彼は新聖具室(Sagrestia Nuova)の設計と彫刻制作を手がけ、『夜』『昼』『夕暮』『曙』などの彫刻を制作しました。しかし、1527年のローマ略奪によるフィレンツェの政変により工事は中断。その後、1531年に工事が再開されましたが、1534年にミケランジェロがフィレンツェを離れたため、彼の仕事は未完のままとなりました。

現在に至るまで、サン・ロレンツォ聖堂のファサードは未完成のままとなっています。

ミケランジェロの死因

ミケランジェロは80歳を越えても石を彫り続け、1564年2月18日にローマで88年の生涯を閉じました。死因は明確に記されていませんが、老衰だといわれています。当時の平均寿命は40歳前後だったといわれているため、かなりの長寿といえるでしょう。

遺体はミケランジェロの遺言どおり、ローマからフィレンツェへ運ばれ、サンタ・クローチェ聖堂に埋葬されました。ミケランジェロの死は教皇をはじめ、多くの人々に衝撃を与えたといわれています。

ミケランジェロの名言10選

出典:Wikipedia

生前のミケランジェロは数々の名言を残したとされ、それらは今もなお現代社会に影響を与えています。ミケランジェロの名言をいくつか紹介します。

「時間の浪費ほど大きな害はない」
「どれだけの労力を注ぎ込んだかを知れば、天才なんて呼べないはずだ」
「石の中に天使を見た。そして、彫り続けて天使を自由にした。」
「どんな石の塊も内部に彫像を秘めている。それを発見するのが彫刻家の仕事だ。」
「主よ、私がいつも、成し得る以上のことを望むことを許したまえ。」
「優れた芸術を創造し、優れた仕事をするためには、一生懸命に倦まず弛まず働くことだ。」
「真の芸術作品は、神が与える完成の影に他ならない。」
「余分な大理石がそぎ落とされるにつれて、彫像は成長する。」
「羅針盤は手の中にではなく、目の中に持つことが必要だ。何故なら、手が実行し、目が判断するからだ。」
「天才とは永遠の忍耐である。」

ミケランジェロ自身が周囲から天才といわれていましたが、努力することで生まれる可能性を示す言葉が多く残っています。

ミケランジェロとダヴィンチの関係

出典:Wikipedia

ミケランジェロとレオナルド・ダ・ヴィンチは、ルネサンス期を代表する芸術家でありながら、互いをライバル視していました。それぞれの特徴も異なっており、年齢はダ・ヴィンチが23歳年上で物静かなタイプ、ミケランジェロは情熱的なタイプだったようです。

作品においてはダ・ヴィンチが見たままを描く現実主義なのに対して、ミケランジェロは筋肉質で理想形な作品が多くみられます。

一方で、三大巨匠の1人であるラファエロはミケランジェロより10歳ほど年下で、良好な関係だったといわれています。ラファエロはミケランジェロとダ・ヴィンチから多大な影響を受けており、2人を尊敬していたようです。

レオナルド・ダ・ヴィンチについては以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

ミケランジェロの技法

出典:Wikipedia

ミケランジェロの作品には、独自の人体表現がみられます。「セルペンティナータ」と呼ばれる技法で、人物の体をねじらせて描くことでダイナミックな動きを生み出しました。

これは単なる写実ではなく、人工的に理想化された美を追求するものであり、後のマニエリスムの特徴にもつながっています。

また、ミケランジェロの絵画には「カンジャンテ」の陰影技法も用いられています。「カンジャンテ」は、ハイライトや影に通常とは異なる色を用いることで立体感を強調する手法です。

ミケランジェロの代表作

ミネルヴァのキリスト

出典:Wikipedia

ここからは、ミケランジェロの代表作を5作品紹介します。

ピエタ

出典:Wikipedia

ミケランジェロの代表作「ピエタ」は、聖母マリアが亡くなったキリストを抱く姿を描いた彫刻です。サン・ピエトロ大聖堂にあるピエタ像は、ミケランジェロが24歳の時に制作し、わずか2年で完成しました。

大理石を使用し、聖母とキリストの姿を極めてリアルに表現しています。特徴的なのは、聖母の安らぎの表現です。「ピエタ」はミケランジェロの初期の作品で、才能を世に知らしめるきっかけとなりました。

ダビデ像

ダビデ像

出典:Wikipedia

ミケランジェロの「ダビデ像」は、フィレンツェのアカデミア美術館に展示されている彫刻の代表作です。高さ5.17メートルの巨大なこの彫刻は、旧約聖書のダビデを描いています。

制作は1501年から1504年にかけて行われ、当初はフィレンツェ大聖堂に設置される予定でした。ダビデの表情とポーズは、ペリシテ軍の巨人ゴリアテと戦う直前の緊張感を表現しています。

右手に握られた石と血管の表現は、ミケランジェロの彫刻技術の高さを物語っています。

聖家族

聖家族

出典:Wikipedia

ミケランジェロの「聖家族」は、依頼主アニョロ・ドーニの名に由来し、フィレンツェで流行した円形画形式「トンド」に属します。アニョロ・ドーニは、ミケランジェロの友人であり商人で、結婚記念としてこの絵を依頼しました。

「聖家族」は、母マリアが養父ヨセフから幼子イエスを受け取る場面を描いています。

肉体の表現には、ミケランジェロの彫刻家としてのこだわりが活かされています。

システィーナ礼拝堂の天井画

システィーナ礼拝堂の天井画

出典:WIKIMEDIACOMMONS

ミケランジェロが手がけたシスティーナ礼拝堂の天井画は、1508年に教皇ユリウス2世からの依頼で始まりました。当初、彫刻家であるミケランジェロはこの依頼に乗り気ではありませんでしたが、教皇の強い命令に従い制作を開始します。

制作には多くの困難が伴い、足場の問題や中断もありましたが、1512年には完成を迎えました。壮大なフレスコ画は、創世記に基づいた9つの物語を約300の人物で描き、天地創造からノアの大洪水に至るまでを表現しています。

最後の審判

最後の審判

出典:Wikipedia

システィーナ礼拝堂の祭壇側に描かれた「最後の審判」は、ミケランジェロが手がけた圧倒的な作品で、バチカン美術館の最大の見どころでもあります。

この絵は、新約聖書やダンテの「神曲」を基にしており、再臨したキリストが人々を天国と地獄に分ける場面が描かれました。大きさは縦1370cm、横1220cmで、約400名の人物が登場しています。

中心には光を背負ったイエス・キリストが描かれ、彼の左右には聖母マリアや聖人たちが位置しているのが特徴です。

ミケランジェロの作品が見られる場所

出典:Wikipedia

ミケランジェロの作品がみられる場所を5つ紹介します。ミケランジェロの作品を見たい方は、ぜひ訪れてみてください。

アカデミア美術館

アカデミア美術館

出典:アカデミア美術館公式サイト

フィレンツェのアカデミア美術館では、ミケランジェロの代表作「ダビデ像」がみられます。この彫刻は美術館の北端にある「ダヴィデのトリブーナ」に展示されており、ダビデ像専用のスペースとして設けられています。

ダビデ像はもともとヴェッキオ宮殿前に設置されていました。しかし、1873年にミケランジェロの生誕400周年を記念してアカデミア美術館に移されています。

美術館内には、ダビデ像をはじめ多くの彫刻作品が展示され、世界中から訪れる観光客に感動を与え続けています。

開館時間8:15~18:50
観覧料一般:16ユーロ
18~25歳:2ユーロ
休館日1月1日、12月25日、毎週月曜日
アクセスフィレンツェ大学駅から徒歩2分
HPhttps://www.galleriaaccademiafirenze.it/

※営業時間や入館料、休館日などの情報は変更になる場合があります。最新情報については公式ウェブサイトにてご確認ください。

バチカン美術館

バチカン美術館

出典:バチカン美術館

バチカン美術館は、世界で最も小さな国であるバチカン市国に位置し、ヴァチカン宮殿の中にあります。ミケランジェロの「アダムの創造」や「最後の審判」など、数々の名作が展示されている美術館です。

美術館は、ユリウス2世がローマ遺跡「ラオコーン」の発見をきっかけに古代彫刻や美術作品を収集したことから始まりました。キリスト教の作品をはじめ、エジプトや古代ギリシャなど多岐にわたる名作が一堂に会する場所で、世界中から観光客が訪れます。

開館時間月~土、8:00~20:00
毎月最終日曜日、9:00~14:00
観覧料一般:20ユーロ
6~18歳:8ユーロ
6歳未満:無料
休館日日曜日
アクセスOttavianoから徒歩8分
HPhttps://www.museivaticani.va/content/museivaticani/en.html

※営業時間や入館料、休館日などの情報は変更になる場合があります。最新情報については公式ウェブサイトにてご確認ください。

カサ・ブオナローティ

出典:カサ・ブオナローティ

カサ・ブオナローティは、ミケランジェロが購入し甥に遺贈した邸宅を改装して作られた美術館です。ここでは、ミケランジェロの若き日の作品が展示されており、「階段の聖母」と「ケンタウルスの闘い」が見どころです。

「階段の聖母」は16歳の時の作品で、力強さと立体感が見事に表現されており、ミケランジェロの才能の早熟さを感じさせます。美術館は規模が小さいものの、ミケランジェロ専門の貴重な施設で、初期の浮き彫り作品が堪能できます。

開館時間10:00~16:30
観覧料8ユーロ
休館日火曜日、1月1日、イースターサンデー、8月15日、12月25日
アクセスPepiから徒歩2分
HPhttps://www.casabuonarroti.it/

※営業時間や入館料、休館日などの情報は変更になる場合があります。最新情報については公式ウェブサイトにてご確認ください。

ルーブル美術館

出典:ルーブル美術館公式

パリのルーブル美術館は、世界的な名作が集まる美術館で、ミケランジェロの作品「奴隷」シリーズもその1つです。これらは、ローマ教皇ユリウス2世の霊廟に飾るために製作されました。

1513年から1516年にかけて制作された「抵抗する奴隷」と「瀕死の奴隷」は、霊廟に配置予定だった6体のうちの2体です。残りの4体はフィレンツェのアカデミア美術館に所蔵されています。

ルーブル美術館は、膨大な展示面積と多彩なコレクションを誇り、観光には欠かせないスポットです。

開館時間月、木、土、日:9:00~18:00
水、金:9:00~21:00
観覧料22ユーロ
休館日火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
アクセスPalais-Royal Musée du Louvreから徒歩4分
HPhttps://www.louvre.fr/

※営業時間や入館料、休館日などの情報は変更になる場合があります。最新情報については公式ウェブサイトにてご確認ください。

ルーブル彫刻美術館

ルーブル彫刻美術館

出典:ルーブル彫刻美術館公式サイト

ルーブル彫刻美術館には、ミケランジェロの名作「モーゼ」や「奴隷像」シリーズの複製が展示されています。「モーゼ」は、情熱的でダイナミックな作風により、紀元前15世紀のユダヤ教の創立者モーゼを神々しい姿で表現した超大作です。

これらの彫刻は、ルーブル史上初めて展示彫刻作品の実物から直接型を取り、ルーブルの技術陣がその総力を結集して実物と寸分たがわぬ姿で完成したもので、本物と見まがうほどの精巧な再現となっています。

また、「抵抗する奴隷」や「瀕死の奴隷」は、教皇ユリウス2世の霊廟のために制作された作品です。いずれもミケランジェロの彫刻の技術と感情表現を示しています。ルーブル彫刻美術館では、これらの作品を直接鑑賞できる貴重な美術館です。

開館時間9:30~17:00
観覧料大人(高校生以上):1,500円
65才以上・学生:1,300円障がい者手帳をお持ちの方:1,300円小人(小・中学生):800円団体(30名以上):1,400円小学生未満:無料
休館日年中無休
アクセス榊原温泉口駅から徒歩5分
HPhttps://www.louvre-m.com/

※営業時間や入館料、休館日などの情報は変更になる場合があります。最新情報については公式ウェブサイトにてご確認ください。

まとめ

出典:Wikipedia

この記事では、ミケランジェロの生涯や作品を紹介しました。ミケランジェロはルネサンス期を代表する巨匠で、作品はその後の美術に大きな足跡を残しました。

特に「ダビデ像」などの彫刻作品は、その技術と表現力で今も多くの人々を魅了しています。この記事を参考にすると、ミケランジェロの生涯や代表作をより一層楽しんでいただけるでしょう。

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