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2024.05.22

【わかりやすく解説】新古典主義とは何か?その特徴と代表的な画家・作品をご紹介

【わかりやすく解説】新古典主義とは何か?その特徴と代表的な画家・作品をご紹介

こんにちは、アートリエ編集部です。今回は、新古典主義についてお話ししましょう。

新古典主義は、18世紀後半から19世紀初頭にかけてヨーロッパで広まった芸術運動です。フランス革命などの影響で理性的・科学的思考が再評価され、古代ギリシャ・ローマの古典的な思想を復興しようとする運動が新古典主義。シンプルで理性的な表現を重視し、バロックやロココの装飾的なスタイルへの反発も見られます。

新古典主義において、たとえばジャック=ルイ・ダヴィッドやドミニク・アングルといった画家たちは、古典的なテーマや筆致を通じて当時の社会や政治を反映させた作品を多く残しました。たとえば、ダヴィッドでは「サン・ベルナール峠を越えるナポレオン」、アングルだと「グランド・オダリスク」などです。

このように、新古典主義は古代の美学を再解釈し、理想的な美と秩序を追求した芸術運動です。ぜひこの記事の解説を通じて、新古典主義の奥深さとその魅力を感じてください。

新古典主義誕生の背景

新古典主義は、18世紀後半から19世紀初頭にかけてヨーロッパで興った美術運動で、古代ギリシャやローマの古典様式を復興させることを目的としました。

ここからは、新古典主義が生まれた背景、時代の変化によって新古典主義が受けた影響などを見ていきましょう。

新古典主義はバロック、ロココ様式への反発として生まれた

バロック美術は、17世紀にヨーロッパ全域で広がり、ダイナミックで感情的な表現が特徴です。

その後、18世紀前半に登場したロココ美術は、バロックの影響を受けつつも、より軽快で装飾的な要素を持ち、繊細さ・エレガントさが特徴であり、宮廷文化を象徴しています。しかし、ロココの過度な装飾性や感傷的な表現に対して次第に批判が高まるようになりました。

新古典主義は、こうしたルネサンス以降の芸術様式であるバロックやロココに対する反発として生まれました。古代ギリシャやローマのシンプルで秩序ある美学を再評価し、それを当時の芸術に取り入れることで、理性と秩序を重視する新しい美術様式を確立したのです。

新古典主義が生まれた頃の時代背景

18世紀後半は、啓蒙思想がヨーロッパ全土に広がり、理性や科学、秩序が重視される時代でした。

このような思想的背景の中で、新古典主義は、古代の理想美や道徳的価値を再評価し、それを現代に取り入れる動きとして誕生しました。

特に、フランス革命やナポレオン戦争といった政治的・社会的な変革期において、新古典主義は革命の理想やナポレオンの権威を象徴する重要な役割を果たしたのです。

古代遺跡の発掘とその影響

18世紀には、イタリアのポンペイやヘルクラネウムといった古代ローマの遺跡が発掘され、遺跡の発見も新古典主義の発展に大きな影響を与えました。

こうした遺跡は、古代ローマの芸術や建築様式を直接観察する機会となりました。芸術家たちはそのシンプルで厳格な美しさに触発されたのです。

こうした影響を受けた新古典主義の作品は、古代の理想美を追求し、シンプルで厳粛なスタイルを特徴とすることになりました。

新古典主義の主なテーマと特徴

アクロポリス-アテネ-ギリシャ

新古典主義の作品は、理性、道徳、英雄的なテーマを中心に展開され、古典的な様式美が強調されたことが特徴です。

以下からは、こうした新古典主義の主なテーマや特徴などについて見ていきましょう。

新古典主義の表現手法、テーマ、特徴など

新古典主義とは具体的にどんな中身なのでしょう。表現手法、テーマ、特徴、思想をまとめると、以下のようになります。

新古典主義の表現手法

  • シンプルさ、対称性を重視し、秩序と調和を追求
  • 緻密なデッサン技術が駆使された、はっきりした輪郭や均衡の取れた構図で古代の理想美の再現
  • ジャック=ルイ・ダヴィッドやドミニク・アングルの作品に見られる古典的なポーズや衣装など

新古典主義のテーマ

  • 古典的な題材を中心に描かれる、古代の英雄や神話、歴史的な事件
  • ダヴィッドの『ホラティウス兄弟の誓い』に見られるような、国家への忠誠心や自己犠牲精神など

新古典主義の特徴

  • 普遍的な美や道徳の追求
  • 個人の感情や主観の排除など

新古典主義とロマン主義との違い

新古典主義とロマン主義には、対照的ともいえるような違いがあります。

新古典主義が理性や秩序、普遍的な美を重視するのに対し、ロマン主義は感情や個性、自然への崇拝を重視します。具体的には、ロマン主義の画家たちは、劇的な光と影の効果、動きのある構図、そして強烈な色彩を用いて、感情的な表現を追求しました。

ロマン主義は、個人の感情や想像力を尊重し、自然や中世の騎士道を題材にすることが多いです。ウジェーヌ・ドラクロワやジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーといったロマン主義の画家たちは、自然の荒々しさや人間の内面的な葛藤を描き出しています。一方、新古典主義の作品は、古代の理想や英雄的な行為を描くことで、社会的・道徳的なメッセージを伝えました。

このように、両者は表現手法やテーマ、思想において対照的であり、それぞれの時代背景や社会的な出来事に応じ、異なる芸術的価値をもたらしたのです。

新古典主義の代表的な画家たち

新古典主義は18世紀後半から19世紀初頭にかけて活躍した多くの画家たちによって発展しました。

ここからは、その中でも特に重要な4人の画家について詳しく掘り下げて紹介します。

ジャック=ルイ・ダヴィッド

ジャック=ルイ・ダヴィッド

ジャック=ルイ・ダヴィッドは、新古典主義を代表するフランスの画家です。

ダヴィッドはパリで生まれ、フランス革命と深く関わりながら芸術的才能を発揮しました。

代表作『ホラティウス兄弟の誓い』は、国家への忠誠と自己犠牲をテーマにしたもので、新古典主義の理想を描いています。また、ダヴィッドはナポレオンの首席宮廷画家としても知られ、『サン・ベルナール峠を越えるナポレオン』など、多くの歴史的な場面を描きました。

ドミニク・アングル

ドミニク・アングル

ドミニク・アングルは、ダヴィッドの弟子としてスタートし、晩年まで独自のスタイルで活躍した新古典主義の画家です。アングルの作品は、緻密なデッサンと自分の思う理想的な造形を描くことで知られ、特に肖像画と歴史画において高い評価を得ています。

アングルの代表作『グランド・オダリスク』は、古典的な理想美とエキゾチックな要素を融合させた作品で、その独特な美学を示しています。

フランソワ・ジェラール

フランソワ・ジェラール

フランソワ・ジェラールもまた、ダヴィッドの弟子の画家です。

ジェラールは、肖像画家として名を馳せ、ナポレオン時代の多くの著名人の肖像を手掛けました。

ジェラールの作品は、細部へのこだわりと優雅な表現が特徴で、特に『アモルとプシュケ』は、その美しさと技術の高さで知られています。

アントワーヌ=ジャン・グロ

アントワーヌ=ジャン・グロ

アントワーヌ=ジャン・グロは、新古典主義とロマン主義の橋渡し的存在とされる画家です。

グロはダヴィッドの弟子として教育を受けましたが、作品にはより感情的で劇的な要素が見られます。グロの代表作『アイラウの戦い』は、戦場の激しさと悲劇を描いた作品で、そのリアルな描写が高く評価されました。

グロの作品は、新古典主義の秩序とロマン主義の情熱を融合させたものとして、独特の魅力を持ちます。

新古典主義の代表的な作品

古代ギリシャやローマの美学を復活させることを目指した新古典主義の時代、多くの名作が生み出されました。

ここでは、その中でも特に有名な4つの作品を紹介します。

サン・ベルナール峠を越えるナポレオン(ジャック=ルイ・ダヴィッド)

サン・ベルナール峠を越えるナポレオン(ジャック=ルイ・ダヴィッド)

ジャック=ルイ・ダヴィッドの『サン・ベルナール峠を越えるナポレオン』は、新古典主義を代表する作品の一つです。

1801年から制作されたこの絵画は、ナポレオン・ボナパルトがアルプス山脈を越えてイタリアに進軍する様子を描いています。ナポレオンは堂々とした姿勢で白馬にまたがり、理想的なリーダーとしての勇壮さがうかがえます。また、背景には荒々しい自然が描かれ、ナポレオンの威厳と勇気を際立たせているのです。

この作品は、英雄的な人物像と劇的な構図が特徴であり、ダヴィッドの卓越した技術が見て取れます。

グランド・オダリスク(ドミニク・アングル)

グランド・オダリスク(ドミニク・アングル)

ドミニク・アングルの『グランド・オダリスク』は、1814年に完成した作品で、エキゾチックな雰囲気を持つ裸婦像です。

この絵画は、古典的な美の理想を追求しつつも、アングル独自の感性が加えられています。オダリスク(ハーレムの女性)は、優雅な曲線美と冷静な表情で描かれており、背景の装飾からは東洋の影響が感じられます。

グランド・オダリスクには、アングルの緻密なデッサン技術と色彩感覚の融合を見て取れるのです。

アモルとプシュケ(フランソワ・ジェラール)

アモルとプシュケ(フランソワ・ジェラール)

フランソワ・ジェラールの『アモルとプシュケ』は、ギリシャ神話を題材にしています。

この絵画は、愛の神アモル(キューピッド)と美しい女性プシュケの物語を描いており、愛と美のテーマを表現しているのです。

ジェラールの作品は、細部に至るまで精巧に描かれ、優雅な雰囲気が漂います。特に、プシュケの表情やアモルの翼の描写は、ジェラールの高度な技術と感性を示しています。

アイラウの戦い(アントワーヌ=ジャン・グロ)

アイラウの戦い(アントワーヌ=ジャン・グロ)

アントワーヌ=ジャン・グロの『アイラウの戦い』は、ナポレオン戦争の一場面を描いています。

この絵画は、1807年のアイラウの戦いでのフランス軍とロシア軍の激突を描き、戦争の悲惨さと英雄的な側面を強調しています。

新古典主義の影響力とその広がり

新古典主義は、18世紀後半から19世紀初頭にかけてヨーロッパ全体に広まり、芸術、建築などに影響を与えました。

具体的な新古典主義の影響として、以下が挙げられます。

後の芸術運動への影響

新古典主義は、その後のロマン主義やリアリズムの発展にも影響を与えました。新古典主義が重視した理性や秩序は、ロマン主義での感情や個人の表現の重視へと変化し、リアリズムへと続きました。

新古典主義の影響はヨーロッパだけでなく、アメリカや他の地域にも広がりました。新古典主義は、歴史的な出来事と結びつきながら、芸術の発展をもたらしたのです。

建築

新古典主義の建築は、公共建築やモニュメントに影響を与えました。パリのパンテオンやワシントンD.C.のアメリカ合衆国議会議事堂などがその例です。

こうした建築物は、古典的な柱や対称性を持っており、新古典主義の影響を受けていることがわかります。

現代における新古典主義の価値

新古典主義の持つ理性的で秩序立った哲学的思想は、今日でも多くのアーティストやデザイナーに影響を与え続けています。

たとえば、イタリアの建築デザイナー、アルド・ロッシは、その建築作品に新古典主義の美学を取り入れています。彼の作品は、シンプルでありながら調和の取れたデザインが特徴で、古典的な柱や対称性を多用しているのです。

また、フランスの国立高等美術学校である「エコール・デ・ボザール」では、新古典主義の画家たちが教鞭をとり、後世に影響を与えました。画家のジャン=レオン・ジェロームは惜しくもエコール・デ・ボザールでは落第してしまいますが、以後その経験をばねにしたかのような活躍を見せ、新古典主義の思想を受け継ぐ画家となりました。

新古典主義の作品が楽しめる場所

美術館-ピラミッド-ファサード

新古典主義の作品は、世界中の主要な美術館や博物館で楽しむことができます。

以下は、そんな新古典主義のアートが充実している世界の美術館の一覧です

  • ルーヴル美術館(フランス)
  • メトロポリタン美術館(アメリカ)
  • エルミタージュ美術館(ロシア)
  • プラド美術館(スペイン)

続いて、日本国内で新古典主義の作品が見られる美術館の代表例は以下です(過去展示含む)

  • 国立西洋美術館(東京)
  • ヤマザキマザック美術館(愛知)
  • 京都市京セラ美術館(京都)

こうした美術館を訪れることで、新古典主義の美学とその歴史的価値を深く理解することができるでしょう。

まとめ

この記事では、新古典主義の誕生からその主要テーマ、代表的な画家と作品、そして現代における評価やその作品が楽しめる場所までを詳しく解説しました。

新古典主義の魅力は、古典の持つ荘厳さと調和のとれた美しさにあります。特にジャック=ルイ・ダヴィッドやアントワーヌ=ジャン・グロなどの画家たちが描いた作品は、その時代の価値観や哲学を反映しました。単純にアートとして美しい、優れているというだけでなく、政治的な役割も果たしており、その存在意義が多くの人々に今なお感動を与え続けています。

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