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2024.06.11

風景画とは?その定義と歴史をわかりやすく解説!

風景画とは?その定義と歴史をわかりやすく解説!

風景画とは何か?

こんにちは、アートリエ編集部です。

風景画とは、自然の景観を描いた絵画のことを指します。皆さんは、風景画についてどのようなイメージを持っていますか?静かで穏やかな自然の風景、力強い山岳や海の壮大な風景、あるいは四季折々の美しい変化を捉えた絵画が思い浮かぶかもしれません。

風景画は、山や海、森林、田園風景などを主な題材とし、自然の美しさや情景を表現することに焦点を当てています。細かく観察してみると、その描写の中には自然そのものの迫力や静寂、光と影の美しいコントラストなど、見る人の心を動かす要素が意外にも多く含まれています。

この記事では、風景画の定義や歴史、有名な画家と作品、そして現代における風景画の新しい取り組みについて詳しく説明していきます。

ぜひ風景画の魅力を再発見し、その深い世界に触れてみましょう。

風景画の定義とは?

風景画

風景画とは、自然の景観を主題とした絵画を指します。

美術のジャンルの中でも風景画は重要な位置を占めており、自然の美しさや壮大さを表現することで多くの人々に感動を与えてきました。

ここからは、風景画が絵画の中でもどのような位置づけなのか、また静物画との違いについて見ていきましょう。

絵画ジャンルの中での風景画の位置付け

風景画は、歴史画、肖像画、静物画などと並ぶ主要な絵画ジャンルの一つです。

特に以降の段落でも詳説するように、17世紀のオランダ絵画や19世紀の印象派など、特定の時代や芸術運動の始まりにおいて大きな役割を果たしてきました。風景画は、自然そのものを描くことで、その時代の風土や文化、さらには画家自身の内面的な感情をも反映する手段となっています。

風景画は、単なる「自然の再現」にとどまらず、観察力と創造力を融合させた芸術作品として評価されているのです。

風景画と静物画の違い

風景画が自然の広がりや動きを捉えるのに対して、静物画は一般的に無生物(花、果物、食器など)を対象とし、細部の描写や質感、光と影のコントラストを重視します。

静物画は、対象物の配置や構図により、静けさや安定感を表現することが多いです。一方、風景画は自然の広大さや移ろいゆく瞬間を捉え、観る者に感動や癒しをもたらすのです。

たとえば、モネ(風景画)とシャルダン(静物画)を比較してみましょう。

作品名クロード・モネの「印象・日の出」ジャン・シメオン・シャルダンの「静物(果物と食器)」
ジャンル風景画静物画
対象自然の風景(海、空、日の出)果物、食器
技法印象派の技法、光と色彩の表現光と影のコントラスト、細部の描写
目的と効果自然の美しさと雄大さを表現し、感動や癒しをもたらす対象物の質感や配置を通じて静けさや安定感を表現する

このように風景画と静物画はどちらも絵画のジャンルですが、その対象や描写の目的には違いがあります。

風景画の起源と歴史

建築、教会、教会のドーム

自然の景観を描く風景画は、時代ごとの文化や価値観を反映するものです。芸術家たちの技術と創造性の進化を、各時代の風景画から読み取ることができます。

風景画の起源は古代に遡り、ルネサンス期に本格的に確立され、オランダの黄金時代にさらに発展し、19世紀初頭にはフランスで新たな展開を迎えました。こうした歴史的背景と画家たちの技法の進歩が、風景画の重要な要素となっています。

風景画の起源と歴史を知ることで、古代から現代に至るまでの美術の発展に触れることもできます。

そこでここからは、風景画がどのようにして発展してきたのかという歴史と、絵画の他ジャンルとどのように影響しあってきたのかを詳しく見ていきましょう。

風景画の起源はルネサンス期!

風景画の始まりは古代まで遡ります。絵画として「風景」が描かれた時期は歴史的に点在しており、たとえば古代ローマの壁画や中世の写本装飾にも自然の風景が見られますが、そうした芸術は宗教的な文脈に留まるものでした。

したがって、今回は本格的に「ジャンル」として風景画が独立した時期を起源と考えます。風景画がジャンルとして確立されたのは、15世紀から16世紀初頭におけるルネサンス期のヨーロッパです。ルネサンス期には、自然の美しさを描くことが芸術家たちの重要なテーマとなり、風景画は徐々にその地位を高めていきました。

科学と芸術の進歩が相まって、自然そのものを芸術的な対象とする風景画が発展したのです

ルネサンス期の代表的な風景画家は、遠近法を駆使してリアルな風景を描き出しました。たとえば、レオナルド・ダ・ヴィンチやアルブレヒト・デューラーなどの画家が、自然の細部まで緻密に描写する技法を発展させています。

オランダ「黄金時代」の風景画

17世紀に入ると、オランダでは「黄金時代」と呼ばれる時期が訪れました。

黄金時代とは、オランダが政治的、経済的、文化的に大きな繁栄を遂げた時期です。この時期、オランダは独立を果たし、世界貿易の中心地として栄えました。

経済的な繁栄が市民階級の成長を促し、芸術や文化のパトロンとして多くの市民が台頭したのです。

こうした背景により、芸術家たちは宗教や貴族の依頼に頼らず、自らの創造力を発揮することができ、風景画はさらに発展しました。ヤン・ファン・ホイエンやヤーコプ・ファン・ロイスダールといった画家が、日常の風景や田園風景を細やかに描写したため、その美しさを多くの市民が再認識することになりました。

19世紀の技術革新と風景画の進化

鉄道 線路

フランス革命は社会的変革をもたらし、新たな価値観が芸術にも反映されました。また、産業革命による技術革新は、風景画の制作と普及に新たな展開をもたらしました。

まず、鉄道網の発達は風景画家たちに新しいインスピレーションを与える役割を持ちました。鉄道の普及により、画家たちは都市から離れた自然が多い場所にも簡単にアクセスできるようになったのです。これで画家たちは都市部の風景だけでなく、田園風景や自然が残った風景を描けるようになりました。

たとえば、バルビゾン派の画家たちはパリから南にあるバルビゾン村に集まり、自然の中で直接描写を行いました。彼らは風景のリアリズムを追求し、光や影の微妙な変化を捉える技法を発展させたのです。

次に、チューブ式絵具の発明は画家たちの作業を効率化しました。

それまでの絵具は自分で調合する必要がありましたが、チューブ絵具の登場により、携帯性が向上し、野外での絵画制作が容易になったのです。これで画家たちは自然の中で直接絵を描く「プレイン・エア(戸外写生)」の手法を取り入れることができました。バルビゾン派の画家たちは、この手法を駆使して生き生きとした風景を描いたのです。

このように、19世紀初頭の風景画の発展には、フランス革命と産業革命が大きな影響を与えました。

新興ブルジョワジーと風景画の普及

ブルジョワ階級の人々は、美術作品の購入層の中でも新しく主要な存在となり、こうした層からの需要が風景画の市場を活性化させました。特に風景画は、自然の美しさを再現することで、自然に触れる機会が減った、都市生活に疲れた人々に癒しを与えたのです。

画家たちはブルジョワ階級の依頼に応じて、多くの風景画を制作しました。さらに、19世紀初頭の風景画にはロマン主義の影響も見られます。

ロマン主義は感情や個人の感覚を重視し、風景画においても自然の雄大さや神秘性を表現することが求められました。たとえば、カミーユ・コローやテオドール・ルソーといった画家たちは、壮大な自然の風景を描くことで、観る者に深い感動をもたらしたのです。

風景画の歴史まとめ

ここまで風景画の歴史について解説してきましたが、その起源や発展の仕方は複雑なものでした。

そこで以下の表で、各時代や地域ごとに風景画の技法やスタイルの特徴を整理してみましょう。

時代・地域主な技法・スタイル代表的な画家特徴  
ルネサンス期(15世紀から16世紀初頭のヨーロッパ)遠近法、明暗法    レオナルド・ダ・ヴィンチ、アルブレヒト・デューラー科学と芸術の進歩が自然のリアルな描写を可能にした  
17世紀オランダ精緻な描写、色彩のバランスヤン・ファン・ゴイエン、ヤーコプ・ファン・ロイスダール農村や都市の風景を詳細に描写、現実的な表現
18世紀イギリス自然の光と大気の表現ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー、ジョン・コンスタブル光と大気の表現に革新をもたらした
19世紀ヨーロッパ光と色彩の表現、印象派の登場クロード・モネ、カミーユ・コロー自然の光景を独自の視点で描写
19世紀フランス  リアリズム、自然の中での直接描写バルビゾン派の画家たち鉄道網の発達、チューブ式絵具の発明、新興ブルジョワジーの台頭が影響

この表を通じて、風景画がどのように発展し、どのような手法が用いられてきたかを理解してみてください。

また、一部の画家については以降の章でも詳しく解説しますので、そちらもぜひ参考にしてください。

西洋の有名な風景画と画家

西洋の風景画に関しては、多くの名作と著名な画家が存在します。

以下からは、風景画における代表的な作品と画家を紹介します。

クロード・モネ「印象・日の出」

クロード・モネ「印象・日の出」

クロード・モネは印象派の代表的な画家であり、「印象・日の出」は風景画の中でも特に有名です。この作品は、朝日の光が水面に反射する様子を描いたもので、光と色彩の変化を巧みに捉えています。

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「星月夜」

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「星月夜」

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの「星月夜」は、夜空の星々と月を幻想的に描いた作品です。この絵は、ヴァン・ゴッホの独特な筆遣いと色彩感覚が際立っており、彼の感情と自然の美しさが融合しています。

ポール・セザンヌ「サント・ヴィクトワール山」

ポール・セザンヌ「サント・ヴィクトワール山」

ポール・セザンヌは、サント・ヴィクトワール山を繰り返し描いたことで知られています。セザンヌの風景画は、自然の形や構造を探求し、画面全体に力強い構成をもたらしています。

ターナー「戦艦テメレール号」

ターナー「戦艦テメレール号」

ターナーの「戦艦テメレール号」は、夕日に照らされた戦艦を描いた作品です。戦艦は解体されるために曳航されており、はっきりと形が見えるテメレールの栄光と悲哀が表現されています。

ターナーの風景画は、光と大気の表現が特徴的であり、自然の雄大さを壮大に描き出しています。

ヨハネス・フェルメール「デルフトの眺望」

ヨハネス・フェルメール「デルフトの眺望」

ヨハネス・フェルメールの「デルフトの眺望」は、フェルメールの故郷デルフトの町並みを描いた作品です。この絵は、光と影の巧みな使い方で町の静かな美しさを表現しています。

日本の有名な風景画と画家

日本でも、風景画の分野では多くの名作と著名な画家が存在します。以下からは、その中からいくつかの代表的な作品と画家を紹介します。

葛飾北斎「富嶽三十六景」

葛飾北斎「富嶽三十六景」

葛飾北斎は、「富嶽三十六景」で有名な浮世絵師です。このシリーズは、富士山(富嶽)を背景にさまざまな風景を描いており、日本の風景画の代表作とされています。

歌川広重「東海道五十三次」

歌川広重「東海道五十三次」

歌川広重の「東海道五十三次」は、東海道沿いの宿場町を描いた浮世絵シリーズです。彼の作品は、風景の中に人物を巧みに配置し、旅情を感じさせる構図が特徴です。

東山魁夷「緑響く」

東山魁夷「緑響く」

東山魁夷は、日本画の大家であり、自然の風景を題材にした作品で知られています。「緑響く」は、深い緑の森と水面に反射する光を描いた作品で、その静寂を備えた美しさが評価されています。

千住博「ウォーターフォール」

千住博「ウォーターフォール」

出典:P.Art.Online

千住博は、現代日本を代表する画家の一人であり、滝をテーマにした作品「ウォーターフォール」で有名です。千住の風景画は、自然の力強さと神秘性を巧みに表現しています。

なぜ風景画を描くのか?

風景画では自然の美しさの表現だけでなく、画家自身の感情や哲学が風景に投影されることもあります。視覚的な美しさだけでなく、内面的な思索や精神的な探求を反映する手段でもあるのです。

また、風景画はその時代の社会や文化を反映する鏡としての役割も果たしています。このように、風景画を描く目的や意義は多義的なのです。

現代における風景画の新しい取り組み

現代アートでも、風景画は新しい手法や表現を通じて進化し続けています。

たとえば、アートの祭典「ドクメンタ15」では、風景画も含めた多様な視点が取り入れられています。特にLa Intermundial Holobienteでは、広大な公園の堆肥の山をそのまま活かし、その周囲の風景を描いた絵が展示されていました。こうした取り組みは、自然そのものを芸術として捉え直し、観客に新たな視点をもたらすものです。

デジタル技術を駆使した風景画や、環境問題をテーマにした作品など、多様なアプローチも現代では見られます。

現代の風景画家たちは、伝統的な手法を踏まえつつ、現代の課題やテーマに応じた新しい表現を追求しているのです。

まとめ

風景画は、自然の美しさや雄大さを描くことを通じて、人々に感動を与えながらも、社会に疑問を投げかけ続けてきました。本記事で紹介した画家や作品を通じて、風景画の魅力とその多様性について理解を深めていただけたでしょうか。

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