アートリエ編集部が、オラファー・エリアソンについて詳しく解説します。
オラファー・エリアソンは、自然現象と建築を調和させた作品を制作し、世界の注目を集める現代アーティストです。そんなエリアソンですが、「作品の特徴は?」「代表作は?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、オラファー・エリアソンの作品の特徴を解説します。また、エリアソンの代表作や携わったプロジェクトも併せて紹介します。
この記事を読めば、エリアソンが作品に込める思いがわかるので、いつもと違った視点でアートを楽しみたい方はぜひ参考にしてみてください。
オラファー・エリアソンとは

出典:Wikipedia
オラファー・エリアソンは、美術の枠だけにとらわれない、多くのプロジェクトを手がけるアーティストです。エリアソンの作品は、自然の知覚を通してコミュニティーの考え方を創造しており、世界中で注目を浴びています。
1995年に設立した「スタジオ・オラファー・エリアソン」は、100名を超える専門家の大規模チームとなっています。屋内外で光や水など自然現象を再現し、社会的な課題を伝える取り組みにも注力しています。
オラファー・エリアソンの経歴

ここからは、世界的に注目を集めるエリアソンが、現在に至るまでどのような人生を歩んできたのか紹介します。
デンマーク王立芸術アカデミーで学ぶ
エリアソンは、1967年にデンマークで生まれ、アイスランドで育ちました。1989年から1995年の6年間、デンマーク王立芸術アカデミーに在籍し、アートを学びます。
デンマーク王立美術アカデミーは、1754年に創立した歴史あるデンマークの美術教育機関です。絵画、彫刻、建築、写真、映像芸術など幅広い分野の教育や研究を行っています。
ベルリンにスタジオ・オラファー・エリアソンを設立
1995年にベルリンへ渡ったエリアソンは、「スタジオ・オラファー・エリアソン」を設立しました。
スタジオ・オラファー・エリアソンは多くの専門家で構成され、今では100名を超えています。エリアソンの傍らには常に料理が存在し、スタジオでの賄いもアートと考えられたことから、スタジオ・オラファー・キッチンも誕生しました。
現在では、多くの著名人がスタジオ・オラファー・エリアソンへ足を運ぶほどとなっています。
2003年ウェザープロジェクト(Weather Project)で成功をおさめる
エリアソンは、2003年にロンドンのテートモダンで「ウェザープロジェクト」を出展しました。屋内に創り出された人工的な太陽は、多くの人の五感を刺激し、大成功をおさめています。
ウェザープロジェクトは、人々に太陽について考える機会を与え、注目を集めました。エリアソンが世界に羽ばたくきっかけとなった、代表作と言っても過言ではありません。
2回教授職に就く
エリアソンは、2009年から2014年までの5年間、ベルリン芸術大学の教授を務めました。2014年からはエチオピアのアディスアベバにある「アッレ美術デザイン学院」で非常勤教授職に就いています。
このように、2回教授職に就いていることから、エリアソンに高い実績と指導力があることがわかります。
2014年ウルフ賞芸術部門を受賞

出展:美術手帖
エリアソンは、2014年のウルフ賞芸術部門で受賞しました。イスラエルのウルフ財団が授与するウルフ賞は、建築・音楽・絵画・彫刻の分野で、芸術に優れた人物に授与されています。
ウルフ賞を授与されることは、ノーベル賞に匹敵するとも言われており、権威ある賞として知られています。
2023年高松宮殿下記念世界文化賞を受賞
エリアソンは、世界文化賞の1つである「第34回高松宮殿下記念世界文化賞」において、彫刻部門にて受賞しました。高松宮殿下記念世界文化賞は、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の5部門の受賞者が選ばれます。
コロナ禍以降、授賞式は中止や縮小がされていましたが、エリアソンが受賞した2023年はほぼ通常どおり開催されました。
言葉ではなく、知覚をとおした世界観を演出するエリアソンは、さまざまな賞を受賞し現在も活動を続けています。
近年はインスタグラムでも話題になる環境家
エリアソンは、SNSでも多くの人気を集めています。インスタグラムでは、エリアソンの作品に魅了された人々が、ハッシュタグをつけて作品を投稿しています。
2020年の東京都現代美術館での個展や麻布台ヒルズでの個展は、インスタグラムに投稿する人が目立ちました。
人と自然の関係を訴えかけるエリアソンは、環境問題や社会的な課題に対する積極的な取り組みも広く知られています。
オラファー・エリアソンの作品の特徴

出展:HEAPS
エリアソンの作品には、以下の3つの特徴があります。
- 巨大な展示空間
- 自然現象を取り入れる
- 環境問題に訴える
それぞれ詳しく紹介します。
巨大な展示空間
エリアソンの作品には、巨大な展示空間を使ったアートが多くみられます。空間を活かした彫刻や建築など、表現を問わず観覧者の知覚を揺さぶる「リアルな世界観」も特徴的です。
吹き抜け空間を利用した大規模なインスタレーションでは、暗闇のなかに虹が浮かぶ「ビューティ」は有名な作品です。「ビューティ」は、見る人すべてを魅了するダイナミックかつ繊細な作品として知られています。
自然現象を取り入れる
エリアソンは、自然現象を長年にわたって撮影してきたこともあり、自然をモチーフとしたアートを取り扱っている作品が多い傾向にあります。これらは、幼少期をアイスランドで過ごしたことが関係しているそうです。
人と自然の関係をめぐる思考は、光や水、霧や氷をモチーフに選ばれることが多くあります。視覚だけでなく、知覚を通じて世界を捉えるアートには、巨大な氷塊で話題を呼んだ「アイス・ウォッチ」が挙げられます。
環境問題に訴える
地球規模で環境問題を訴えるエリアソンは、エネルギーや気候問題も作品の制作動機となっています。手がける作品は、光と空間など、観覧者の視点を重視したアートも少なくありません。
スタジオ・オラファー・エリアソンは、空間認知のプロダクションだけでなく、環境問題を訴える活動の拠点の1つとなっています。エリアソンの魅力は、人々が気になりつつも変えられない、環境問題の模倣活動にもあります。
オラファー・エリアソンの芸術作品

出展:SHIFT
エリアソンの代表的な芸術作品は、主に以下のとおりです。
- ウェザー・プロジェクト
- アイス・ウォッチ
- ビューティー
- リトルサン
- 鏡
1つずつ詳しく紹介します。
ウェザー・プロジェクト

出典:Wikipedia
2003年、ロンドンのテートモダンでは、天井を巨大な鏡で覆ったウェザー・プロジェクトが開催されました。オレンジ色に発光する球体や人工的な霧を使用するなど、アートと演出にこだわった作品です。
訪問者は手や足などを振り、自己表現を楽しみました。小さな黒い影を自分自身に投影する演出として、話題になった作品でもあります。
アイスウォッチ

出典:美術手帖
アイスウォッチは、2018年にテートモダンのブルームバーグ本社前に、氷塊が現れたことで有名な作品です。国連の気候変動会議に合わせたアートで、急速に溶け出す氷河を演出しています。
氷塊は、グリーンランドにあるフィヨルドからテート・モダン前とブルームバーグ本社前に運ばれ、合計30個が展示されました。氷塊の大きさはさまざまで、最大6トンにも達するほど巨大で世界を驚かせています。音を立てて溶ける氷塊に、地球温暖化を意識した人も多くみられました。
ビューティー

出典:The New York Yimes Style Magazine:Japan
ビューティーは、エリアソンの初期作として1993年に発表されました。暗闇の中から虹が現れる様子は、エコロジーを題材としています。鍾乳洞のように冷やされた展示室で、霧雨を降らせることで虹色のカーテンを表現しています。
自然の再現が、エリアソンらしいアートだと感じられる作品です。日本では、2020年に東京都現代美術館にて展示されました。
リトルサン

出典:AXIS Web
リトルサンはアートに興味を持つ人ではなく、照明を必要とする人々に向けたアートです。
2012年に設立したリトルサン社で最初に発売されたのが、ソーラーライトのリトルサン・オリジナルでした。
リトルサンは、現代社会において他者へ思いを馳せることが難しいことを表現していると、多くの人から評価を得ています。
鏡

本物の氷河をイメージして作られたデンマークのユトランド半島エーベルトフトには、草地に鏡が設置されています。空や草木、野生生物など氷河と自然を調和させたアートであることが、鏡を覗いて初めて気づく作品です。
エリアソンの真骨頂である鏡アートは、絶え間ない自然を写しつつ、恒久的に設置されています。
オラファー・エリアソンが携わったプロジェクト

出展:CaseID
エリアソンが関わった主なプロジェクトは、以下のとおりです。
- グリーン・リバー
- サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン
- ニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズ
1つずつ解説します。
グリーン・リバー

出典:IDEEL ART
グリーン・リバーは、世界各国で突如として開催されたエリアソンの有名な公共アートです。初めて実施されたのは1998年で、ドイツのブレーメンにあるヴェーザー川が舞台になりました。
グリーン・リバーは環境に害がないウラニンを水中に流し込んだ、鮮やかな緑色に発色する川のアートです。街の人には一切意図を告げず開催されたアートでしたが、普段とは異なる景色に人々は足を止めて驚きました。
グリーン・リバーは、後にノルウェーやアメリカ、日本などでも開催されています。
サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン

出典:ELLE
サーペンタイン・ギャラリー・パビリオンは、夏に英国王立公園ケンジントン・ガーデンで開催される、世界の建築家によるイベントです。
2000年から始まった7回目のパビリオンでは、エリアソンの作品が発表されました。ノルウェーの建築事務所スノヘッタとの共作で、パビリオン初となる動線を採用し、らせん構造が特徴です。
ニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズ

ニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズは、約17億円をかけた大規模なアートで2008年に突如出現しました。作品の制作背景には、自身初となるドキュメンタリー映画「オラファー・エリアソン 視覚と知覚」があります。
40メートルの高さから滑り落ちる4つの滝は、ニューヨークのイースト川に展示されました。巨大な人工滝によるインスタレーションは、制作費用以上の経済効果を生み出したと言われています。
オラファー・エリアソンの作品が見られる場所

オラファー・エリアソンの主な作品は、ニューヨーク・グッゲンハイム美術館と、金沢21世紀美術館でみられます。それぞれ詳しく解説します。
金沢21世紀美術館

出典:金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館では、2010年に制作されたエリアソンのカラー・アクティヴィティ・ハウスが観覧できます。作品は恒久的に屋外展示されており、見る場所によって異なる色が特徴です。
渦の中心には光源があり、中に入った人も外から眺める人も、新たな気づきを得られるアートとなっています。
開館時間 | 10:00~18:00金・土のみ10:00~20:00 |
観覧料 | 展覧会ごとに異なる 2025年度の主催展覧会 料金一覧 |
休館日 | 展覧会ゾーン:月曜日(休日の場合は直後の平日)、年末年始 交流ゾーン:年末年始 |
アクセス | 石川県金沢市広坂1-2-1 |
HP | https://www.kanazawa21.jp/ |
ニューヨーク・グッゲンハイム美術館

セントラルパークに隣接するグッゲンハイム美術館は、美しいらせん状の建物で2019年から世界遺産に認定されています。20世紀以降に発表された近代アートを中心としたギャラリーが特徴です。
グッゲンハイム美術館には、ポスト印象派として知られるゴッホ、ピカソ、セザンヌなど有名アーティストのアートが常設されています。2020年にエリアソンの代表作約30点を展示した大規模な展覧会が開催されました。
開館時間 | 10:30~17:30 特定の月曜日のみ18:00~20:00(会員限定) |
観覧料 | 大人:30ドル シニア(65歳以上):19ドル 学生:19ドル 12歳以下:無料 |
休館日 | 要問い合わせ |
アクセス | 1071 Fifth Avenue New York, NY 10128( 88th Street ) |
HP | https://www.guggenheim.org/ |
まとめ

出展:東京都現代美術館
この記事では、オラファー・エリアソンの作品の特徴を解説しました。
エリアソンは、建築や自然などさまざまな「気づき」とアートを融合させた、現代のアーティストです。視覚だけでなく聴覚や触覚など、五感を使って人々に訴えかける作品が特徴です。
何気ない景色でも、エリアソンの手にかかれば、自然との調和に気づかされます。この記事を参考にして、オラファー・エリアソンの作品に触れ、環境問題を意識してみましょう。
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