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2024.06.25

ミクストメディアとは?種類や代表的なアーティストについてわかりやすく解説します!

ミクストメディアとは?種類や代表的なアーティストについてわかりやすく解説します!

ミクストメディアとは

ミクストメディアとは、2種類以上の異なる媒体や素材を用いて作品を制作する技法、およびそれによって作られた作品のことを指します。

美術史上の最初のミクストメディア作品は、1912年ごろに制作されたピカソやブラックのコラージュを用いたキュビスム絵画とされています。以降はダダやシュルレアリスムにおいて発展し、第二次世界大戦後はネオ・ダダなどの作家によって試みられ現在に続いています。

ミクストメディアとコラージュの違い

コラージュはミクストメディアの一部に含まれますが、コラージュは紙や物を支持体に貼り付けることそのものを指します。ミクストメディアはより広い意味の混合技法のことで、絵画のみならず版画や彫刻においても用いられています。

ミクストメディアの特徴

ハサミ・マスキングテープ

多様な技法の融合

ミクストメディア作品は多様な素材を自由に組み合わせて作られるため、絵の具に異素材を混ぜる、紙を切る、物体をキャンバスに貼り付けるなど、さまざまな技法が用いられます。

油彩画においては油絵具、日本画においては顔料といったように、絵画は基本的には一つの素材で描かれますが、ミクストメディアは多様な素材と技法の融合を楽しむことができます。

豊かな質感と深み

ミクストメディア作品では、通常の油絵や日本画では出せないような質感や効果を出すことができます。絵画においては絵の具を厚く塗ることで画面にテクスチャと立体感を与える技法がありますが、ミクストメディアにおいてはよりダイナミックな表現が可能です。

キャンバスなどの平面をベースに立体物を貼り付けることで三次元的な効果が生まれ、絵画と彫刻の枠を超えた表現ができる点が大きな特徴です。

素材の多様性

ミクストメディア作品では、新聞、雑誌、広告などの紙素材を始め、布、ガラス片、紐、金属、フィルム、砂、廃材などあらゆる素材が使われます。日常でよく目にする物体が芸術作品として昇華されていることで、物体そのものの価値を見直すといった効果も生まれます。実際にシュルレアリスムの作家たちは、そのような効果を意識してミクストメディア作品を制作していました。

多様な素材を用いたことによる思わぬ効果や表現を楽しめる点は、ミクストメディアの魅力の一つと言えるでしょう。

ミクストメディアの種類

出典:Wikimedia commons

コラージュ

新聞や雑誌などから切り抜いた写真や絵や文字、布やガラスなどの素材を自由に組み合わせて台紙に貼り、一つの作品にすることをコラージュと言います。フランス語で「糊で貼り付ける」を意味する「coller」に由来する単語が由来です。

絵画においてはピカソやブラックなどのキュビスムの画家たちが始めた、支持体に紙片を貼り付ける技法である「パピエ・コレ」が先駆けと言われており、パピエ・コレを立体化した技法とも言われています。シュルレアリスムにおいてはマックス・エルンストが思いがけない組み合わせの効果を生み出す手法として用いました。

デコパージュ

デコパージュとは、紙に描かれた絵を切り抜いて小物や家具などの物体に貼り付けて装飾する技法です。「切り取る」という意味の中世フランス語「decouper」が由来とされています。

18世紀のイタリアの工芸品において流行し、金箔や木彫りなどの他の技術と組み合わせて用いられました。紙を貼り付けた上からニスを重ねて磨き上げることで、絵画や象牙細工のような見た目に仕上げることができます。

アッサンブラージュ

さまざまな立体物を寄せ集めて作られた一連の芸術作品およびその技法のことをアッサンブラージュと言います。「寄せ集め」を意味するフランス語で、美術用語としては1950年代にジャン・デュビュッフェがコラージュの手法と区別するために使い始めました。

しばしば空き缶などの廃品が用いられることがあるため、「ジャンク・アート(廃品美術)」と重なりますが、アッサンブラージュの方が用語としてより広い意味を持ちます。

ファウンド・オブジェ

通常は芸術作品の材料とはみなされないような自然の産物や人工物を「発見」し、作品に生かしたもののことを「ファウンド・オブジェ」と言います。1920年代後半に登場した廃品を利用したアッサンブラージュ作品や、シュルレアリスムの作家たちの作品がその始まりとされています。

日常で目にするような物体を作品に応用することで、そのものの平凡さを見つめ直したり、本来そのものに結びつけられている意味の再評価を行うことで、時に鑑賞者に哲学的な思索を促します。

オルタード・ブック

オルタード・ブックとは、既存の本にさまざまな加工を加えて一つの作品に仕上げたものです。本をキャンバスのように利用してページに絵を描いたり、コラージュしたり、また切ったり折ったりして立体的な形に仕上げることもあります。

ウェットメディアとドライメディア

ウェットメディアとは油絵具、水彩、アクリル、インクなどの液体のことを指し、ドライメディアとは鉛筆、木炭、パステル、クレヨン、グラファイトなどの画材のことを指します。ウェットメディアとドライメディアを組み合わせた作品もミクストメディアに含まれます。

代表的なアーティスト

ロバート・ラウシェンバーグ

ロバート・ラウシェンバーグ

出典:Wikimedia commons

ロバート・ラウシェンバーグは20世紀後半に活躍したアメリカの美術家で、ジャスパー・ジョーンズとともにネオ・ダダを代表する作家として知られています。

  • 略歴

ロバート・ラウシェンバーグは1925年にテキサス州のポート・アーサーに生まれ、従軍後カンザスシティ美術大学やパリのアカデミー・ジュリアンで学び、画家を目指します。アメリカに帰国後はノース・カロライナ州のブラック・マウンテン大学に入学し、バウハウスで教師を務めていたジョセフ・アルバースに師事しました。

1954年ごろからのちの代表作となる「コンバイン・ペインティング」のシリーズを制作し始めます。1958年には友人であるジャスパー・ジョーンズと同じく、ニューヨークのレオ・キャステリ画廊で個展を開いて好評を博しました。その後、作品はキャステリの売り込みによってヨーロッパでも紹介されるようになります。

1964年にはベネツィア・ビエンナーレでアメリカ人として初の金獅子賞(最優秀賞)を獲得し、さらに活躍の幅を広げました。

1984年には国連で「ラウシェンバーグ海外文化交流(ROCI)」の発足を発表します。これは世界中のアーティストが協力して制作や展覧会を行い、世界平和に貢献することを目的として設立された組織です。1985年から5年間かけてROCI世界巡回展が世界各地で開催され大成功を収めました。

  • コンバイン・ペインティング

ラウシェンバーグの作品でも最も注目を集めたものが「コンバイン・ペインティング」です。「コンバイン」は「結合」を意味し、抽象表現主義風のタッチで描かれたキャンバスに、日用品や廃材などの三次元の物体を貼り付けたシリーズです。

コンバイン・ペインティングの中でも初期の代表作である「モノグラム」(1955-59年)は、キャンバスの上に古タイヤと組み合わされたアンゴラヤギの剥製が置かれ、キャンバスの下にはキャスターが付いており、可動式になっています。本作は当初大きな賛否を呼びましたが、ラウシェンバーグの新しい試みは当時の美術界や後世に大きな影響を与えました。

ジャスパー・ジョーンズ

ジャスパー・ジョーンズ
  • 略歴

ジャスパー・ジョーンズは1930年にアメリカ・ジョージア州に生まれ、サウスカロライナ州立大学で美術を学びました。兵役を終えて1952年にニューヨークに移り、54年にロバート・ラウシェンバーグと出会いました。58年にレオ・キャステリ画廊で初個展を開催し、そこで後の代表作となる「旗」を発表し注目を浴びます。この初個展は大成功を収め、3点の作品がニューヨーク近代美術館に買い上げられることとなります。

以降は日常的なモチーフをテーマに絵画を制作し、1960年にはさまざまなオブジェを画面に貼り付けた作品を発表して話題になりました。

1980年代に入ると彼の作品の人気はいっそう高まり、ニューヨークのホイットニー美術館が「三つの旗」を当時における存命の芸術家として最高額で落札し、1988年にはサザビーズオークションで「False Start」が同じく存命の芸術家として最高額で落札されます。同年にはヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞し、国際的な評価を得ました。

  • 作風

ジャスパー・ジョーンズは、身の回りのありふれたものをエンカウスティークという技法で描きました。エンカウスティークとは蝋画とも呼ばれ、着色した蜜蝋を溶かして画面に焼き付ける古典技法です。ジャスパー・ジョーンズは星条旗や標的、地図、数字などをこの技法で描き、ポップ・アートにも多大な影響を与えました。

ロイ・リキテンシュタイン

  • 略歴

ロイ・リキテンシュタインは、アンディ・ウォーホルに並ぶポップアートの代表的な画家です。

リキテンシュタインは1923年にニューヨークに生まれ、1940年にオハイオ州立大学美術大学に入学し美術の基礎を学びます。兵役を挟んで1949年に修士号を取得し、修了後も大学に留まり講師を務めました。1950年代は製図工や大学講師などを務めながら生計を立て、51年にカール・バック画廊で初の個展を開催しました。

  • 作風

彼の代表作として知られる漫画の一コマを拡大したような作品は、1960年初頭に登場しました。自分の息子のためにミッキー・マウスの漫画を描いた時、芸術としての絵画よりも漫画の方が強烈なインパクトを持っていることに気づいたことをきっかけに、太い輪郭線、三原色のベタ塗り、ドットによる陰影など漫画の絵の特徴を誇張したような作品を制作するようになります。これらは厳しい批判も受けましたが、徐々に評論家からも評価され注目を高めていきました。

リキテンシュタインは絵画のみならず彫刻や版画、ミクストメディアの制作にも励み、数々の作品を残しました。1990年に制作した「反射」シリーズは、金属ホイルやプラスティックフィルム、木版などを組み合わせています。

ジャン・デュビュッフェ

ジャン・デュビュッフェ

出典:Wikimedia commons

1901年にフランスのル・アーヴルに生まれたジャン・デュビュッフェは、パリのアカデミー・ジュリアンに約半年間在籍したものの、ほとんど独学で絵を学びます。一時は画業を断念してワイン事業に従事しますが、1942年に画家に転身し44年に初個展を開催しました。この頃、芸術教育を受けずに独自に表現する人や、子供や精神病患者の作品収集を始め、それらを「アール・ブリュット(生の芸術)」と名付けました。

デュビュッフェはアール・ブリュットの作品から影響を受けて、頭部が異様に大きい肖像画やアンバランスな体の人物画などを描きました。砂やアスファルト、ガラス片、砂利、石膏、セメントなどを混ぜた厚塗りの絵の具を用い、塗った部分を引っ掻いて独特のテクスチャを持たせている点が特徴で、こうした作風によりデュビュッフェはフランスの抽象表現主義の動向である「アンフォルメル」の代表的な作家として知られています。

ピーター ブレイク

ピーター ブレイク

出典:Wikimedia commons

イギリスのポップ・アーティストとして著名なピーター・ブレイクは、1932年にケント州ダートフォードで生まれました。彼はグレイヴズエンド工科大学美術学校と王立芸術大学で教育を受け、1950年代には広告、音楽ホールのエンターテインメント、レスラーのイメージを取り入れたコラージュ技法を用いた絵画で知られるようになります。1961年の「ヤング・コンテンポラリーズ展」でデイヴィッド・ホックニーらと並んで展示し、イギリスのポップアート運動の一員として認められました。

ピーター・ブレイクは1967年のビートルズのアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のジャケットで世界的に有名となりました。総勢58名の有名人の写真がコラージュされ、ビートルズのメンバーが石像やトロフィー、福助人形などに囲まれて立っているという構成の本作は、当時としては画期的であり、アルバムジャケットの枠を超えたアートワークとして注目を集めました。彼は他にもオアシスやザ・フーなどイギリス出身のアーティストのアルバムジャケット制作を数多く手がけています。

まとめ

キュビスムの時代から多くの芸術家によって試みられてきたミクストメディアは、現代アートにおいてもよく見られます。多様な素材の組み合わせによる表現は、単なる絵画や彫刻にはない新鮮な驚きと魅力にあふれています。現在活躍しているアーティストのミクストメディア作品にもぜひ注目してみてください。

アートリエではアートに関する情報を発信しています。アートのことをもっと知りたいという方は、こまめにウェブサイトをチェックしてみてください。

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