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2024.08.26

ゴッホの『ひまわり』全作品を紹介!制作背景から各作品を細かく解説します!

ゴッホの『ひまわり』全作品を紹介!制作背景から各作品を細かく解説します!

こんにちは、アートリエ編集部です。今回は、ゴッホの代表作である「ひまわり」シリーズについてご紹介します。

「ひまわり」は、世界的に有名なシリーズ。後世、ゴッホの名声を高める要因となりました。ゴッホの「ひまわり」は、単なる花の絵ではなく、彼の人生と情熱が色濃く反映された作品群です。

本記事では、ゴッホが「ひまわり」を制作した背景、各作品の特徴、そして当人がこうした作品群がどのように展示されることを望んでいたのかなどについて、詳しく解説していきます。

ゴッホの代表作「ひまわり」

ゴッホの「ひまわり」シリーズは、彼の作品の中でも特に有名で、世界中の美術館やギャラリーで展示されています。

ゴッホの自画像

シリーズからは、ゴッホの芸術に対する情熱と、彼の内面的な感情が色濃くうかがえます。

ここからは、ゴッホが「ひまわり」を描いた背景や、各作品が持つ特徴について詳しく見ていきましょう。

描かれた時期とゴッホの状況

ゴッホが「ひまわり」を描いたのは、1888年から1889年にかけてのことです。

1888年2月、ゴッホはパリを離れ、南フランスのアルルという町に向かいました。

彼はそこで画家の仲間たちと一緒に住むことを計画していて、特に尊敬していた画家ポール・ゴーギャンを招待しました。

この「ひまわり」は、このアトリエの部屋を明るく飾るために描かれたのです。

こうした背景もあり、アルルでの生活は、ゴッホにとって創造的なエネルギーが高まっていた時期と考えられます。

しかしながら同時に、この時期のゴッホは精神的に不安定で、アルルでの生活においても多くの困難を感じていたとされています。

ゴッホが「ひまわり」を描くにあたっては、こうした彼自身の感情や状況が反映されていると考えられているのです。

「ひまわり」作品群の特徴

「ひまわり」シリーズは、全体として共通のテーマを持ちながらも、各作品がそれぞれ独自の特徴を持っています。

特徴のひとつとして、シンプルな色使いが挙げられます。

たとえば、SOMPO美術館に収蔵されている「ひまわり」に使われている色は、わずか3種類の黄色。しかしながら、その色彩の美しさと力強さが今も人々を魅了しています。

また「ひまわり」シリーズでは、満開のひまわりからしおれたひまわりまで、さまざまな状態の花が描かれています。

さらに、ひまわりの配置や構図も作品ごとに異なっており、それぞれが視覚的に異なる印象を与えられるようになっているのです。

出身地であるオランダでは、ひまわりは献身や忠誠を象徴するものとされ、ゴッホはこのモチーフを通じて、日常の苦しみの中に希望を見つけようとしていた可能性があります。

このように、ひまわりというシンプルな題材ながら、ゴッホはその中に深い意味を込めたと考えられます。彼が亡くなった後、友人たちは彼の葬儀にひまわりを持ってきたという話もあるほど。

ゴッホにとって黄色は、光や純粋さ、幸せの象徴だったのかもしれません。

ゴッホが生きている間は、彼の作品はほとんど売れませんでしたが、彼が亡くなった後、「ひまわり」は彼の代表作として世界中で高く評価され、オークションでも高額で取引されるようになりました。

ゴッホは「ひまわり」シリーズを通して、自身の内面の感情を色彩や形状を通じて表現しました。

それぞれの作品は、彼の心の中にある喜びや不安を映し出しており、単なる静物画以上の深い意味を持っているといえるのです。

ゴッホが希望した展示の配置

ゴッホは、南フランスのアルルに移り住み、「黄色い家」と呼ばれるアトリエを拠点に制作活動を行っていました。

先にもあったようにこの「黄色い家」は画家仲間たちが集まる理想の共同生活の場となる予定で、特に尊敬していたポール・ゴーギャンを迎えるために「ひまわり」シリーズを描き始めました。

彼の強いこだわりは、「ひまわり」たちを壁一面に飾り、部屋全体が明るく温かい雰囲気になるように展示することだったそう。

この配置は、ゴッホにとって単なるインテリアではなく、ゴーギャンへの尊敬と友情を象徴する特別なものだったのです。

残念ながら二人の共同生活は数ヶ月という短期間で終わりましたが、ゴッホのこの展示構想は、彼の芸術に対する情熱と人間関係への期待を表すものとして、注目すべき考え方です。

7点の「ひまわり」

ゴッホの「ひまわり」シリーズの各作品には、異なる背景やエピソードがあり、特徴も個別に存在します。

以下からは、著名な7点の「ひまわり」それぞれについて詳しく見ていきましょう。

アルルで描かれた最初の「ひまわり」

アルルで描かれた最初の「ひまわり」

ゴッホが南フランスのアルルで最初に描いた「ひまわり」は、1888年8月に制作されました。

この作品は、鮮やかな水色の背景と3本の生命力あふれるひまわりが特徴です。

水色の背景は、ゴーギャンとの共同生活のために用意した「黄色い家」の壁紙を反映しており、ひまわりの黄色と絶妙なコントラストを生み出しています。

この作品は現在、アメリカの個人コレクターが所蔵しています。

焼失してしまった「芦屋のひまわり」

「芦屋のひまわり」として知られる2枚目の作品は、5輪のひまわりが描かれており、前作に比べるとやや暗い印象があります。

この作品は日本の実業家であり、文芸・芸術グループのパトロンであった山本顧彌太(- こやた)によって山本宅に所蔵されていましたが、1945年の空襲で焼失してしまいました。

当時、他の絵画は避難させることができたものの、この「ひまわり」だけは壁に固定されていたため、移動が困難で失われてしまったのです。

ミュンヘンの12輪の「ひまわり」

ミュンヘンの12輪の「ひまわり」

ミュンヘンのノイエ・ピナコテークに所蔵されている「ひまわり」は、全12輪のひまわりが描かれており、それぞれが異なる形で咲いています。1888年8月の作品です。

花の咲き方に違いが見られるこの作品は、鮮やかな黄色と水色のコントラストが際立っており、多くの観光客がこの絵を目当てにノイエ・ピナコテークを訪れるそうです。

花びらの色を精密に再現するなど、ゴッホの色彩感覚が存分に発揮された作品です。

ロンドン・ナショナル・ギャラリーの15輪の「ひまわり」

ロンドン・ナショナル・ギャラリーの15輪の「ひまわり」

ロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されている「ひまわり」は、1888年8月に完成しました。

濃淡まぜあわせ、すべてが黄色で統一されたこの作品も、ゴッホがゴーギャンと過ごす「黄色い家」に飾るために描かれました。

ひまわりといえばこの絵を指すこともあるほどであり、ゴーギャン自身も絶賛したそうです。

特に、背景のクリームイエローと花瓶の黄色が同系色でありながらも微妙なコントラストを作り出しており、全体に温かい雰囲気を醸し出しています。

2022年10月には、環境保護活動を訴えるグループ「Just Stop Oil」のメンバーが、本作にトマト缶を投げつける事件が起こりました。

幸い、作品自体には被害はなかったものの、額縁に少し傷がついたそうです。活動家2人はその場で逮捕され、作品は掃除された後、同じ日のうちに再び展示されたとのこと。

東京・SOMPO美術館の15輪の「ひまわり」

東京・SOMPO美術館の15輪の「ひまわり」

東京のSOMPO美術館に所蔵されている「ひまわり」は、1987年に53億円で購入されたことで有名です。

ロンドンのナショナル・ギャラリーにある「黄色い背景のひまわり」を元にしていて、ゴッホが実際にゴーギャンと一緒に暮らしていた1888年11月末から12月初め頃、自傷事件後の療養中に描かれたと考えられています。

自傷事件とは、ゴッホがある時起こしてしまった、ある凄惨な自傷行為のこと。

色や構図はロンドンの作品に似ていますが、ゴッホは単に同じ絵を描いたわけではありません。色の使い方や筆遣いに違いがあり、ゴッホがこの絵をじっくりと考えながら仕上げたことがわかります。

この作品には15本のひまわりが描かれており、特に枯れゆく花弁の生々しさが他版より際立って見られます。

花びらの鮮やかな黄色と、花瓶の深いオリーブ色の対比も注目ポイントです。

黄色の濃淡を駆使して花の生命力を感じさせるこの絵は、日本国内で人気があり、美術館の目玉展示となっています。

アムステルダムのヴァン・ゴッホ美術館にある「ひまわり」

アムステルダムのヴァン・ゴッホ美術館にある「ひまわり」

アムステルダムのヴァン・ゴッホ美術館には、ゴッホがロンドン版(ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵の「ひまわり」)を模写した「ひまわり」が所蔵されています。

自傷事件ののち「黄色い家」に戻った1891年に際に制作されたとされます。

ゴッホの自傷行為事件後、再び創作に没頭した際の作品であるため、その内面の葛藤と復活の象徴ともいえる作品です。

そのためか、黄色を基調としつつ、背景の色使いやひまわりの描写が一層鮮やかです。

本作については、作品の保存状態を保つため、館外への貸し出しは行われていないそうです。

フィラデルフィア美術館の「ひまわり」

フィラデルフィア美術館の「ひまわり」

フィラデルフィア美術館には、模写とされる「ひまわり」が所蔵されています。

特に有名なのはゴッホがミュンヘン版を模写した作品です。1889年1月に描かれました。

多くのひまわりが描かれており、やはり水色の背景が特徴的です。

この作品は「ひまわり」シリーズの最後の作品とされ、ゴッホの技術と情熱が込められた一枚です。現在、フィラデルフィア美術館を訪れる多くの人々が、この作品を目当てに足を運んでいます。

番外編:パリ時代のひまわり

7つのひまわりシリーズの前身となる作品が「パリのひまわり」と呼ばれる4点の絵です。1886年から1887年にかけてパリで描かれました。

パリのひまわり

「パリのひまわり」シリーズは、花瓶に生けられたシリーズとは異なり、ひまわりが他の花と一緒に描かれていたり、種が目立つ状態で描かれていたりすることが特徴です。

背景は暗く、全体的にゴッホの初期作品に見られる重々しい雰囲気があります。

こうした作品は、後にゴーギャンとの手紙の中で言及されるまで、あまり知られていませんでした。各作品は主に西洋の異なる美術館に場所に所蔵されています。

まとめ

今回は、ゴッホの代表作である「ひまわり」シリーズについて、その制作背景や各作品の特徴、そしてゴッホが望んだ展示方法などについて解説しました。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「ひなげし畑」 (1890)

こうした作品を通じて、ゴッホの内面や彼の芸術に対する思いが理解いただけたでしょうか。

ゴッホ自身の名作は多いながらも、こうした1シリーズを見てみるだけでも、ゴッホの抱えていた思いや彼の芸術に対する考え方などを深く理解することができるため、まずはひまわりシリーズから実際にご覧になってみてはいかがでしょう。

日本では、SOMPO美術館でも実際の絵画が鑑賞できるため、特におすすめです。

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