アートリエ編集部が、画家のジョルジュ・スーラを詳しく解説します。
ジョルジュ・スーラは点描画の芸術作品で知られるフランスの画家です。新印象派を切り開いた人物としても知られています。スーラの絵画に興味のある方は、「どんな人物だったのか?」「代表作は?」と思う人もいるでしょう。
そこでこの記事では、ジョルジュ・スーラはどのような人物だったのか、詳しく解説します。また、生い立ちや代表作品も併せて紹介します。この記事を読めばスーラの代表作や人柄がわかるので、詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
ジョルジュ・スーラとは

ジョルジュ・スーラは、19世紀にフランスで活躍した新印象派の画家です。印象派の画家が使用していた「筆触分割」の技法をさらに進化させ、点描画を編み出した画家として知られています。
1886年に発表された代表作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」は、スーラの生涯で最高の大作として評価されました。また、新印象主義の名称が使われるきっかけとなった作品でもあります。
病気のため31歳の若さで亡くなりましたが、その画期的な画法は現在でも高い評価を受けています。
ジョルジュ・スーラの生涯

出典:Wikipedia
ここからは、スーラの生涯を詳しく解説します。31年の短い生涯のなかで、秘密主義を貫いており、謎に包まれている部分も多い人物です。
スーラがどのような影響をもたらしたのか、詳しくみていきましょう。
幼少期は裕福な家庭で育つ
スーラは、1859年にパリで生まれました。スーラの家庭は、パリ郊外に別荘を構えるほど裕福な中産階級だったようです。しかし、父親は別荘に引きこもる生活をしていたため、スーラと遊ぶ機会はなかったといわれています。
父親の無口で内気な性格は、スーラーにも受け継がれたようです。スーラの幼少期に関して現在も謎に包まれている理由は、私生活を他人に語らない性格だったためといわれています。
美術学校へ
1878年、スーラはエコール・デ・ボザール(国立美術学校)に入学しました。ここでは、過去の彫刻作品を参考にして絵を描いたり、巨匠の絵画を研究したりと絵の勉強に集中したようです。
しかし、わずか1年でスーラは兵役のために学業を中断し、その後エコール・デ・ボザールを退学します。退学後は独学で絵を描き続け、色彩や光学の研究をして過ごしました。
兵役後パリへ戻ってサロンへ挑戦

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1880年、スーラはブレストの軍事学校に入り、1年間の兵役に従事します。兵役後はパリに戻り、友人のアマン・ジャンとアトリエを共有しました。スーラはパリ東駅近くのシャブロル通り6番地にアパートを借りて、公式美術展覧会のサロンへの挑戦を決意します。
このころに素描の技術を習得して描いた肖像画は、1883年にサロンで入選し展示されました。
点描法を開発し新印象派と呼ばれる
スーラは、印象派の作品を参考にしながら新たな画法を生み出そうと研究を重ねます。研究の結果、絵の具を混ぜ合わせずいくつもの小さな色の点をキャンバスに並べて描く、点描法という新しい手法を生み出しました。
スーラは、点描法を活かした大作「アニエールの水浴」を1年かけて完成させます。その後、スーラに影響されて点描法を使って作品を描く画家が多く現れ、彼らは新印象主義と呼ばれるようになりました。
晩年と死因
1890年、30歳になったスーラは内縁関係にあった女性との間に、息子を1人授かりました。しかし、翌年にパリの両親の家で、31歳で亡くなります。
スーラの死因は髄膜炎や肺炎、狭心症やジフテリアなどさまざまな説がありますが、現在でも詳しいことはわかっていません。スーラの亡骸は、パリ東部にあるペール・ラシェーズに埋葬されました。
スーラの死から2週間後、息子も病気でこの世を去ったといわれています。
ジョルジュ・スーラの性格とプライベート

出典:Wikiart
ジョルジュ・スーラの性格は、寡黙で控えめな性格として知られています。秘密主義者としても知られており、友人だけでなく身内にもプライベートなことをほとんど語りませんでした。
スーラの秘密主義は徹底しており、自分の母親を含む家族や周囲にも、息子の存在を長い間知らせずにいたことで知られています。印象派の画家は社交的なタイプが多かったようですが、スーラは彼らとは違い1人で絵の研究に没頭していたといわれています。
作品の制作には長い時間をかけて緻密な計算のうえで描くなど、几帳面で完璧主義の性格だったともいわれています。
ジョルジュ・スーラの作品の特徴

出典:WikiArt
ここからは、ジョルジュ・スーラの作品の特徴を解説します。点描法や絵の色彩、明暗の対比を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
点描法
スーラが独自に考案した点描法は、網膜の色覚の仕組みを応用した視覚混合の現象を活かして生み出されました。
点描法で描かれた絵は、細かい色の点を重ねることで、目線や距離によって点が重なって見えます。これによって、離れると色が混ざって見えるものの、近くで見ると個別の点に見える豊かな表現に成功しました。
スーラは色を科学的に分析した色彩理論を使い、綿密な計算を元にして点描法の技術を得ました。
色彩や明暗の対比
スーラは色彩や明暗の対比でも、視覚的な色の強調や目立ちやすさなどの変化を表現しました。暗い色を明るい色の横に置いて暗い色をより深く、明るい色は鮮やかに感じさせるなどのさまざまな工夫を施しています。
他にも、青い空に黄色の点を描くことで黄色をより鮮やかにしたり、黄色を混ぜて青色を強く引き立てたりもしました。このような色彩や明暗の対比を表現することで絵全体にリズムが生まれ、視覚的に見ても魅力的な作品となっています。
ジョルジュ・スーラの代表作品一覧

出典:Wikipedia
ここからは、ジョルジュ・スーラの代表作品を以下の内容で解説します。
- アニエールの水浴
- グランド・ジャット島の日曜日の午後
- ポーズする女たち
- グラヴリーヌ海峡
- エッフェル塔
- サーカス
それぞれの作品の特徴を解説していきましょう。
アニエールの水浴

出典:Wikipedia
アニエールの水浴は、1884年に発表された作品です。セーヌ川沿いにあった水浴場の風景を描いたこちらの絵は、縦201cm、横301.5cmの大作です。サロンでは落選しましたが、1884年に第一回アンデパンダン展に出品され、広く知られるようになりました。
晴れた夏の午後を描いたこちらの作品は、点描法確立前のスーラ初期の代表作です。
グランド・ジャット島の日曜日の午後

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グランド・ジャット島の日曜日の午後は、1886年に発表されました。パリ近郊のセーヌ川の中洲で過ごす人々を点描法で描いたこの作品は、新印象派、ポスト印象派時代を代表する作品として高く評価されています。
樹や人物の位置などを綿密に計算し、点描法で色を表現するなどして、完成まで2年の歳月を要したといわれています。
ポーズする女たち

出典:Wikiart
ポーズする女たちは1888年に発表された大作で、アトリエの一角でポーズを取る3人の裸婦を描いた作品です。この作品の解釈に関しては現在でもわからない部分が多く、はっきりとした考察はされていません。
描かれているモデルに関しても諸説あり、少女をモデルにした説や、娼婦をモデルにした説などさまざまな説があります。
グラヴリーヌ海峡

出典:Wikiart
グラヴリーヌ海峡は、1890年に描かれた新印象派を代表する作品です。水路の穏やかな風景を描いたこの作品は、色が光学的に混ざり合うスーラ独自の点描法が活かされています。
前景の淡い黄色の砂浜や、静けさに満ちた広大な淡い青空など、点描画の魅力が発揮されている名画です。
エッフェル塔

エッフェル塔は、1889年に描かれた作品です。この作品が描かれた当時は、まだエッフェル塔が完成していなかったため、塔の先端部分がなく未完成の状態です。
パリ近代化のシンボルとして建設されたエッフェル塔ですが、絵画として最初に描いたのはスーラだったといわれています。
サーカス

出典:Wikipedia
サーカスは、1891年に描かれたスーラの遺作となった作品です。サーカスの出演者の躍動感を点描法で描いた作品ですが、スーラが制作途中で亡くなったため、絵の左側の部分は未完成です。
座席と観客の間は、厳格で動きのない幾何学的な形状をしています。絵はブルーとイエロー、オレンジとホワイトの4つの色彩で構成されており、明暗のある美しさが特徴的です。
ジョルジュ・スーラと新印象派の関係

出典:世界の美術館
新印象派とは、スーラから始まった絵画の様式で、新印象主義ともいわれています。それまでの印象派は直感的に色彩表現を描いてましたが、新印象派は色彩を理論化し、それに基づいた点描法を用いて描きました。
印象派の画法は素早いタッチで描くのが特徴的でしたが、輪郭がぼやけてしまい人物画を描くのが難しい欠点がありました。この難点を補ったのが新印象主義で、点描法を用いることで色彩と人物の輪郭を明確にすることに成功しています。
印象派の画家と作品の魅力を詳しく知りたい方は、以下の記事で紹介しているのでぜひ併せてご覧ください。
ジョルジュ・スーラ以外の新印象派といわれた主な画家

出典:Wikiart
ジョルジュ・スーラ以外の新印象派といわれた主な画家は以下です。
- ポール・シニャック
- アルベール・デュボア=ビエ
- カミーユ・ピサロ
これらの画家の詳細と、ジョルジュ・スーラとのエピソードを順に解説していきましょう。
ポール・シニャック

出典:Wikiart
ポール・シニャックは、スーラと共に新印象派を代表する画家として知られています。シニャックはスーラの点描法と、クロード・モネに影響された暖色系の色彩を使い、独自の世界を確立させました。
シニャックはスーラと共に、1886年の印象派展に作品を出品しています。性格は無口で理論派のスーラとは異なり、陽気で話し好きだったようです。
シニャックは、短命だったスーラの代わりに新印象派の理論を世に提唱したことで、画家として高い功績を得ています。
アルベール・デュボア=ビエ

出典:Wikiart
アルベール・デュボア=ビエはフランスの軍人で、画家としても知られています。ビエは、スーラと共にアンデパンタン美術協会の創立企画者として活躍しました。その後、スーラの影響を受けて、点描による絵画制作を開始します。
ビエが絵を制作していたスタジオは、新印象派のメンバーが集まる場所となり、スーラもよく出入りしていたようです。
カミーユ・ピサロ

出典:Wikipedia
カミーユ・ピサロは、フランスの印象派を代表する画家です。印象派の発展に貢献した画家としても知られており、ポール・セザンヌやポール・ゴーキャンからは絵の師匠として慕われました。
スーラとピサロは、1885年ごろにポール・シニャックの紹介で知り合ったといわれています。スーラーの影響により点描法の素晴らしさに感化されたピサロは、周囲の批判を押し切って新印象主義の画法を追求しました。
しかし、制作に長い時間がかかるのと自分の美学に反するなどの理由で、印象派に戻ったといわれています。
ピサロについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
ジョルジュ・スーラの作品がみられる主な美術館

出典:Wikiart
スーラの作品がみられる主な美術館は、以下の3つです。
- オルセー美術館
- シカゴ美術館
- メナード美術館
スーラの作品を見たい方は、ぜひ参考にしてみてください。
オルセー美術館

出典:オルセー美術館
オルセー美術館は、パリにある19世紀の美術専門の美術館です。同美術館は、オルレアン鉄道により建築されたオルセー駅の駅舎でした。1986年に美術館として新たに生まれ変わった後は、パリを代表する美術館として知られています。
スーラの作品は、代表作である「ポール・アン・ベッサンの外港、満潮」や「アニエールの水浴の習作」、「サーカス」などがみられます。
開館時間 | 火、水、金、土、日:9:30〜18:00木:9:30〜21:45 |
観覧料 | 12ユーロ~16ユーロ |
休館日 | 月曜日、5月1日、12月25日 |
アクセス | メトロ12号線 Solférino 駅下車徒歩3分、RER C線 Musée d’Orsay 駅下車徒歩1分 |
HP | https://www.musee-orsay.fr/fr |
※営業時間や入館料、休館日などの情報は変更になる場合があります。最新情報に関しては公式ウェブサイトにてご確認ください。
シカゴ美術館

出典:シカゴ美術館
アメリカイリノイ州シカゴにあるシカゴ美術館は、アメリカ3大美術館の1つとして知られています。
シカゴ美術館には、スーラの代表作である「グランド・ジャット島の日曜日の午後」が収蔵されています。同作品は、数ある展示品の中でも特に人気の高い絵画です。
開館時間 | 月、水、金、土、日:11:00〜17:00 木:11:00〜20:00 |
観覧料 | 一般:32ドル 65歳以上:26ドル 学生:26ドル 14歳〜17歳:26ドル 14歳以下:無料 |
休館日 | 火曜日 |
アクセス | 地下鉄Adams/Wabash駅から徒歩2分 |
HP | https://www.artic.edu/ |
※営業時間や入館料、休館日などの情報は変更になる場合があります。最新情報に関しては公式ウェブサイトにてご確認ください。
メナード美術館

出典:メナード美術館
メナード美術館は、愛知県小牧市にある美術館です。メナード化粧品創業者の野々川大介氏と、夫人の野々川美寿子氏が収集した美術コレクションが数多く展示されています。
スーラの作品は「働く農夫」「アンサンブル(サーカスの客寄せ)」が収蔵されています。
開始時間 | 10:00〜17:00 |
観覧料 | 一般:1,000円 高大生:600円 小中学生:300円 |
休館日 | 月曜日(祝日の場合は翌日)年末年始 |
アクセス | 名鉄小牧線小牧駅から徒歩15分 |
HP | https://museum.menard.co.jp/ |
※営業時間や入館料、休館日などの情報は変更になる場合があります。最新情報に関しては公式ウェブサイトにてご確認ください。
まとめ

出典:The Metropolitan Museum of Art
この記事では、ジョルジュ・スーラの生い立ちと代表作品を紹介しました。スーラは点描法を生み出した、19世紀を代表する新印象主義の画家です。
色彩や光学の理論に基づいたスーラ独自の点描法は、後の現代美術にも大きな影響を与えました。31歳の若さで亡くなっていますが、作品は現在でも国内外の美術館で鑑賞できます。
この記事を参考に、スーラの作品と新印象主義に触れてみてください。
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