column
2024.07.03

メディアアートとは?草間彌生からチームラボまでデジタル技術を活用した新しい芸術の形について解説します

メディアアートとは?草間彌生からチームラボまでデジタル技術を活用した新しい芸術の形について解説します

こんにちは。アートリエ編集部です。今回は、デジタル技術と芸術が融合した「メディアアート」についてお話します。メディアアートとは、コンピュータやインターネットなどの現代技術を駆使して創作される新しい形のアートです。

この記事では、メディアアートの特徴や種類、そして具体的な作品の実例を紹介しながら、その魅力に迫ります。視覚的な驚きやインタラクティブな体験を観客にもたらすメディアアートの世界を、一緒に探っていきましょう。

メディアアートとは?

メディアアートとは、デジタル技術や新しいメディアを利用して創作された芸術作品の総称です。

アート史的に見ても新しく、現在進行系の分野であるため、技術と芸術の融合について日々模索されています。従来のアートの枠を超えた新しい表現手法が常に創造されており、進化が続いているのです。そのためメディアアートには、厳密な定義は存在しません。作り手や観る方によって、その意味や解釈が異なることも多いです。

このようにメディアアートは、伝統的な絵画や彫刻とは異なり、デジタル技術やインターネットなど、現代の技術を駆使しています。次に、その具体的な特徴について詳しく見ていきましょう。

メディアアートの特徴

テクノロジー-カメラ-ビデオ

メディアアートの特徴は多岐にわたります。以下からは、メディアアートの主要な特徴5つについて解説します。

デジタル技術の利用

メディアアートのアーティストは、従来の枠組みにとらわれず、新しい表現方法を開拓します。そのためメディアアートは、コンピュータやソフトウェア、センサーなどのデジタル技術を利用して創作されることが多いものです。

たとえば、メディアアートとして3Dモデリングソフトを用いたデジタル彫刻や、プログラムによって生成されるジェネラティブアートなどが挙げられます。こうした作品は、デジタルならではの複雑さや緻密さを持ち、視覚体験として新しいものとなりやすいのです。

デジタル技術の進化に伴い、その生成物でもあるメディアアートも進化することになるため、今後もますます多様な表現が展開されるはずです。

このようにデジタル技術の利用は、アーティストにとって新たな創作の自由をもたらしました。

インタラクティブ性

観客が作品に直接関わり、当人の反応によって作品が変化するデジタルアートは、インタラクティブアートとも呼ばれます。    

インタラクティブとは「双方向」という意味であり、このようなインタラクティブ性は、メディアアートの重要な要素の一つです。双方向的なアートでは、観客の動きや声、触れ合いによって作品がリアルタイムで変化し、観客それぞれの体験が異なることすらあるのです。

インタラクティブ性のあるアートであれば、観客はアートの一部となり、受動的にだけでなく能動的にも作品を楽しむことができます。たとえば、センサーを使って観客の動きを検知し、その動きに応じて映像や音が変化するインスタレーション作品などがインタラクティブ性のあるメディアアートの例です。

このようにインタラクティブ性は、作品と観客の間にメディアアート以前にはなかったような新しいコミュニケーションの形を生み出します。

マルチメディア

メディアアートは、複数のメディアを組み合わせて表現されることもあります。

映像、音声、テキスト、グラフィック、アニメーションなど、さまざまな要素を組み合わせることをマルチメディアといい、マルチメディアの活用で豊かな表現が可能になるのです。この複合的な表現方法により、観客は多角的な視点を持つことが可能。アート体験を複数の立ち位置から楽しむことができます。

たとえば、映像と音楽を組み合わせたビデオアートや、視覚と聴覚を同時に刺激するサウンドインスタレーションなどがマルチメディアの代表的な例。こうした作品は、人間の五感のうち複数の感覚を同時に刺激することが可能です。

動的な要素

静的な絵画や彫刻とは異なり、ビデオ、アニメーション、インタラクティブなインスタレーションなど、作品が動くことで、新しい体験をもたらすことができるのもメディアアートの特徴です。

メディアアートは、このように時間とともに変化する動的な要素も持っているのです。

たとえば動的なアートとして他にも、リアルタイムで変化するデジタルインスタレーションや、プログラムによって生成される映像作品などが挙げられます。こうした作品では、観客が常に新しい視覚体験を得られるため、飽きることなく楽しめるという特徴もあります。

ネットワーク性

メディアアートの中には、インターネットのようにネットワーク技術を活用することで遠隔地の観客とリアルタイムでつながり、共同制作や共有体験も可能とするものもあります。    こうしたネットワーク性という特徴を持つメディアアートは、グローバルに人々とつながりながら作品を制作できるジャンルともいえるのです。

たとえば、オンライン上で展開されるインターネットアートや、ソーシャルメディアを活用した参加型のアートプロジェクトなどがネットワーク性のあるメディアアートとして挙げられます。こうした作品は、物理的な場所に縛られない自由な表現を可能にするだけでなく、世界中の人々と共有することができます。

ネットワーク性は、ある一つのアートを作者と観客が一体となって味わえるようにするなど、アートについての共有や参加のありかたを根本的に変えました。

メディアアートの種類

メディアアートにはさまざまな種類があります。以下からは、代表的なメディアアートの種類について詳しく見ていきましょう。

ビデオアート

ビデオアートは、映像を主な表現手段とするアート形式です。たとえば、短編映画やビデオインスタレーションなどがビデオアートとして挙げられます。

ビデオアートは、視覚的なストーリーテリング(映像を通じて視覚的に物語やメッセージ、感情などを伝えること)を特徴とし、音声やテキストを組み合わせ多面的な理解を促します。たとえば、ナム・ジュン・パイクはテレビとビデオを使い、視覚と技術の進化を融合した作品で、技術の進化とともに変化する社会への問いかけを表現しました。

こうしたビデオアートの表現手法を用いることで、視覚的な魅力とメッセージ性の強さを両立させ、パイクのような時間と空間を超えたストーリーテリングも可能となります。

インタラクティブアート

インタラクティブアートは、観客の参加を促すアート形式です。

たとえばセンサーやコンピュータを利用して、観客の動きや声に反応する作品が多く、観た者それぞれが異なる体験を味わえる点が特徴です。つまり、観客が作品の一部となり、アートと対話するという見方もできます。インタラクティブアートは、観客とアートの間に新しい関係を築くことを目指すものが多いです。

たとえば、オラファー・エリアソンの作品「ウェザー・プロジェクト」は、巨大な太陽のインスタレーションを通じて観客が自然の一部となる体験が得られます。

太陽を模した人工光源と人工霧が組み合わさった大規模な空間の中で、訪れた人々はその場に寝転がるなど、思い思いのあり方で自然の壮大さを体験。それだけでなく観客は、自分自身や他者との対話も行いました。インスタレーションが、交流を深める場ともなったのです。

このようにインタラクティブアートは、視覚的な驚きとともに、観客にコミュニケーションの機会ももたらす可能性があるのです。

ネットアート

ネットアートは、インターネットを主なプラットフォームとするアート形式です。

ウェブサイトやソーシャルメディアを通じて発表され、世界中に向けて公開されます。ネットアートは、デジタルコミュニケーションの新しい形とも言い換えることができ、オンライン上での共有と参加を促すこともできます。

ネットアートは90年代にハッカーカルチャーと共に登場し、2000年代にはラファエル・ローゼンダールが独自ドメインを用いた作品を発表。近年では、新型コロナウイルスの影響でオンライン展示が進み、ネットアートの表現が広がっています。

Google Arts & Cultureでは、2,500以上の美術館がバーチャルツアーを行い、MoMAやシカゴ美術館はオンライン講座やプラットフォームを公開。さらに、Art Basel Hong Kongはオンラインでの閲覧室を開設しました。

このようにネットアートは、デジタル時代の新しいアートの形を提案するものです。

サウンドアート

サウンドアートは、音を主な表現手段とするアート形式です。

音響インスタレーションや音楽パフォーマンスなど、聴覚に対する体験を重視します。さらに音の配置や組み合わせを変えれば、空間的な体験ももたらすことが可能。たとえば、マックス・ニューハウスのサウンドインスタレーションに「タイムズスクエア」があります。1977年に初めて設置され、2002年には再設置もされるほどの反響となりました。

この作品は、ニューヨーク市タイムズスクエアの三角形の歩道島の地下から音が発生するというもの。この音は24時間365日流れ続けており、訪れる人々は独特の音響体験が得られるのです。

ニューハウスのタイムズスクエアは、都市の環境音と調和しながら、特定の場所に音を「彫刻」するというコンセプトに基づいています。単なる音楽の演奏とは異なり、空間そのものを音で満たし、観客に音の存在を意識させるものです。

このようにサウンドアートは、音の物理的な特性を利用しつつ、音を通じて空間と人々の関係を再定義するというように、音楽の枠を超えた新しい表現方法です。

デジタルアート

デジタルアートは、コンピュータやソフトウェアを利用して制作されるアート形式です。デジタルペインティング、CGアート、デジタルスカルプチャー(コンピュータ上で3Dモデリング技術を使って制作される彫刻作品)などがあり、デジタル技術を駆使した新しい表現が特徴です。

たとえば、アーロン・コーブリンのデジタルアートは、収集したデジタルデータを視覚化して表現することからデータアートとも呼ばれており、その中でも特に注目される作品が「The Sheep Market」と「Flight Patterns」です。

「The Sheep Market」では、クラウドソーシングを利用して1万枚の羊の絵を収集し、それを展示することで、人間の労働の価値に疑問を投げかけるアートとして表現しました。また、「Flight Patterns」では、空路データを色分けして視覚化し、飛行機の移動パターンを通じて本来人間には得られなかった空から世界を捉える視点を再現しています。

彼の作品は、デジタルなデータとアートの融合によって、視覚的に美しいだけでなく、情報としても興味深いものとなっています。デジタルアートは、その多様な表現手法によって観客に新しい視覚体験をもたらすのです。

VR/ARアート

VR(仮想現実)およびAR(拡張現実)アートは、仮想空間や拡張現実を利用したアート形式です。観客はVRヘッドセットやARデバイスを通じて、没入感のある体験を楽しむことができます。仮想と現実の境界を越えた新しい表現が可能です。たとえば、せきぐちあいみのVRアートは、デジタル技術を駆使して3D空間に立体的なアートを描くことで、観客に新しい体験をもたらしています。

彼女はVRゴーグルとコントローラーを使用して、ライブペイントパフォーマンスを行い、観客が仮想空間で即時そのアートを鑑賞できるようにしました。このパフォーマンスでは、観客がゴーグルを装着してせきぐちと同じ世界に入り込む体験が得られ、視覚的な驚きと感動が創出できるのです。

一方、ARアートは、モバイルデバイスで閲覧できる動画や音声コンテンツを、現実空間に配置するアート形式です。技術の進歩と、パンデミックによるソーシャルディスタンスの必要性からAR分野は急成長しました。たとえば、古典アートを自宅に表示したり、大規模なデジタルアートを広場に設置するといった形式があります。

アダナ・ティルマンの「Interplay」やスミソニアンの「Skin and Bones」では、鑑賞者がアートを動かせるといったインタラクティブな体験が可能。制作コストが低く、ギャラリーの外でもアートに新たな命を吹き込める点も魅力です。

このようにVR/ARアートは、観客に没入感のある体験をもたらすものです。

プロジェクションマッピング

プロジェクションマッピングは、建物や物体に映像を投影するアート形式。建物の表面や空間に映像を重ねることで、視覚的に劇的な効果を生み出します。都市空間やイベントでの使用が増えています。

たとえば、都市のランドマークに映像を投影することで、その場所を一夜にして別世界に変えるプロジェクションマッピングショーがあります。このとき都市空間はアートギャラリーに変わり、観客に別世界に来たような視覚体験をもたらすのです。

プロジェクションマッピングは、大規模なイベントやフェスティバルで使用されることが多くなりました。たとえば、ヨーロッパ各地で開催される「フェスティバル・オブ・ライト」では、歴史的な建物に映像を投影し、観客は幻想的な世界観を体験可能です。

メディアアートの有名な作品

メディアアートには多くの著名な作品があります。以下からは、代表的な作品4点を紹介します。

草間彌生:「無限の鏡の間」

草間彌生:「無限の鏡の間」

出典:blog TO

草間彌生の「無限の鏡の間」は、鏡とライトを組み合わせたインスタレーションです。

観客は無限に続くような空間に包まれ、幻想的な体験を楽しむことができます。草間彌生の特徴的な水玉模様と、鏡の反射効果が組み合わさり、視覚的な驚きが得られるのです。

無限の鏡の間では、観客は作品の一部となって視覚的な美しさとともに、深い哲学的なテーマを味わうことができます。

ビル・ヴィオラのビデオインスタレーション

ビル・ヴィオラのビデオインスタレーション

出典:Commonweal

ビル・ヴィオラは、ビデオアートの先駆者として知られています。

彼のビデオインスタレーションでは、固定カメラによるワンショット撮影やスローモーションが駆使されており、時間と空間を超えた体験が可能。視覚的な美しさと深い哲学的テーマが特徴です。

作品の多くは、悲しみや喪失といった普遍的な人間のテーマを扱い、観る者に強い共感と反省を促すものです。

ラファエル・ローゼンダールのインターネットアート

ラファエル・ローゼンダールのインターネットアート

出典:newrafael.com

ラファエル・ローゼンダールは、インターネットアートの分野で活躍するアーティストです。

彼の作品はウェブサイト上で展開され、HTMLやJavaScriptなどのコードでWebページを作成し、それを作品として公開する手法を用いています。これで制作コストを抑え、広範な観客に作品を届けることが可能となりました。

ユーザーは作品を直接操作することでインタラクティブな体験も可能。現在彼はNFTアートにも進出し、デジタルアートの所有権と取引の新しい方法を模索しています。

チームラボ:クリスタルワールド

チームラボ:クリスタルワールド

チームラボは、日本を代表するデジタルアート集団。

「クリスタルワールド」は、観客の操作で色や光が変化するインタラクティブなライトインスタレーションです。

観客の動きに応じて変化するこの作品は、視覚的に美しく、まるでアートと自分が一体化したかのような感覚を味わえます。リアルタイムでアート自体が変わり続けるため、その瞬間にしか体験できないアート作品となっています。

まとめ

メディアアートは、デジタル技術と芸術が融合した現代の表現形式であり、視覚的、聴覚的、体験的に新しいアートの形をもたらしています。多様な種類と表現手法を持つメディアアートは、観客自らが参加できるというような、新しい体験と驚きにあふれているアートであると理解していただけたでしょうか。

アートリエではアートに関する情報を発信しています。アートのことをもっと知りたいという方は、こまめにウェブサイトをチェックしてみてください。

また、実際に絵を購入してみたいという方は、活躍中のアーティストの作品をアートリエで購入、またはレンタルすることもできます。誰でも気軽にアートのある生活を体験することができるので、ぜひお気に入りの作品を探してみてください。

本物のアートを購入/レンタルするならアートリエ

アートリエメディア | アートの販売・レンタル-ARTELIER(アートリエ)

アートの良さは体験してみないと分からないけど、
最初の一歩のハードルが高い。

そんな不安を解決して、
誰でも気軽に、安心して
「アートのある暮らし」を楽しめるように。
そんな想いでアートリエは生まれました。

著者
ARTELIER編集部

アートの楽しみ方やアートにまつわる知識など、もっとアートが好きになる情報をアートリエ編集部が専門家として監修・執筆しています。 ARTELIER(アートリエ)は、阪急阪神グループが運営する、暮らしにアートを取り入れたいすべての人が気軽に絵画を取引できるサービスです。

RELATED ARTICLE関連する記事